- Home
- 麻雀コラム, 麻雀新聞バックナンバー
- 麻雀コラム「麻雀長屋のひとびと」第73回 三遊亭楽麻呂
麻雀コラム「麻雀長屋のひとびと」第73回 三遊亭楽麻呂
- 2023/7/12
- 麻雀コラム, 麻雀新聞バックナンバー
【ピッチクロック】
「隠居さんと麻雀が打てるのは幸せです」
「アタシも八っつぁんと卓を囲めてうれしいよ」
「そして今日のように雀荘でだとのびのびしますね」
「気を遣わなくてよく最高だ」
「特に今は開店直後で、打ってるのがわれわれ4人だけだから堂々と話しができますね」
「そうだな。他のお客さんがいたら大きな声を出したら迷惑をかけちまう」
「よーし、すぐにここは満卓になっちゃうから、次のお客さんが入って来るつかの間に普段は出せない大声でしゃべりましょう」
「そんな無理をすることはない。他の人がいても普通の音量で会話する分には何の問題もない」
「そりゃそうですね。気のおけない仲間と雀荘で話をしながら打てるのは天国だ。ところで隠居さんはメジャーリーグは観ますか?」
「大好きだ。特に大谷くん、エンジェルスのファンだ」
「やっぱりそうなんですね。そういえばこの間、大谷くんがピッチャーの時、まだ投げてないのに1ボールを宣告されたんです」
「今年からMLBのルールが変わったんだ」
「えっ、どういうふうにです」
「ピッチクロックといって投球動作に時間制限が設けられた」
「どのくらいですか?」
「ランナーがいない時は15秒、いる時は20秒以内に投げなきゃいけない」
「違反すると?」
「1ボールが加算だ」
「あっ、それで先日大谷くんは投げてもいないのに1ボールになったのですね」
「その通り」
「でもテンポ良く試合を運ぶにはいいルールですね」
「そうなんだ。終了時間がまったく読めないのが野球のアキレス腱だ」
「確かに、日本のプロ野球を観に行って、終わりそうな時間に居酒屋を予約しておいたら、試合が延びに延びて大遅刻で怒られたことがありました」
「他のスポーツは大体の終わる時間がわかるが、野球だけは終了時間が深い霧の中だ」
「逆にそれが魅力でもありますが」
「さらにMLBだと引き分けがないから延々と延長戦が行われることもある」
「ますます終わりが見えなくなるし、時間もかかりますね」
「そこで危機感を覚えた連盟がさまざまな対策を講じてきた」
「例えば?」
「延長に入ったらノーアウト二塁から始めるタイブレーク制なんかもそうだ」
「点が入りやすくなり、速い決着が期待できますね」
「その通り。そして一番頭を悩ませていたのが、ピッチャーの投球までに入る時間だ」
「そういえば、たびたびロージンバッグに手をやったり、キャッチャーのサインに何度も首を振ったりしてなかなか投げないから、テレビのこっち側から思わず『早く投げろ!』って言っちゃうこともありましたね」
「そうだろ。打者の集中を削いだり、しびれを切らしたりするかけひきもあるだろう」
「あんまりダラダラやられると観てる方も参りますね」
「そうだな」
「でもこれで試合運びも早くなりましたね」
「そうそう、やっぱり何事も時間制限は大切だ。アタシに言わせると『時間制限こそが神』だ」
「なるほど。ところで隠居さん、話をするのもいいんですが、早く牌を切ってくださいよ」
「うるさいなー。ここは考えどころだ。急かすな」
「ジリジリしちゃいますよ。もっとテンポ良くいきましょう。あっ、時間制限を設けましょうか?」
「冗談じゃない。時間制限なんて最悪だ。アタシに言わせると『時間制限こそが悪魔』だ!」