麻雀新聞第279号 1998年(平成10年)10月10日
激変の時代 マージャン業は生き残れるか?【8】
発想は実現に向け発展
突飛な企画は金生まず
《発想と実現の間のカベ》
新商品にしても新サービスにしても発想とその実現化との間には大きな隔たりがある。実現化のためには資金、期間、知的所有権、妨害など多くの問題の解決が不可欠だ。思いついた当初は金の卵のように見えていたプランも、各種の障害をクリアする度にその輝きを失っていく。発想者が広範な知識を持っていれば実現化は早まるが、狭い知識の中からの発想は自分が惚れているだけで、その道の専門家から見れば赤子のアイデアと映る。
《アイデアは話して発展》
すばらしいアイデアだから他人に漏らしたら真似をされると思う人は開発者に向いていない。本当の企画マンは白分の知識の限界を知っている、だからアイデアをどんどん他人に話す。そして他人の反応やアドバイスからより実現性の高いアイデアへと発展させる。肝心の部分は信頼のおけるブレーンにしか伝えなければいいのだ。
《内容高めたらチェック》
今のような情報社会では、企画者と同じような環境に置かれて同じ発想をする人が20人いると言われている。従って発想するだけでは不十分、発想したら内容を高めるように心がけなければならない。毎日、前日の考えが陳腐に見えるぐらい、情報収集と工夫に努める。そして毎日の進歩が極端に鈍くなった時、当初のアイデアの思想が生かされているかをチェックする。これを怠るとピント外れの商品になってしまう。斬新性は思いつきの中にあるものだ。
《改良点・時期を念頭に》
いざ実現化へとスタートしても、将来、改良すべき点が次から次へと出てくる。「開発者=事業家」と言えないのはここだ。先が見え過ぎる人は不安で踏み切れない。本当の事業家は改良点とその時期を頭に入れながら進めることができる。
《時流に乗り、半歩前進を》
一方で、アイデアが先行し過ぎるのもよくない。時流に乗らないと世の中には受け入れられないからだ。
私も多くの失敗をした。いま流行の抱き枕も「そい寝孫太郎」の名で10年以上前にマスコミで話題になったがビジネスにはならなかった。ファックスによる情報サービスも騒がれたが15年早すぎた。テトリスが生まれる10年前にパソコン用に同様のゲームをプログラムしたが、ハードの付録にしかならなかった。環境が整備されないと失敗する。大企業なら消費者が待ち望んでいる時にタイミングよく出すことができるが、中小企業ではそうはいかない。三歩前進は失敗で半歩前進の商品で我慢することが大切だ。つまり、あまりにも突飛なアイデアはニュースになっても金にはならないということだ。
《利権に抵抗して得なし》
店の活性化プランにも同じことが言える。店を取り巻く利権に性急に抵抗してもメリットはない。おしぼり屋・花屋に名を借りたみかじめ料を断ち切るよりも、裏社会と正業でつきあって利益を増やすことを考えた方がいい。
《関係法規を頭に入れる》
地域差はあるが立看板やはり紙に行政の許可が必要だったり、そのために手数料が必要なことを知らずに営業している店が大半だ。食品衛生法に100%従っている店は少ないだろう。店の営業も満点主義だと利益はなくなる。自店だけ順法精神に徹しても周囲から白い目でみられるのがおちだ。法に触れないギリギリ、もしくは低触しても許容される範囲内で進めた所が利益を生み出している。法を知らずに犯している人は善人でなく愚人と言われても仕方ない。本当の善人には商売は向かない。関係法規の存在は知っておいた方がよい。法を熟知して進む大企業に比べて、知らない小企業は危機に対処できない。
(つづく}