【追憶の麻雀】第41回「新風営法実地から」

追憶の麻雀

昭和60年6月10日   第112号

新風営法実地から4ヶ月

東京都内経営者覆面座談会

新風営法が施行されてから4ヵ月になる。その間に、大型連休もあり、マージャン業界の景気の動向を探るには、これからの時期の成績が参考になる。当初、酒類の提供、料金値上げで浮かれていたところが、飲食店の許可が必要だ、距離制限にひっかかる店は代替りできないなどの大きな問題点が出てきた。そんななかで、実際の流れはどうなのか、新法のメリットは生かされているのかをテーマに、都内の中心地区の経営者による座談会を企画した。料金面の底上げはできたが、その他の対応はこれからと―状況の流れを的確に把握する姿勢が今後は要求されている。

平均50円アップ

料金値上げスムーズ

司会  まず、風営法施行後の地区の情報からお願いします。

―営業時間が伸びたのとアルコールがOKになったので気が楽になったというのがメリットでしょうか。でもアルコールがOKになったからといって、ボトルキープをやるとか、店内改装して飲食物を作るようにしたというのはまったくといっていい程聞きません。

 司会  料金はいかがですか

―ブロック会議を開いてブロック単位で値上げしていこうということで、日本橋では僕の所が一番先にやって450円でした。近くのブロックでは400円で、兜町、茅場町あたりが4ブロックくらい集まって400円というところで、50円くらいの値上げ幅です。

司会  しばらくはその料金で続きそうですか。

―はい。客足さえ減らなければ、悪い値段じゃないんじゃないか。安い所では250円からある。

司会  賃貸のお店が多いですか。

―そうです。家賃は坪1万4000~1万5000円にはつく。僕の所で、共益費を含めると1万9000円くらいです。

司会  すると料金面で変化したということで、店舗の状態などは変化がないということですね。新橋はいかがですか。

―地区でそれぞれ事情は違うが、経営者の意識が変わったような気がする。この改正は、大げさにいうと、今まで惰性でやってきたこの業界への神の恵みのようなものではないか。例えば飲食物やアルコールが提供できるとなると、今までの営業形態では、取り残されるんじゃないかというサバイバルのような意識が出てきたようだ。実行の段階になると、まだ、うろたえているという面はあるが、それが表われているのが料金問題で、具体的にいうと平均50円アップが多い。これも実行しているところと、しなきゃならないというだけで足踏みしているのと半々です。

司会  特殊なお店を除いて限度額の600円、あるいはそれに近い料金を取っているお店はありますか。

―ほんのわずかです。

―うちの方は、ふつうのサラリーマンだと500円が限度だと思う。あと600円表示しておいて300円でやっているという店もある。うちの方もここで格差が出てきた。すばやく対応して500円取れた店もあるし、依然として350円でうろたえているという店もあります。

―僕がブロック会議で言ったのは、せっかく600円まで許可になったのだから、たとえ20円でも30円でも上げて、その一部をお客さんに還元する。それをプールしていって、汚なかったカーペットを取り換えるとか、あるいは内装をやるとか、サービスを増やすとか、一部をお客様に還元して、前向きに回転させていくということです。

値上げで赤字が黒字に

―私どもは、地区によって全然違うが、西口の方は昔からチャージ3000円、基本1時間300円の合計4200円もらっていたが、チャージをなくそうということで、400円の店が450円になっている。3000円と300円取っていた店が、じゃあ500円でいこうといって、500円でやっている所と、やはり450円でやっている所とある。歌舞伎町の方は営業形態が違うからブロック活動をやりにくい面もあり、まとまらないようだ。ただ、風営法といってもほとんどピンクが対象であって、酒とか時間外以外に、公共施設からの距離制限の問題で、現にだいぶ損害をこうむった人がいるんじゃないかと思う。そういう点で、少なくとも風俗営業と関連営業を切り離して考え直してもらいたい。

―うちの方は改正前日に、五反田駅周辺30軒くらい集めて、新風営法の把握ということで説明会をやった。その話し合いが終った時点で、組合員の方から、組合で料金を決めてくれといい出した。それで、従来の料金に100円アップしようと提案したが、それでも料金統一してくれと強くいわれたので、600円の表示価格を出して500円取ったらどうか、ということにした。その後、推移をみてみると、400円、450円で営業しているようだ。目黒駅とか大崎駅などは、安い所で400円ぐらいで落ち着いている、持家が少なくなり、家賃との比率で、料金を上げなきゃならないという時に、たまたま新聞などが書き立てたから、値上げ問題はスムーズに運んだ。

司会  料金以外の問題はないですか。

―今一番問題なのは、飲食の自由ということで、果たして正規の保健所の許可を取らなきゃいけないのか。あるいは特例を認められた設備で営業するのか、迷っている状態ですね。それともう一つ、2月13日以降、まわりのバーなどの飲食店も、みな客がガタ落ちして悲鳴をあけた。というのは、お客さんの錯覚がある。例えば、12時過ぎに酒を飲んじゃいけないんじゃないかとか、警察の手入れがあるんじゃないかとか、誤解されたむきがあって、一時、五反田は、12時過ぎには火が消えたような感じだった。経営者自体も講習を受けた後で取り締まりが強化されるんじゃないかと思っていた。ところが、実際の取り締まりはそれ程ない。110番が入らない限り、やるつもりはないという話もあり、われわれの商売は、やり易くなったという面はある。値上げでカバーして、今まで赤字の店が何とか黒字になったというところです。

―新宿でも、事前に青色申告と新風営法の説明会ということで、講習会をやったが、椅子がなくなるほど集まった。やはり新風営法には業者の人が神経を使って、どういう取り締まりがあるのかピリピリしたことは事実です。

―それがお客さんの方に移ったのかもしれない。

―確かにそれはある。お客さんは、風営法など意識していなかったのに、その中に自分たちが取り込まれているということで、うさんくさいイメージを一部もったことは確かだ。

―私の方は、自動卓の普及が早かったので、料金が300円の時に、400円取っていた。今度600円というので、足並そろえて500円にアップということになった。メリットは500円になったという点だけで、なぜ風営法を改正したのか、という声の方が現状としては多い。今、取り締まりの話が出たが、ある例として、たちの悪い大家さんで、11時過ぎると110番するので、しょっ中代替りしていた。それが今度12時になって、110番するのをあきらめたという話がある。

メリットは料金だけ

45月は業績低下

司会  動きというと料金値上げだけですか。

―いいということは、そこだけですね。

―お客さんの方でも、風営法が変わって気になっているのは料金が600円になるということで、時間のことを聞く人は少ない。

―500円と表示していると、あれ、ここは100円安いという声もある。このところ、あまり不景気が続いていたから、われわれの意識がお客さんより低くて、安けりゃ入ると錯覚している経営者が意外に多い。料金が安いから入るわけじゃなく、お店の品を求めてくるんじゃないか。

―うちの地区は、施行後、現実的にはヒマになっている。その一つの要素に、料金が上がったこともあるかも知れないが、料金のために悪くなったかどうか。ということは、6月以降の営業成績をみてみないとわからないと思う。赤坂地区はゲーム料は、手打で400円、機械で500円以上。ほとんど500円でやっている。

司会  いままでのお話だと、メリットとして、料金値上げということが共通しているが、営業成績はどうですか。

―僕の所は、4月はサラリーマンの異動で、毎年悪い。今年も4月は悪かったが、5月に入ってすごく良くなった。うちだけじゃなく、5月は近所も良いようです。

―地域的なものか、うちの方は3月は非常に良かったけど、4月はダメだった。

―それは地区じゃなく客層によって違う。僕が見てみると、最近の傾向としては極端にはやっている店ははやり、入らない店は本当に入らない。5月の連休以後、サラリーマンを対象としている店はガタッと落ちている。サラリーマンが大型連休で金を使ってしまったのと、給料も上がらないというので、サラリーマンのフトコロ具合が厳しくなったのは事実ですね。

―マージャンは、基本は自分の小遣いで遊ぶということだから、接待ばかり追っかけている店なら、それはあまり変わらない。僕の店をみても、全体に少しずつ落ち込んでいる。

―落ち込んでいるのを料金値上げでカバーして、とんとんにしている。

―お客さんの、マージャンに使う小遣いの比率が減っている。

―飲み屋などは、例えばチューハイー杯7時まで150円とか、去年よりも安くなっている傾向がある。

景気は上むき

麻雀業にも期待が

司会  確かにゲーム代が上がっている割に、まわりの飲食店の単価は下がっています。

―うちの1階の飲み屋に聞くと、はやっているけど売り上げはさっぱりで、忙しいぽっかりという。だけど、ヒマで閑古鳥が鳴いている店には、やがて閑古鳥もいなくなってしまう。料金問題を考えた場合、今の値段で、もしも9割稼動したら、マージャン店は儲け過ぎになると思う。

―確かに、お客さんが入った時は原価率は低いけど、入らなければ、これ程原価率の高い商売はない。

―先にも話しましたが2月13日以降、火の消えたような時期がーヵ月くらいあった。しかし最近では、一番大きいキャバレーが、開店以来のいそがしさだとか、そば屋さん、おすし屋さん、酒屋さんなど、それぞれ、みな良くなってきたという。新風営法に馴れたのか景気は上向いて、われわれの方にも回ってくるんじゃないかという気はする。

―そういう話になるとわれわれの地域は、12時過ぎは火の消えたようです。というのは、この風営法で騒音が規制になったでしょう。今までは黙っていた住民が、うるさければ110番する。深夜やっている飲食店が、ほとんどダメということです。

―そういう所で使っていた小遣いが、マージャン店に回ってくるということがあるんじゃないか。

―新料金も、タクシーのように、お客さんが馴れるだろうか。

―うちは20年やっていて、50円からスタートしたので値上げのたびに、その問題は出るが、必ず慣れますよ。

―サラリーマンは、やりくり上手だ。

―人間の本能として、やりたいものは、どうやりくりしてもやる、という意欲があると思う。

―ただ、今のリーチマージャンの店の増え方を見ていると、セットの客が減ってきていることは事実だ。

(つづく)

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