麻雀長屋のひとびと -第二回「AI(人工知能)」-

「麻雀コラム」 連載第二回
 麻雀大好き落語家の三遊亭楽麻呂師匠が「麻雀」で
 現代社会を愉快に叩っ斬る!

第二回「AI(人工知能)」

三遊亭楽麻呂

「隠居さん、大変です」

「どうした、八っつぁん、えらい勢いで飛び込んできたな」

「ニュース見ましたか? 将棋の名人がAIに負けちまったんですよ」

「ほー、そうかい」

「ほー、そうかいなんて落ち着いている場合じゃないですよ。これは大事件じゃないですか」

「お前さん、遅れているな。去年は囲碁でも世界の強豪がAIのソフトに負けている」

「えー、そうだったんですか?」

「ネット上の対戦でも、ほとんど人間は歯が立たないらしい。みんな匿名でやっているんだが、ずいぶんプロも多いみたいだ」

「へー、今やAIは敵なしなんですね。でも運の要素も大きいカードゲームなんてのは人間とAIは五分五分になるんでしょうね」

「それが、今年の初めにポーカーのプロがAIと戦って敗退したそうだ」

「ポーカーまで制圧されたんですか? じゃあ地球上に人間が勝てるゲームはなくなったんですね」

「いやいや、まだAIに負けてないものがある」

「何ですか?」

「麻雀だ」

「あっそうか、確かに麻雀プロがAIに負けたということはあまり聞きませんね」

「何たって麻雀は4人でやるからAIが一台入ったところでコンスタントに勝つというのは難しいかもしれないな」

「じゃ、麻雀が人間界の最後の砦になるかもしれませんね」

「その通り。麻雀はそれだけ奥深い、優れたゲームだとアタシは思うな」

「しかし、こんなにAIが進化してくると、これから先、我々の生活はどうなっていくんですかね」

「便利になるのは間違いない」

「そうですね。ってことはこれからバラ色の未来が待っているって訳ですね」

「いやいや、そうとも言えないんだ」

「どうしてですか?」

「ある学者さんの予測によると、10年後には今ある仕事の6割はいらなくなるということだ」

「えっ6割の仕事がいらなくなる? じゃこのままじゃ失業率4割ですか。それは一大事だ。どんな仕事がいらなくなるんですかね」

「例えば考えてごらん、30年位前は電車に乗る時切符を買って改札口で駅員さんにパンチを入れてもらっていただろ?」

「そういや、そうだ。でも今はバナナをタッチするだけですね」

「バナナじゃなくてスイカだ」

「そうそうスイカ、スイカ」

「ということは、切符にハサミを入れたり回収する駅員さんはいらなくなったってことだ」

「なるほど」

「また、今世界中で車の自動運転の研究がしのぎを削っている。もし安全な自動運転ができるようになったらどうなる?」

「人がいなくても車が動かせるということになりますね」

「そうだろ。という具合にさまざまな分野で人間がAIに取って代わられるということだ」

「いやー、厳しいですね。じゃこれから就職をする若者は職業選びが悩ましいですね」

「そうだな。しかしそうは言っても未来の予測は困難だ」

「そして、就職とは関係ない隠居さんたちも何でも自動化自動化で世の中にどんどんついていけなくなるんじゃないですか?」

「失礼な!そんなことはない」

「そうですか」

「アタシはずっと雀荘通いをしているから大丈夫、慣れているよ」

「どういうことですか?」

「考えてごらん、雀荘の雀卓はかなり前から全自動だ」

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