先日の午後1時15分。埼玉県の警察署へ許可申請に行くと生活安全課の部屋はてんやわんやの大忙し。これはまずいと生安課前の廊下ベンチに座って待つことに。
署員が外部に連絡を取っているのが耳に入る。「おばあさんが男にお金渡しちゃったんですね?」「場所はどこ、どの辺?」「その男の人相は? 判らない?」「服装は? ズボンに黒い上着」「こちら生安課、詐欺事件発生。犯人はタクシーで○○駅方面へ走り去ったもよう」「駅前に人員を配置してください」「タクシー会社に連絡して! ◇◇地点から黒い上着の男を乗せたタクシーの情報を取って!」「タクシー会社2社に連絡済み」「△△タクシーが当該地点から駅方向に男性客1人を乗せたのを確認」「タクシーナンバーは□□‐□□」「ナビで走行確認中」「おじいさんに確認。孫が大変だからといっておばあさんが100万円を入れた封筒をもって家を出て行ったとのこと」。
生活安全課の緊迫した空気が廊下まで流れる。部屋を出入りする署員。他の案件の電話が入ったりもしている。
すると「なに? 駅前を通り過ぎた? どっち方向へ向かった?」「感づかれたか?」「国道を北へ向かって走行中」「どこかでタクシーを止められないか?」「国道☆☆地点に先回り待機」……。
そのほんのわずか後に「容疑者確保」「間違いじゃないか確認して!」「孫へと書いた封筒と現金を確認!」の声に「よし!」の声が続く。その間30分。おそらく事件発生後から最短の逮捕劇だったことでしょう。
警察署へ出入りする仕事をして30年を超えますが、事件発生のまさにその時刻、警察署内の緊迫対応の現場の空気を吸ったのはこれが2度目。
それまでせわしなく生活安全課を出入りしていた担当官から「済みませんね。少々お待ちください」の声。「いやいや、そちらのお仕事優先で」というと、また生安課内から「どんな電話ですか? まだ払っていませんよね? 絶対お金渡しちゃダメですからね!」の電話対応が聞こえてくる。
担当官が申請書を受け取ってくれ、わずかな時間での受理。あまりにも短時間での受理に、こちらも詐欺を働いているかのような気分。住宅地の多い埼玉県のその警察署管内では高齢者を狙った特殊詐欺事件が多いとのこと。
因みにもう1回の緊急事件対応の現場は、地下鉄サリン事件発生直後の新宿警察署内でした。