2023年(令和5年)10月1日から導入のインボイス制度について税のプロがやさしく解説! 文:税理士・酒井勤

◼️インボイス制度の概要

【適格請求書等保存方式(インボイス制度)とは】

適格請求書(以下インボイス)と呼ばれる一定の要件を満たす請求書のやり取りを通じ、インボイスを受け取った者のみ、消費税の仕入れ税額控除をできるようにする制度です。

【適格請求書(インボイス)とは】

インボイスとは、販売先に対し、税率と税額を正確に伝えるため、従来の区分記載請求書に必要事項を追記した請求書のことです。インボイス制度導入後は、消費税を納付する際に仕入先等が発行するインボイスがないと仕入税額控除が受けられなくなります。したがってインボイスは販売先に代わって、自社が消費税を支払う旨を明示した証書とも言えます。

インボイスには、以下の7つの事項を記載する必要があります。このなかでインボイス導入前には記載する必要がなかった項目は、②登録番号、⑤適用税率、⑥税率ごとに区分した消費税等です。

①発行者の氏名又は名称

②登録番号

③取引年月日

④取引内容(軽減税率の対象品目である旨)

⑤税率ごとに区分して合計した対価の額および適用税率

⑥税率ごとに区分した消費税額等

⑦受領者の氏名または名称

◼️インボイス発行事業者になるべきかならないべきか

【インボイス制度が始まるとどうなる】

インボイスを発行しないと、販売先は原則として消費税の仕入税額控除ができません。そのため、課税事業者においては自社の税負担増につながるケースや、免税事業者においては取引を見直されるケースが発生する恐れがあります。

◎自社が課税事業者である場合

課税事業者である自社は仕入税額控除を行い、消費税を納付します。仕入先からインボイスを入手できないと、自社は仕入税額控除ができません。そのため、自社の税負担の増加につながる可能性があります。ただし、簡易課税制度を選択している場合には、みなし仕入率に基づき仕入税額控除の計算をしますので、自社の税負担は増加しません。また、インボイス制度導入後6年間は、免税事業者からの仕入についても一定割合(最初3年間は80%、次の3年間は50%)を仕入税額控除ができる経過措置がありますので、上手に活用しましよう。

◎自社が免税事業者である場合

免税事業者である自社は、消費税の納付が免除されますが、インボイスを発行することができません。自社がインボイスを発行しないと、販売先は仕入税額控除をすることができません。それにより、販売先の税負担が増加するので、取引を見直される可能性があります。このような状況にならないよう、インボイスの発行を希望する場合は、インボイス発行事業者の登録申請をご検討ください。ただし、インボイスの発行事業者になるかどうかは任意であるため、最終的には経営者の判断となります。

◎自社が課税事業者であってもインボイスの登録中請を行わない場合

自社が課税事業者であっても、インボイスの登録申請を行わない場合には、上記免税事業者の場合と同様に、販売先は仕入税額控除をすることができず、販売先の税負担が増加するので、取引を見直される可能性があります。このような状況にならないよう、インボイスの発行を希望する場合は、インボイス発行事業者の登録申請をご検討ください。ただし、インボイスの発行事業者になるかどうかは任意であるため、最終的には経営者の判断となります。

◼️免税事業者の対応

【インボイスの発行事業者になるかどうかの判断】

インボイス制度導入後、インボイスを発行できるのはインボイス発行事業者への登録申請を行った課税事業者のみです。免税事業者がインボイス発行事業者になるには、課税事業者に切り替え、インボイス発行事業者への登録申請を行う必要があります。そのため、免税事業者は課税事業者になりインボイス発行事業者になるか、免税事業者のままでいるかを判断しなければなりません。課税事業者となってインボイス発行事業者登録を行った場合と、免税事業者のままインボイス発行事業者にならなかった場合のメリット・デメリットは以下のとおりです。

◎課税事業者になりインボイス発行事業者登録を行う場合

《メリット》… 販売先は仕入税額控除が可能となるため、取引が継続する可能性が高い

《デメリット》…消費税の申告納付が発生し納税事務の負担が増える。消費税分を販売価格に転嫁できないと、利益が減少する。

◎免税事業者のままでいる(インボイス発行事業者にならない)

《メリット 》…消費税の申告、納付が不要。

《デメリット》…販売先は仕入税額控除ができないため、取引が見直される可能性がある。

◼️課税事業者の対応

【インボイス発行事業者になるかどうかの判断】

インボイス導入にあたり、課税事業者はインボイス発行事業者になるかどうかを、どのように判断すればよいのでしようか。まず、インボイス発行事業者に登録した場合、販売先は仕入税額控除が可能になるため、取引関係を継続する可能性が高いでしよう。一方、インボイス発行事業者にならない選択もあります。その場合、インボイス発行事業者への登録申請や請求書の様式変更、インボイスの保存などの手間は発生しませんが、販売先は仕入税額控除ができないため、取引関係を見直される可能性があります。

◎インボイス発行事業者の登録を行う

《メリット》…販売先は仕入額控除が可能となるため、取引が継続する可能性が高い。

《デメリット》…登録申請の手間が発生する。自社の請求書の様式を変更しなければならない。発行したインボイスを保存する必要がある。

◎インボイス発行事業者の登録を行わない

《メリット》…登録申請等の手間が発生しない。従来通りの請求書が使用できる。インボイスの保存する手間がかからない。

《デメリット》…販売先は仕入税額控除ができないため、取引を見直される可能性がある。

インボイス発行事業者になるかどうかの判断は、販売先によっても異なります。例えば販売先が一般消費者のみの場合、仕入税額控除は不要なのでインボイス発行事業者になる必要はありません。ただし、現状は事業者への販売がなくても将来的に発生するかもしれません。また、一般消費者だと思って販売したところ、領収書を求められて、実は事業者だったとわかるケースもあります。さらに、販売者が事業者でも、その事業者が免税事業者や簡易課税を選択している事業者なら仕入先からのインボイスは不要なので、インボイス発行事業者となる必要がない場合もあります。

インボイス発行事業者になるかどうかは、自社の経営状況(収益状況、経理業務にかけるコスト、販売先、販売先との取引における関係性) や将来の経営戦略などを踏まえ、総合的に検討する必要があるように思います。

 

文:酒井勤

酒井勤税理士事務所

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