麻雀新聞第54号 昭和56年10月10日
営対戦略シリーズ急げ!!青年ファンの開拓
このままなら10年後は老人だけの娯楽場に
殺人のあった麻雀クラブを引き継ぐ
― まず最初に、麻雀業の前には、どんな仕事を?
会長 戦争から帰ってすぐ、東京荻窪でテンプラ屋をやったんです。当時、近所に住んでいた徳川夢声や、青バットの大下などがよく店に来ました。30年に荻窪駅前が区画整理されたため、郷里の静岡へ帰り、実家が花を栽培してましたから、この花を東京へ持っていって売ったり、金属クズの取り扱いをしたり、いろいろやりました。給料をもらったのは兵隊の時だけです。
― 麻雀業を始められたきっかけは?
会長 開業は34年ですが、当時麻雀荘の主人が殺されるという事件が起こりましてね。私も麻雀が好きでよく遊んでいたんですが、この事件の捜査に当たったのが私の友人で、「お前も麻雀が好きだし、主のいなくなったこの店をやってみたらどうか」と言われた。当時はまだブームの前だったんですが、私も若かったし、それならやってみようかと。友人が持ってきた資料を見ると、なかなかいい店なので、大家の所へ行ったんです。すると、「人殺しがあるような麻雀荘雀荘は、もう絶対お断りだ」と。私の前に暴力団員が行ったがそれも断ったらしい。それで、どうもだめだと友人に話すと「それじゃ、オレが保証人になってやろう」と。大家としては捜査担当の刑事が保証人じゃ断りきれないということで始めたわけです。
最大の課題は未加入者の全員加入
― 県連会長に就任されたのは、いつですか。
会長 45年に県連が設立されて以来8年間、会計をつとめましたが、昨年4月から会長をお引き受けしています。静岡県連は静岡市麻雀防犯組合(27年設立)が主体で作った連合会ですから、不文律のように、静岡市組合長が県連会長、沼津と浜松の両組合長が副会長をつとめるという伝統があるんです。
― 県下の業者数の変化はどうですか。
会長 昨年は20件ほど減りました。今年も減るでしょうね。今までは居抜きで売れる店があったんですが、最近はそれでも売れず、結局やめてしまうケースが多い。3件のうち1件は名義変更で続いても、後の2件はそのままつぶれていくという現状ですから。
― アウトサイダー数は?
会長 現在、県連加入業者は430点余で、未加入がだいぶあるんです。組合未結成の都市もありますし、静岡市では駅の南側の約40軒が分裂して別の組合を結成している。また、約60件の清水組合が初代・岩本正一会長の時代に県連から脱退したままになっています。静岡県連にとっては、この未加入者の統合が最大の課題です。先日も、県警、静岡南警察の防犯課長と話し合ったんですが、組合が分裂していると、警察としても面倒だし、アウトサイダーができやすい。業者が「どっちの組合に入ろうか」と迷った末に「まあ、やめとこう」という具合でね。警察では一本化したいという気持があっても、法定組合ではないので実際にタッチできません。今年の県連総会でも事業計画の柱として織り込みましたから、未加入業者を全加入させるために力を貸して頂きたい。また、現在分裂している静岡市組合については、こちらも広い気持でおりますので、県連未加入の方も、ぜひ、大きな気持で一本化へ向けて尽力していただきたい
若者ひきつけるナウな麻雀経営を
― ところで、静岡県では、6月1日から上限300円が許可されましたね。実勢料金の方はいかがでしょうか。
会長 静岡市内では上限200円の時に平均180円くらい。郡部は結束が強いため統制がとれ、県連内でも静岡、浜松あたりがいつも突き上げられる。静岡市内など、ひどい所は90円なんてのがありましたから。
― 新規業者の抑制は?
会長 うちの組合では何もやっていません。他の組合では加入金を高く取っている所もありますが、それをやるとアウトサイダーを増やすことになりますから。
― 現在の不況の原因としてレジャーの多様化、インフレルールなどが挙げられていますが、これについてはどうお考えですか。
会長 10年前のブームの時20~30代だった人たちが現在のお客さんの主流、つまり、30~40代の人たちが、どこの店でもお客なんです。一方、若い人たちは麻雀をやらない。15年ほど前には、うちの店にも静岡大学の学生がたくさん来てました。教育学部の学生に「先生になるというのに、麻雀ばかりしていていいのか」なんて言ってたくらいです。ところが今では一人もいませんよ。たまたま親戚に学生がいるので、聞いてみると、「麻雀なんか面白くない。鳥射ちだなんだって面倒くさくて仕方がない。それなら、サイコロ振って金のやりとりをした方が楽だ。」と、こんな状態です。
― ルールのインフレ化が進んでいるわけですね。
会長 そればかりでなく、レートも高くなっている。例えば、ウラドラご祝儀など、その場で現金を払ったりするケースですね。私の店はバラ打ちもやってますが、バラ客の場合はそういうことがなく、セット客に限られます。セット客には、このルールでやれ、と強制もできませんから、難しい面もありますが、この問題を放置しておくと、麻雀ファンの層が薄くなり、遊戯人口の減少につながる。県連総会でも、本年度の一つの課題として提起しましたから、今後具体的な企画を立てていきたい。
― 決まったルールで低レートの、1人でも安心して遊べるという、いわゆるフリー麻雀が東京などで流行ってきているようですが……。
会長 麻雀荘に1人で遊びに来られるのは、腕に相当自信のある人です。4人セットなら1人ヘタが入っても、内々だからということで何とかなるが。だから、どんなルールを決めて、もちろん、統一されたルールなら余計いいが、運よりもゲーム要素の大きいルールでやるのも一つの方法ですね。しかし、フリー麻雀でも、若い人たちが少ないから、お客が高年齢者になるのは免れない。これは一つの流れだと、私はとらえているんです。ブームの時に20代だった人は10年先には30代、40代は50代になる。これは理の当然なんだから。しかし、その間に新しい血が全然注入されなかったら、どうなりますか?麻雀人口2千万人とか言われますが、一番麻雀荘に来ていただきたいのは若い人たちです。若い人はある程度お金に余裕がある。今の主流の30~40代は皆世帯持ちで、子育てや住宅ローンで、それほど余裕がない。たまたま若い人が麻雀を始めたとしても、東風戦などバクチ的要素の強い麻雀へ入って行ってしまう。麻雀そのものが面白くないなんてことはありえないし、アルシーアルでさえけっこう面白くて楽しんだし、ドラ麻雀になって運の要素が強くなったが、それはそれなりに手づくりを楽しめる麻雀を普及させなければならない。若い人でゴルフをやる人が増えてきたが、麻雀も面白いんだと、もう一度振り返ってもらえるような方策を考えていきたい。とにかく、いちばん問題なのは今後10年間で、いま若年ファン開拓の手を打たないと何年か先には、本当のオジイさんばかりの雀荘になりますよ。
朽ちかけた木造家屋と同じ風営法
― 麻雀クラブが老人クラブにならないように、健全ルール・レートを徹底させて、若者の現代感覚に訴えるような営業をする必要があるということですね。
会長 これは非常に重大な問題です。今若い人たちに麻雀業を見直して頂かないと、将来、大変なことになるんじゃないかと思います。
― 最後に、今後の抱負を、どうぞ
会長 組合にはビジョンというものが必要です。全総連に関しても、一般組合員にとっては、全総連に加入して協力していても、いったい、全総連はどういった方向へ行くのか、という疑念がある。いくらスローガンを高く掲げても、実現しなければ無きに等しいのではないか、と。昨年の水上の会議でも私は発言したんですが、風営法は昭和23年に施工されて何年経ちますか?普通の木造建築なら、とっくに耐用年数を過ぎていますよ。この問題を、ただ麻雀業界だけの問題としてとらえるからいけない。他の風俗営業の組合と連携プレーで、真の意味で、風営法を改正していかなければいけないんです。私が実際に当たってみた範囲でも、パチンコ業では景品の換金問題、キャバレーでは我々と同じ時間の問題といったように、それぞれ、風営法のワク内で悩んでいる問題点がある。こうした他業種とタイアップして、風営法全般をもう一度見直す方向に持って行くことが、いちばん大事じゃないかと思います。もちろん、風営法をなくせと言うのではなく、我々を守ってくれる条項は残し、我々の悩みのタネになっている条項を改正してもらいたいということです。