麻雀長屋のひとびと -第四回「ハラスメント」-
- 2019/11/10
- ひといきコラム
「麻雀コラム」 連載第五回
麻雀大好き落語家の三遊亭楽麻呂師匠が「麻雀」で
現代社会を愉快に叩っ斬る!
第五回「振り込め詐欺」
三遊亭楽麻呂
「隠居さん、こんにちは」
「おやおや、八っつぁんじゃないか。今日はどうした?」
「ちょいと、隠居さんに相談が」
「何だい?」
「昨日、家に葉書が来ましてね」
「誰から?」
「それが、民事訴訟管理センターってところからです」
「ずいぶん、お固いところからだな。でっ、何だって?」
「総合料金未納、最後通告ってんですよ」
「やたら難しいな」「お金を払ってない件があり、民事訴訟の訴状が提出されていて、連絡がないと差し押さえをするってぇ内容なんです」
「それはえらいことになったな。お金はキチンと払わなきゃ駄目だよ。で、何を払わなかったんだい?」
「それが、まったく心当たりがないんですよ。自慢じゃないけど、金払いはいい方ですからね。まっ、とりあえず、ここに連絡しなさいって電話番号が書いてあったので、電話してみました」
「それで、どうなった?」
「まずは、料金未納って書いてありますけど、何を滞納してるんですかって聞きましたら、それは答えられないって」
「答えられない?」
「そうなんですよ。で、どうすればいいかと聞いたら、これから言う番号に電話をかけて、弁護士に相談しなさいって」
「それで、その弁護士にかけたのか?」
「ええ、そうしたら、すぐにコンビニに行ってプリペイドカードを20万円分買って、その券の番号を教えろ。すぐにやらないと大変なことになると言われて、その通りにしました」
「プリペイドカードで20万円分?」
「そうなんですよ。しかし、それっきり向こうから連絡がないし、こっちから電話をかけてもつながらないんです」
「ははー、それはやられたな」
「何にです?」
「詐欺だよ」
「えっ詐欺?」
「そうだ」
「そんなことはありませんよ。葉書の差し出し人はきちんとしていたし、第一、訴訟番号までちゃんと書いてありましたよ、そ-355って」
「典型的な詐欺だ。騙されたな」
「えっー、そうだったんですか!!じゃぁ、払った20万円は?」
「二度と戻ってこないな」
「やられたー!!くやしい!!」
「今後は気をつけないとな。今の時代は詐欺天国で、被害総額は年々増える一方だ」
「そうだったんですか」
「そうそう、手口だって星の数ほどある。身近なところでは、メールやラインのなりすましで金をむしり取ろうなんていうのもある」
「それは驚きですが、隠居さんがラインを知ってることにもっと驚きました」
「アタシだってそのくらいのことは知っているよ」
「じゃあ、隠居さんは詐欺に引っかかるなんてことはないんですね」
「当たり前だ。ようは細心の注意力を持つってことだな。アタシの場合、麻雀でこの力がずいぶん身についた」
「へー、やっぱり麻雀はいいんですね」
「そうだ」
「それに考えてみれば、隠居さんは金にシビアですからね」
「大きなお世話だ」
「めったなことでは金を使いませんよね」
「アタシの一番の自慢はここ10年で、大きな出費は一度だけってことだ」
「何に使ったんですか?」
「この間、息子から電話があって、会社の金が入ったカバンを網棚に忘れてきて、このままじゃクビになるから50万円振り込んでくれっていうから、指定の口座に振り込んだんだ。まっ、子供のためだったら50万円なんて安いもんだ。ハッハッハ」
「………………」