麻雀新聞第196号 1991年(平成3年)11月10日
いつでも誰とでも楽しく対戦
パソコンソフト『YOU雀』パソコン通信『雀ネット』
システムプロが新開発
マージャンブームを起こすには、まずマージャンが話題になることが必要だ。だからこそ、ゲームセンターのジャンピュウターにも底辺を広げる役割があるという見方も成立する。どんな形であれ、マージャンというイメージに親しみ、近づいてもらえれば、第一段階と考えられる。パソコンソフトでもマージャンは根強い人気を保っているという。若者のマージャン離れというが、実はマージャンを全く知らないわけではない。だからこそ、コンピュータ相手のマージャンであっても、日常的に楽しむことにより潜在的なファンとして何かのきっかけでマージャン牌を手にすることも可能なのだ。
そんな好例と思われるものが、横浜市にある㈱システムプロが4年前に開発したパソコンソフトの「YOU雀」、さらに世界初のマージャン専用パソコンネットワーク「雀ネット」である。社長の逸見愛親氏は開発のいきさつを次のように語った。
「娯楽に対する嗜好が変わっていく中で、マージャンはまず4人が集まらなければ出来ない。それとマージャン店のイメージが悪く、敬遠される。そういった点を改めればマージャン自体はおもしろいゲームですから、新しいファンも生まれ、いったん遠ざかった人でもまた楽しむようになる。
一番の動機は、マージャンを好きな社員が多いのに、時間と場所がない。いつでも静かにできるマージャンゲームをということでした」
その主な特徴は次のようなものである。
ゲーム画面は、リアリティーあふれる4人囲み表示で、冷静・沈着三飯強の思考ルーチンを持つ8人のコンピュータ雀士がまるで競技マージャンを思わせる打ち方をする。
「雀ネット」にアクセスすると、未知の対戦者同士が4人でマージャンを楽しむことが出来る。一人画面に向かってコツコツとゲームをやっていて、ふと「この楽しさをだれかと共有できたら」という思いを満足させる。いつでも、どこかの誰かとマージャンが出来るわけだ。
常連客でもメンバーが4人そろわずマージャンが出来ないことがあるが、雀ネットはホスト(フリー店におけるメンバーのような存在)が代打ちをするので、2人でも3人でもゲームが楽しめる。ほかの会員からゲーム参加の要請があれば、ホストは代打ちをやめ会員とメンバーチェンジをする。
さらに、対戦中の会員のうちの一人が突然、回線が切れたり回線エラーで電話が切れてしまった場合、ホストがその時点で引継ぎ代打ち(フリー店のピンチと呼ばれるケース)を開始する。
ゲームは1局単位であるが連続プレーも可能だ。ただ、5、6人の会員が待っている場合、抜け番のルールに従ってメンバーチェンジをする。会員は現在、横浜では約50人。ソフト開発、自営業、学生といった20~30歳が中心。このシステムは横浜以外に大阪、奈良で運営されている。雀ネットの会員になるには、入会金3000円(980円のYOU雀ソフトが付く)、月会費3000円。それ以外は通常の電話代が使用料。
ゲーム中にそれぞれが未知の会員に対して
「はじめまして」
「久しぶりですね」
「今のはちょっと強引でしたね」
とメッセージを送ったり、受けたりして仲間意識が深まる。そして、会員の中には時間と場所を決めてマージャン店で待ち合わせて、楽しむ人たちもいる。
ここがポイントだ。
パソコンで遊んでいるだけでマージャン店には関係ないと考える人が多いが、やはり牌をにぎって生身で対戦したいという気持ちは誰もが持っていて、それを実行したいというわけだ。
ファンがマージャンから足を遠ざけてはだめで、どんな形にしろ、マージャンにかかわりあうことが重要なのだ。システムプロでは、この秋から雀ネットリーグ戦を開催した。今までの1局単位のゲームでなく半荘単位でおこないその得点を競うというもの。ABCリーグに分け、3ヵ月、6ヵ月間の総合成績により、上位の入賞者には麻雀新聞とタイアップしてザ・パーティーに招待し女子プロとの対局や段位贈呈など、企画内容も充実している。雀ネットで鍛えた腕前が、実際に卓を囲み牌を握り女子プロを相手にどんな形で発揮されるかたのしみである。