麻雀長屋のひとびと -第四回「ハラスメント」-

「麻雀コラム」 連載第四回
 麻雀大好き落語家の三遊亭楽麻呂師匠が「麻雀」で
 現代社会を愉快に叩っ斬る!

第四回「ハラスメント」

三遊亭楽麻呂

「隠居さん、こんにちは」

「おや、八っつぁんかい。今日はやけに元気がないな。何かあったかい?」

「昨日、親方から怒られましてね」

「何かしくじったか?」

「アッシにとっては些細なことだと思ったことが親方の逆鱗に触れたようで」

「そうかい。で、何と言って怒られた?」

「このハゲーーーー、死んでしまえーーーーって」

「それはひどい物言いだな。いくら上司でも言い過ぎだ。パワハラ認定だな」

「何ですか、パワハラって?」

「他人に嫌がらせをすることをハラスメントと言って、その中でも権力をかさにきて、部下に言葉等の暴力を振るうことをパワーハラスメント、パワハラと言うんだ」

「へー、そうなんですか」

「あまりに度が過ぎていると、上司の方がやめさせられたり、場合によっては犯罪になることもある」

「確かに、立場の弱い者に対して居丈高になるのは感心しませんね」

「その通りだ。昔はあまり問題にされなかったが、今ではペケだ」

「他にも、ハラスメントってのはあるんですか?」

「色々あるな。例えばセクハラ、これは聞いたことがあるだろ?」

「あー、そうですね。これもひどい話で絶対にしてはいけませんね」

「そうだ。あとは妊婦さんに嫌がらせをするのをマタニティハラスメント、略してマタハラと言う」

「なるほど」

「変わったところでは、スメハラなんていうのもある」

「スメハラ? それは一体なんです?」

「においだ」

「におい?」

「人間にはそれぞれ不快に思うにおいがあるから、嫌いなにおいを嗅がされたら、これもハラスメントになるな」

「へー、これは気がつきませんでした。でも、言われてみればそうですね。嫌いなにおいは耐えられませんもんね。逆に言うと、自分も気をつけなきゃならないですね。好きな香水が万人受けするとは限りませんもんね」

「そういうことだ」

「そういや、隠居さんもアッシに対してハラスメントをしてますよ」

「冗談じゃない。アタシはハラスメントなんてしてないぞ。人聞きの悪い! いつアタシがお前さんに対してハラスメントをした」

「卓を囲んでいる時ですよ」

「麻雀をしている時かい?」

「そうです」

「身に覚えがないな。どんな時だ」

「いつでもですよ。アッシがテンパると安全牌ばかり切って絶対に当たり牌を出さない。これはアッシに対する嫌がらせ以外の何ものでもありません。オリハラです」

「オリハラ?」

「いつも降りてばかりいるハラスメントです」

「バカなことを言うんじゃない。勝負事だから振り込まないように打つのは当たり前だ。これはむしろ誉められてしかるべきもんだ。オリハラなんてない」

「そうですか。アッシにとっては不愉快極まりないんですがね。あ、そうそう、友達の熊のヤローも麻雀でハラスメントをするんですよ」

「あの温厚な熊さんが? 信じられないな。どんなことをするんだい?」

「アイツは麻雀が下手ですから、たまに後ろで見ていると、こっちの心臓がドキドキしちまうんですよ」

「そうかい。それは確かにハラスメントになるかもしれないな」

「そうでしょ。で、何ていう名前のハラスメントですか?」

「心がドキドキするんだろ、それはハラハラだ」

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