「麻雀コラム」 連載第九回
麻雀大好き落語家の三遊亭楽麻呂師匠が「麻雀」で
現代社会を愉快に叩っ斬る!
第九回「部活」
三遊亭楽麻呂
「おお、八っつぁんかい。どうした。
やけに暗い顔をしているな」
「友達が大変な目にあってるのを見て、
かわいそうになりましてね」
「どうした?」
「その友達ってのが、学校の先生をやってましてね」
「小学校かい?」
「いえ、中学なんです」
「今の時代、教師の方々は大変そうだな」
「そうなんですよ。
保護者の人達からの圧力はすごいし、
何より、労働時間が長いんで」
「そうなのかい」
「彼はもうくたくたで、一番の趣味の麻雀も
このごろはめっきりやらなくなっちまったんですよ」
「それはさみしいな」
「あいつとは好敵手でしたからね」
「学校の先生は何がそんなに忙しいんだい?
アタシの子供のころの先生方は
ゆったりしてたように思えるんだがな」
「まず、授業の準備から始まり、実際の授業、テスト作りに採点、
やることは山のようにあるんですよ。
それに加えて部活の顧問。
これが何より大変で」
「そんなもの、引き受けなきゃいいじゃないか」
「そうはいかないんですよ。
同僚の目もありますし、
引き受けないとなると風当たりも強いようで」
「なるほどな」
「もちろん、放課後は練習が終わるまでいなきゃならないし、
土日祝日も試合があれば1日つぶれるし。
まっ、とにかく目の回るような忙しさだそうで」
「その分残業手当が出るんだろ?」
「それがないそうですよ」
「出ない?」
「ええ、だから厳しいですよね。
おまけに必ずしも自分の得意の顧問になれる訳ではないんだそうで」
「えっ、学生時代に野球をやってた先生は野球部の、
バスケをやっていた先生はバスケの顧問
ってな具合ではないのかい?」
「そうなんですよ。
異動の時にその辺のバランスを取って決めるって訳にゃいきませんからね。
必ず偏りが出ます」
「ほー」
「1つの学校に野球の得意な先生が3人集まっちまったりします。
そして、困るのが得意な先生が誰もいない部です」
「その場合はどうするんだ。欠員か?」
「そんなことできませんよ。
顧問なしなんてのは。
で、無理やり誰かをそこに押し込むんです」
「慣れない部の顧問をやらされる先生は
たまったもんではないな」
「そうでしょ。
で、彼がその慣れない部の顧問をやらされてるんです」
「何の部だい?」
「相撲部なんです」
「相撲?」
「ええ、取ったことがないどころか、
観たこともないそうです」
「それは気の毒だ」
「相撲の指導だけでも難儀なうえに、
この間不祥事が起こっちまって」
「何が起こった?」
「上級生が下級生を殴ったんだそうです」
「物騒だな。素手でかい?」
「いえ、カラオケのリモコンで」
「そりゃ怪我したろ」
「ええ、入院にまでなっちまって」
「いやはや」
「そしたら、顧問の彼まで心労で体調を崩して
入院になっちまいました」
「彼まで入院!
いったいどこに入院したんだ」
「泌尿器科です」
「うーん。ともかくボウコウで苦労したということだな」