「追憶の麻雀」第1回『麻雀荘4割が赤字経営」 | 麻雀新聞

「追憶の麻雀」第1回『麻雀荘4割が赤字経営」

追憶の麻雀

麻雀新聞バックナンバーから発掘された昭和麻雀業界の歴史を感じさせる記事を紹介する新コラム「追憶の麻雀」。
第1回目となる今回は第1号から抜粋した記事をお送りします。

麻雀新聞第1号 昭和52年5月10日 より

「不況に強いレジャー産業」という言葉がある。

確かに、数年前までは不動の地位を占めていたが、昨今の社会情勢の不安定な流れのなかで、その神話は、崩れてきた。

レジャー産業の一端を担う麻雀業は、連立する新規開集者に苦戦苦闘を余儀なくされている。全国での麻雀営業者軒数約3万5千、東京、大阪、名古屋、神戸の各都市で全国の約80%以上を占めている。この地区が、最大の過当競争激化が行われているところでもある。

年間増軒数15%といわれているが、これは他に例をみない業種ではないだろうか、麻雀荘が、これほどまで過剰産業となったことには、社会の変動(不況)という背景もある。また、この業種は少資本で簡単に出店でき、気軽に営業を行える考えが、一般、麻雀愛好家のなかに浸透していることにもあると思われる。現に、一般企業サラリーマンの退職金と麻雀荘開業資金が匹敵するといわれている。

従来利用していた麻雀荘の現状を見て、「これなら自分にもやれる」という安易な考えが、一般的に強く、単純な試算で月間の収入を計算しているような状態が、現在行われているのである。

全国一の営業者を抱える東束都麻雀業組合連合会(以下都雀連と略)理事長高坂宗次氏は「咋年末まで、全般的に見れば新規開業は増加の一途を辿っていたが、現在は停滞の状態である。利用客と麻雀荘の比率からすれば、麻雀荘の数が多いことは確かだ。地区的には増減のアンバランスがある」

すでに、都内における麻雀荘の増加は、峠を越した感じである。しかし、麻雀人口から見て、麻雀荘利用客は少ない。それだけ家庭麻雀が行われていると予測される。

また、都内の隣接県の関東管区麻雀業組合総連合会(以下関総連と略)会長高橋真作氏は「都雀連との隣接都市であるので、営業形態、過当競争等の問題点は同じだ。でも、特に新興都市(千葉・船橋・前橋)では増えている、都内での過当竸争が、そのまま隣接都市に及んでいるわけです」

交通機関の発達により、通勤圏が延長されて、隣接都市が拡大された。手軽に開業出来る麻雀荘が注目を浴び、新規業者が、従来の営業者との間で、客の奪い合いを生じているような状態。これが遊技料金ダンピングへとつながっている。各組合内部での料金統一は取られているが、非加盟営業者による低料金営業によって、多くの組合員か、足を引っぱられているのは都内、隣接県でも同傾向にある。そのために各組合では、新規開業者に過酷な現状を訴えて、共倒れの危検性のあることを呼びかけているが、事前に実態を知らせることには困難をようしている。

これらに対するなんらかの対策が言われている現在、都雀連では消防講習の時の「防火管理者」の資格を新規開業者に対する一つの資格にできないものかと、また、このほど、都雀連で、全組合員にアンケート調査を行った結果、「一日の平均利用卓数が、50%に達しない」という声が、4割以上もある、麻雀荘の稼動率は、60~70%は絶対に必要とされているので、この結果からして、いかに空卓が多いか、また、「一ケ月の平均営業日数」は、23日ぐらいが、圧倒的に多い。これとお客の遊戯時間のアンバランスがあり、現在では3時間平均というところで、これでは借家営業でやっているところは赤字経営にならざるをえない。実に六割が借家経営である。

この調査でも、40%近くの人が、赤字経営を訴えていた。この人々が麻雀営業を断念しても、廃業につながらず、殆んど居抜きで転売される可能性が強く、営業軒数の減少にはならない。いづれにしても全総連、都雀連、関総連、各組合のトップはもとより、営業対策責任者は過当競争阻止に、必死になっているのが現状である。

今回の都雀連営業対策部が行った調査結果からすれば、都内業者(約1万軒)の4割が赤字経営を訴えていた。麻雀人口が増えている割にお客が雀荘にこない。それに麻雀荘だけは増加の一途を辿っているわけで、将に麻雀荘戦国時代というところである。

そして、この不況、いつの時代でも、最初に打撃を受けるのは、弱小の零細企業でしかない。その最も弱い業種の一つである麻雀業は、過去幾多の難を乗り越えて来たが、過当競争、諸経費高騰等の問題に現在直面し、赤字経営で苦境に立っている。

このような時期において、1月8日、自治省から利用税引き上げ案が発表され、急遽全総連を中心に、関係官庁に陳情が開始されたが、この度の都議会の場において29.1%アップが決定した。

この娯楽施設利用税は、麻雀荘の場合は1卓当り、パチンコは1台当り、ゴルフは1人当り、月にOO円となっていて、各都道府県の条例によって異っている。

また麻雀業には地区別に一から八までの等級があり、それによって税額も違うわけである。例えば今回の値上げにより、現在の一等級のところは1.200円だったのが1,800円となり、値上げ額が600円で、これは以下の等級とは多少額は異なっている。

二等級、現在1,000円が、改正案では1,400円、三等級同850円が、同1,100円、四等級、同700円が、同900円、五等級、同550円が、同770円、六等級、同400円が、500円、七等級、同250円が同350円、八等級、同100円が、同150円…(東京都)となっている。そして、これは6月1日から実施される。

この経営難のおり、利用税引き上げは、ダブルパンチを受けた形となった。

税制改正が、昭和29年に実施され、それ以降改正されていなかったわけだが、この時は、その前々年の27年に、遊技料金1卓1時間当り120円(都雀連)の認可がおりていて、なんとか遊技料金値上げによって、カバーできたが、それ以後の社会変動からすれば、今回の利用税アップにより遊技料金値上げにつながる可能性もでてきた。

気軽に低料金で遊べた麻雀が高級なものとなり、一般大衆にはほど遠い遊びになって行くような気もする。高い交通費、遠くなった行楽地と、レジャーから遠くなりつつある昨今の一般の傾向は、室内遊技(麻雀等)にも影響するし、離れて行く結果になりはしないか、物価変動期において、ここで、娯楽施設利用税を引き上げたことは、一般大衆に与える影響は大である。

麻雀人口2千万人ともいわれ、ストレス解消の一方法として行なれている麻雀の、存在を無視(大衆)した利用税アップは、現在の物価抑制政策にも影響するし、何か矛盾を含んでいるような感もする。地方財政の困難性はあると思われるが、大衆のなかで育った一般娯楽が遠くなっていくことは、サラリーマンのストレス蓄積の原因にもなりかねない。

また、この不況のおり、給料は上がらず、物価だけは高騰し、遊技時間も少なくなって来ている。従来、4時間ぐらいやっていたのが、現在では3時間平均というところまで落ちて来ている。パチンコのように、さほどサービスも必要でない業種ならばよいが、麻雀業は、時間当りで、遊技料金をもらっている商売であり、時間短縮は直接営業に響いてくるわけであって、多少のサービスを必要とするし、目に見えない精神的サービスも余儀なくされているのである。それに営業時間も非常に長い現在、麻雀業界は、これらのことや、諸経費高謄、過当競争に悩やまされていて、遊技料金の値上げも聞かれている。

ところで、麻雀業者は全国で約12億円の利用税を各都道府県に納めているといわれる。東京では4,3億円ぐらいで、今回の改正により、2,5億円ほど増額になるようである。この6月1日よりの実施において全国麻雀業者は16億円ぐらいになるだろうと、関係者は語っている。

この娯楽施設利用税アップにより麻雀営業者は勿論、一般愛好家に与える影響は多大なものがある。

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