「麻雀コラム」第83回
麻雀大好き落語家の三遊亭楽麻呂師匠が
「麻雀」で現代社会を愉快に叩っ斬る!
「隠居さん、こんばんは」
「オヤ、八っつぁんかい。こんばんは。今日はまたずいぶん赤い顔してるな」
「すっかりいい心持ちで」
「飲んできたのか?」
「ええ、今晩は知り合いのちょっとしたパーティーにお呼ばれして、しこたま飲んできました」
「それはご機嫌だな。麻雀仲間の会かい?」
「当然です。いいところに住んでいる人なんです」
「どこだい?」
「東京の日本橋は兜町ってところです」
「都心のド真ん中じゃないか。なかなかあそこには住めない」
「そうですよね。かなり羽振りのいい人で」
「じゃあ麻雀も相当強いんだろうな?」
「いえ、それがそうでもないんです」
「そうなのかい。お金持ちは麻雀も強いイメージがあるんだが」
「それは隠居さんの偏見です。今の時代そんなこと言っちゃいけません」
「そりゃそうだ失礼しました」
「まあお金持ちといっても自分で稼いだというよりは実家が裕福というか」
「それはうらやましい。差し障りがなければ教えてもらいたいが、実家は商売でもしてるのかい?」
「いや、お寺さんです」
「あっ、大きな寺院てわけか」
「そうですね。だから下の名前もそれっぽくて《日景》さんていうんです」
「にっけいさん、なんだかえらい僧侶のようだ」
「でしょ! でもご本人はお勤め人をしてますがね」
「ほー、でその日景さんが何のパーティーだっていうんだ」
「麻雀で今までの最高点を取ったお祝いです」
「なるほど。では親のダブル役満でもやって10万点超えでもしたのかな?」
「いえいえ、さっき言ったでしょ、あんまり強くないって」
「そうだったな。では何万点超えぐらいだったんだ」
「4万点です」
「微妙だな」
「しかし本人にとっては麻雀を始めて以来の最高得点だというんでお祝いということになりました」
「いつ出したんだい?」
「今年の3月4日です」
「で、それまでの最高点は何点だったんだ?」
「3万9千点弱です」
「ふーん、それも最近のことかい?」
「それがそうじゃないんです。アッシの生まれる前」
「もしかして昭和?」
「いえいえ、ぎりぎり平成です。平成元年の暮れも押しつまった12月29日」
「ずいぶん前だな」
「34年ぶりとなるそうです」
「ほー、じゃあその時もパーティーをやったのかい?」
「アッシは生まれてなかったので聞いた話ですが、時はバブルだったこともあり、それは盛大にドンチャン騒ぎをしたそうです」
「アトラクションなんかもあったのかな?」
「もちろんです。女性のダンサーを呼んで、口移しでチップを渡したなんてこともあったそうです」
「今じゃそんなこととても考えられないな」
「そうですね。狂乱の時代ならではですね」
「で、今日のパーティーは?」
「質素も質素、前回とは較べものにもならないぐらい地味でした。飲んで食べて終わりです」
「でも、お土産はありました。桜の蕾の枝です」
「春にはうれしい引き出物だな」
「というか、彼の気持ちが痛いほど籠っているお土産です」
「どういうことだい?」
「もう少ししたら、また咲いたかね」