麻雀に関わる人々
第九回:健康麻雀サロン 阿倍野 代表 仲内 豊 氏 ①
一口に麻雀と言っても、様々な業態が存在することを知っているだろうか。
ひとつは、フリー雀荘。ひとつはセット雀荘。
そして、近頃、各地で人気を博している健康麻雀。
今回は、そんな健康麻雀の講師であり、また代表でもある 仲内 豊 氏にお話を伺った。
仲内氏が代表を務める「健康麻雀サロン 阿倍野」については、以下のリンクから参照してほしい。
*以下本文中、敬称略
*当記事のまとめが、2018年2月10日に発刊される 麻雀新聞2月号 に掲載
記者
本日はよろしくお願いします。まずひとつ目の質問ですが、健康麻雀店をはじめたきっかけというのは?
仲内
いろんなきっかけがあって始まったんだけど、僕の父親が奈良の実家で、もう四十年くらい麻雀店を経営してまして、そこを手伝っている時に、麻雀関連の営業の人から、東京で健康麻雀のレッスンプロの講座をやっている、っていう募集のチラシをもらったんです。
健康麻雀を知ったきっかけは、それ。
やろうと思った自分の中の気持ちとしては、まずは煙草が嫌い。それが一番。
記者
ずっと健康麻雀の講師をされていた訳ではなく、一度ほかのお仕事もされていたんですか?
仲内
健康麻雀の仕事をやりだして二十年目くらいになるんですけど、最初はもちろん会社員をやっていて、まぁいろいろあって会社を辞めて。
それで、父親の店を手伝いながら、何しようかなと考えている時に、健康麻雀を知って、時間もあったから、(東京の)講座を受けにいったんです。
東京行って、健康麻雀のレッスンプロの講座を受けたのと、東京のフリー雀荘を数軒回りました。
というのも、父親のその麻雀店でフリー麻雀をやろうかな、と。田舎の方の昔ながらのセット専門店だったからね。
関西でいうところの貸卓。そこで、昼間の空いた時間に健康麻雀をやりだして、夜は三人打ちフリー。
僕が段取りをして、父親のお客さんの中で、メンバーが集まらないって人に声を掛けて、こっちでルールを決めてやってましたね。
当時――約二十年くらい前かな――井出先生が講師をしている時で、健康麻雀とは別に、井出麻雀スクールみたいなのもあって、時期も良かったんかな。
それで、父親の店の空いた時間を借りながら、健康麻雀を始めたのが一番最初。昼頃から十七時くらいまで、週に二回くらい。
それでも、やってる場所が場所だから、むかしの雀荘だから、なかなか集客面でも難しいところがあって、せっかく資格を取ったのに、仕事があんまりない。
じゃあお客さんに来てもらいやすい場所を逆に探そうと思って。雀荘に来てもらうのは、女性とか一般の人にはハードルが高いから。
そうしたら、文化サロン、カルチャーサロンだったら、女性の人にも来てもらえるんじゃないかな、とやりだしたのが、いまのこういう教室かな。
いまはもう自分のお店(健康麻雀サロン・阿倍野)もやってるけど、健康麻雀専門店としてイチから立ち上げたから、セットすらぜんぶ断ってます。もちろん、フリーも。そして十七時になったら閉店。
警察が一番びっくりしてますね。「お前ンとこ、ほんまに営業してるんか」って(笑)。ふつうの麻雀店は、十七時オープンが多いですから。
日本健康麻将協会の資格を取って、もう二十年になるのかな。十年目くらいから、いまのお店をやりだして。店の名前にも健康麻雀って入れて、健康麻雀しかしませんよ、って。
父親の店を、長い間手伝ってたから、その反対をやれば、(女性や一般の方にもウケが)良いだろうと。男性のダークなイメージ――むかしはダークな方がかっこいい、っていうのもあったけど、その真逆の店を作ろうって感じだったかな。
イチから(健康麻雀専門店としての)立ち上げは珍しいんじゃないかな。
記者
ありがとうございます。次は、健康麻雀を運営していく上で、いままで一番苦労したことといえば、なんでしょうか。
仲内
健康麻雀(の運営)をしてて、永遠のテーマと思ってるのは、「水と油」なんですよ。
記者
水と油?
仲内
こういう健全な麻雀しか知らない、最初からカルチャーとしての麻雀をいちから教室で覚えた人――健康麻雀のニーズでいま一番多いのは、女性のだいたい六、七十代なんですけど、その次に多いのは、定年された男性で、そういうかたは、ダークな麻雀を三十年、四十年やってる人ばかりじゃないですか。男性っていうのは、退職されてから、趣味のある人はいいんですけど、ない人が多い。定年してからお金を使って遊びに行くっていうのは難しいから、そうしたら、麻雀なら昔やってたから、ってことで(来てくれる人が多い)。そういう人たちが、同じ卓を囲むっていうのが(水と油ということ)。
たぶん、健康麻雀を運営している人すべての課題じゃないかな。やってる麻雀は健康麻雀で同じルールだけど、「質」が違うでしょう。
楽しむ麻雀と勝つ麻雀と、ぜんぜん違うじゃないですか。
記者
お客さんの層というか、卓割りというか、お客さん同士の相性というか……。
仲内
それがほら、分けられるだけでお客さんがいればいい。極端にいえば、ABCと分けられればいいけれど、実際、そんな綺麗に分かれる訳じゃない。
AとBの境はなに? ともなるし。自分はAだと思ってたのに、なんでCに入れられるの、って人も出てくる。
長いこと(麻雀を)している人は、当然分かってる知ってるってことでも、人によっては知らないってこともある。何十年も経験してれば分かるってことも、覚えたての人は、経験してないってこともあるからね。
ほかにもいろいろありますよ。
例えば、セットやフリーは、遊んでもらえば遊んでもらっただけで売り上げが上がるけど、健康麻雀の場合は一律料金だから。
記者
たくさん人を呼ばないと、集めないと、ということですね。
仲内
あとは麻雀をまったく知らない人への対応の仕方でしょうね。僕らの周りにはやってる人がいなかったから、どういうふうに教室を運営していくかっていうのも、お手本がなかったから。
記者
手探りのところから。
仲内
そうですね。僕らでも最初五年くらいは、自分がなにしているのかわからなかった。今でこそ、ちょっと形になってきましたけど。
生徒さん以外の人も多くって、もう何十年も来てくれてる人は、今更生徒っていう間柄でもないし。
ところで、こういうカルチャー事業の麻雀って、麻雀だけが目的ではなくって、ひとつのパックみたいなものなんですよ。
麻雀をしにここへ来て、お友達ができる、それでお茶に行ったり、お食事に行ったり、それから百貨店とかで総菜を買って帰る。そういうひとつの流れみたいなのが出来てるんです。
楽しみの、全体の一環の中で、麻雀というものがある。
麻雀の場合、特に健康麻雀は認知症予防のために、頭を使いながら指先使いながら、声を出す喋る。ひとりでもくもくとするものじゃない。そういう面で、クローズアップされてきてる。
記者
ありがとうございます。続いて――
次回は、2月23日更新予定です。