1990年(平成2年)12月10日 第185号
情報の窓
新聞・雑誌に報道された記事からマージャンに関連するものを抜粋集録しました。
個人志向化で新たな波
増える一人客用の卓
テレビゲームもヒット中
朝日新聞・群馬版10月20日掲載。『若者交差点』という特集記事でマージャンを取り上げたもの。
大正時代、中国から伝わって以来、すっかり日本人の生活に根を下ろしたマージャンの「若者離れ」がささやかれている。群馬大、高崎経済大の両大学に同好会はなく学生寮で卓を囲む光景も少なくなったという。十年前、三百五十八店あった県内のマージャン荘は、今年八月未現在、二百八十店(県警防犯課調べ)。レジャーの多様化の影響か、それとも四人のメンバーが集まりにくい時代なのか。
しかし、その一方で、個人でも参加できる「フリーマージャン」の台頭、マージャンをファミコン化したテレビゲームの流行など、新しい波がこの世界に押し寄せている。今回は最近若者マージャン観―。
開業十年。家庭的な雰囲気で楽しめる、と評判の前橋市古市町、マージャン荘「福重」。約百平方㍍の店内に個人客用が四卓、団体客用は五卓ある。二日にわたり、同じ午後四時台に訪ねてみた。個人客でいっぱいだ。前日にも見かけた顔が二、三人。「授業をさぼっているので、学部、名前は言いたくない」という大学生。
やはり仕事をさぼっている会社員と一緒に、パイをにらんでいる。
「ジャン荘に入るには勇気が必要だが、色々な人と接することができ、学校で勉強するよりためになる。学生寮で遊ぶより面白い」と大学生。
「コンチハ」ど大きな声がして、若い常連客が入って来た。「今日は早かったじゃない」と従業員。自称浪人生というだけで、住所、年齢、経歴などはだれも知らない。あいにく空いた卓がなく、マージャン誌を読みながら、後ろで待機。勉強は大丈夫なのか、とこちらが心配になった。
県麻雀(マージャン)業協同組合の話では、マージャン荘経営はここ数年、四人一組の「セットマージャン」から、個人でも参加できる「フリーマージャン」へ、と重点が変わって来た。若者中心に、レジャーの多様化、個人志向化が進み、メンバーが集まりにくい時代になったからだ、という。
組合は、マージャンにつきまとう「かけ事」のイメージが若者に敬遠されるのを懸念。「頭を使う健全な競技」としてマージャンを改めて売り出そうとしている。若いファン獲得に向け、来年はグリーンドーム前橋で県選手権大会を催す構想もある。
一方、ファン層を中高生にまで広げた、といわれるのがマージャンテレビゲームだ。
インベーダーゲームが全国的にブームとなった八〇年以降、さまざまな機器が開発された。当初、それほどヒットするとは思わなかった、と関係者はいうが、普及台数は国内で四十万台とも五十万台ともいわれる。
ゲーム台の卸売業者として知られる「中日本リース株式会社」(名古屋市)によると、
①初心者がマージャンに加わるとゲームがスムーズに進まず、他の三人に邪魔扱いされる
②マージャン荘へ行くには勇気が必要
③テレビゲームに向かっていれば、だれからも失敗を責められず気楽、などがヒットの理由ではないか、という。
メンバーが必ずしも四人いらないという点がマージャン業界の常識を塗り替えた。現在、最も人気があるのは、アイドル風の女の子が画面に現れる機種。ゲームに勝つと、指名した女の子と画面でデートできる。若者に人気のあるテレビ番組を参考にしたらしい。
しかし、あまりにも機械的にコトが運ぶマージャンゲームには拒絶反応もある。「機械に向き合うのは、一人だけの世界に閉じこもるようでいやだ」というのが、マージャン荘での大半の声だ。日本プロマージャン運盟公認のプロでもある「福重」の中島啓之店長(四五)も「相手がどんなパイを切るか、どんな役を狙っているか、人間の表情をうかがいながら卓に向かうスリルは、テレビゲームでは味わえない」。
コンピューター時代とはいえ、やはり、マージャンの「王道」は人間同士で楽しむところにありそうだ。
勝ったり負けたりがフツーの〈麻雀〉
負けない男たちも凄いが勝てない私も珍しい
サンデー毎日10月21日号掲載。『西原理恵子の4こまコラム②・怒涛の虫』。筆者(さいばら・りえこ)は1964年、高知県生まれの漫画家。『近代麻雀ゴールド』などの数誌に連載のほか、『ゆんぼくん』『まあじゃんほうろうき』の単行本あり。
「あのね、三枚ずつ組にしてね、アタマが二枚あればいいんだよ。わかった?」
「はあい」
といって、いきなり雀荘の卓に座らされたのが一年前。以来、「麻雀の虫」が、すっかり私の体に棲みついてしまいました。
どんな虫かというと、右下の絵がその想像図。麻雀やるお父さんならわかっていただけるでしょう。別名「ギャンンブルの虫」。
私の場合、麻雀雑誌で描かせてもらってる、仕事がらみでもあるのだけど、いつしか、こんな面白いゲームはない、と思うようになりました。この「虫」は、年齢性別を問わず、棲みつくものらしい(もっとも、「実力」のほうは、サイバラには棲みつかないものらしい……悲しい)。
さて、その雑誌の企画で、いわゆる「雀プロ」の人を紹介してもらっているうち、1本物の博徒の世界を私はちょっぴり目撃したのでありました。麻雀に限らず、勝負事って、
勝ったり負けたり、だと思うでしょう、カタギの方は。
でも「本物の博徒」は、負けない。「不敗」の人って、いるんだよ、ホントに。教えられて、そういう方の顔を観察すると、なんというか、役者さんみたいな顔付き。いい顔っていうんじゃなく舞台の上でピーンと張りつめてる、そんな感じの顔。これは聞いた話ですけど、「負けられない」彼らは、緊張でいつも歯をくいしばってるから、歯がボロボロになる。
ストレスでカルシウムを消耗することもあって、最後は歯が完全になくなるんだって。まあ、そういう方たちの話を、あまり冗談では書けません。
「最後は死んじゃえば終わり」みたいなセリフが、普通に出てくるような方々です。麻雀漫画じゃない、実際にいるわけですから。
……ヘンな人の話を書くつもりが、コワい人の話になってしまったー。
えー、田舎のお母さんは心配しないように。「不勝神話」を誇る私には、みんなとっても優しいんだよーん。(単なるカモだ、お前は)