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新式麻雀タクティクス 第21回
- 2018/9/15
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新式麻雀タクティクス 第20回
若手麻雀プロが贈る麻雀の新潮流!
数あるイマドキの戦術がみるみるよくわかる連載第20回
◎自分なりの副露バランスを設定する
皆さん、こんにちは。最高位戦日本プロ麻雀協会の原周平です。
前回は、「麻雀のメンタル」ということで、不利な状況に置かれたときの心の持ちようについてお話しました。そして、今回ですが、「副露バランス」についてお話したいと思います。
面前から鳴くか鳴かないか。その日の対局で振り返ってみればターニングポイントになることの多い判断ではないかと思います。「良い牌が流れた」とか、「鳴きのせいでツモられた」といった反省は置いておくとしても、「鳴く前の段階で冷静に考えればどちらかが有利だったのに、それを選択できなかった」という反省は私もよくするところです。
第17回で、「王道の鳴き」については触れているので、今回はもう少し迷う手牌、特に巡目や状況によって判断が変わる手牌を扱いたいと思います。
◎愚形を捌いてシャンテン数が進む牌はほぼ鳴く
牌図①は、一気通貫確定のイーシャンテン、迷いのない好手、と思いきや、1つだけ決めておかなくてはならないことがあります。上家の切る2萬を、何巡目、あるいは何枚目なら鳴くか、ということです。せっかくの好手を鳴いて1000点? と思うかもしれませんが、しかし、冷静になってみると、この手はどれほどの価値があるのでしょうか。両面、カンチャンということは受け入れ12枚、平均8巡程で面前テンパイする手牌です。そこに鳴いてテンパイする牌が出たということは、鳴けば0巡で1000点とはいえ全員から出アガリできる両面になるということです。その後にリーチを受けたことを心配する人もいますが、手牌11枚あれば守備力は現状とさほど変わらず、押すにしてもすぐ目の前にアガリがあるので、現状のイーシャンテンよりは押せる局面が増えます。実はそれほど問題ではないのですね。
となると、残る問題は打点の大幅低下です。和了率が段違いとはいえ、もちろん打点も段違い。するとどちらが「平均局収支」で勝るかという比較で、鳴く巡目を決めていくのがいいでしょう。これは、打つ「場」の決着巡目によって最適ラインは変わりますが、一般的な赤ありでは、5巡目以降は1枚目でも鳴いた方が良いと思われます。これが打点低下がほぼ気にならない手なら1巡目であっても愚形からは鳴き。もう少し形の良い良形×2なら9巡目以降鳴きになります。愚形からのチーテン・ポンテンはとても価値が高く、1000点という打点はさほど意味がないように見えて、将来の失点を回避し、安定して局収支をプラスにしてくれます。安くて遠い鳴きで痛い目を見るイメージがある人は、ポンテン・チーテンの判断だけシビアに考えると良いかもしれません。
◎価値の高い変化がある手はあせらない
しかし、当然なんでもかんでも鳴いていいわけではなく、特にチーテン・ポンテンではない鳴き、有力な打点や形の変化があるのにそれを殺してしまう鳴きは注意が必要です。牌図②は、ドラのないターツ十分形で愚形ばかり。この条件だけなら愚形はすべて鳴いて白バックで進めても良さそうですが、丁寧に評価するとピンズは連続形かつ遠くにホンイツや一通がある形。1萬ポンから入れば2筒がほぼ頭に固定され、連続形の意味がなくなりますし、打点もほぼ1000点に固定されます。アガリに遠いからこそ、字牌のさらなる重なりや、遠い一通を狙っても和了率がそこまで落ちず、それに比べれば倍々になる打点の価値が勝ります。単純な愚形や打点上昇の見込めない手はドライに鳴き、まだ可能性の見込める手やアガリに遠い手は、形が決まるまでじっくりツモで進めていいのだと思います。
◎相手の対応が変わる鳴きは一呼吸置く
最後に、鳴くべき牌は鳴くべきとはいえ、相手の対応に大きく依存する手については、ある程度注意が必要です。牌図③はドラとダブ東のダブルバックでどこからでも鳴いていける親の満貫ですが、しかしタンヤオでないことが分かれば、ドラはもちろんダブ東は通常より出にくい牌になります。また、端牌を絡めなかったとしても、ドラが字牌のときに親が序盤から両面対子を鳴いてきたら、1500点とは考えにくく、ダブルバックやドラ暗刻が疑われます。対応が丁寧な人相手だと役牌が全然出てこず、それどころか上家も簡単に鳴かせてくれないので面前のようになってしまい、テンパイ止まりということも多いものです。
そもそも鳴きの強みは、相手が切る牌がほぼ変わらないとすれば、それを利用できる分、手の進みが早くなるということで、ポンテン・チーテンが強いのも、相手が切る牌で自分の未完成部分を補えるという前提が成り立つからです。すなわち相手に極度の警戒をあおる鳴きは、面前のままなら良形レベルに解消しやすい役牌対子などを、愚形にしながらシャンテン数を進めているようなものなのです。
ここは一呼吸、面前で一つ両面を埋めるか、どちらかの役牌が鳴けるのを待つ意味で、最序盤は両面部分をスルーするのが良いでしょう。とはいえ、遅すぎて、相手に先制されてはそれも良くないので、巡目が進んでくればどこかで、出にくくなっても構わないからと、鳴いて間に合わせにいく必要があります。相手がどのくらい鳴きに対応してくる打ち手なのかというのも、判断材料として大きいです。
鳴きは和了率・打点・変化・守備力・相手からの見え方といった、様々な要素を把握した上で、鳴くな鳴かないかという判断を下します。
自分の「副露バランス」を見つけ、実戦では迷いのないようにしたいものですね。
PROFILE:最高位戦日本プロ麻雀協会C1リーグ所属。
早稲田麻雀部元部長。
大学対抗麻雀駅伝に早稲田のアンカーで出場し優勝。
天鳳九段(ID:焚き火)。
雀風は数多の戦術からいいとこ取りの門前攻撃型。