【追憶の麻雀】第46回「麻雀の『ツキ』」

追憶の麻雀

昭和61年3月10日   第128号

 

麻雀の『ツキ』

 

マージャンをやるからには、強く(うまく)なりたい。勝ちたい―これは人情というものであろう。

 

識者によると”強い”と”うまい”は多少違うことであるが、そのせんさくはさておき、では”強い”とはいったいどういうことであろうか。俗に”心技体”の三要素ともいうが、具体的には、およそ5つに大別されるという。

 

①技

②体力

③精神力

④勝負の駆けひき

⑤運

 

である。

 

さて、マージャンを戦うとき、この5つの中で、特に⑤運を強く感じないだろうか。むろん①~④を軽んずるわけでは決してない。マージャンは「運が7分に技3分」といいならされているが、人によっては「運6技4」かも知れない。ともかく”運”の存在は公認の事実。

 

ここでいう運とは、すなわち我々がよくロにする「ツキ」果してマージャンでは本当に「ツキ」がモノをいうのだろうか。ツキを呼びこむにはどうすればよいか、いや、そもそもツキとは何だろうか。本稿ではそれを考えてみたい。

 

秀の山親方のツキ

ニ度難逃れる強運

 

早くも半年余り経つというのに、いまだに記憶に生々しい例の日航機墜落事故。

 

ここで亡くなった方々の不運は「悼ましい」のほか、いいようがないが、他方で奇跡的に助かった4人の『ツキ』には、国中こぞって祝福したものである。

 

いくら旅なれた人々でも、飛行機の離着陸時には緊張するという。事実、旅行家T氏はこういう。

 

「先日、飛行機で沖縄に行ったんだけどネ、隣席に坐った60年輩の婦人が、離着陸のたびに、胸の前で両手を合わせてるんだネ。でも、とても笑う気にはなれなかったよ」

 

―皮むけば自分も同じ気持、ということであろう。だからこそ、列車保険・バス保険というのはなくても、航空機搭乗者傷害保険はあり、それが大いに繁昌するということなのだろう。

 

飛行機ついでにいえば、相撲の秀の山親方(元関脇長谷川)にも、まさに『ツキ』を地で行く、忘れられない二つの事件、があるという。

 

一つは、41年2月の全日空機墜落事件。札幌”雪祭り”見物の客ら130人余りが、羽田沖で遭難した惨事である。

 

長谷川は、郷土力士として雪祭りに招待されていたが、たまたま急用で、乗るはずのこの便に乗り遅れ、難をまぬがれたのだという。乗り遅れた時点では、彼はきっと地団駄ふんだに違いない。が…!

 

いま一つは、その2年余り前の38年11月、九州場所2日目に起ったフグ中毒死事件。

 

部屋のチャンコ番力士が2人、チャンコの”毒見”をして、トン死してしまったのである。

 

この日、長谷川もチャンコ番だったが、たまたま、腹の具合が悪くて味見をしなかったのだという。

 

こういう不思議な”実話”を聞くと、麻雀ならずとも確かに『ツキ』は存在するといえようではないか。

 

ツキの神は公平?

 

これほどのツキ男長谷川。

 

では、何でも思う通りに?いったかというと、それが必ずしもそうでないから面白い。

 

例えば、土俵の上。ここでは何度かツキを逃している。大関挑戦の失敗数回がその典型である。この大関昇進がならなかったのは、規定勝数の不足の時も何度かあるが、中には自力

には全く関係のない『時の運』もある。

 

つまり、ほぼ規定勝数に達しながら、当時”上が支えでいて”(横綱、大関がいっぱいで、これ以上ふやしにくくて)上れなかったケース。

 

もし、普通の時ならば上っていただろうといわれる。事実、同じ星で大関になった力士も多いわけである。してみると、ツキは何も長谷川だけに集中しているのではないことが分かる。

 

ということは、逆説的ながら、これほどの『ツキ男』にしてこういう『不ゾキ』もあるということだ。

 

つまり、強運の星の下に一生を送る人も、まれにはいるかも知れないが、普通は誰でも多か究少なかれ『ツイ』ている時とそうではない時の、波の間をゆらゆら生きているということであろう。

 

まこと「禍福はあざなえる縄のごとし」ではある。

 

麻雀とツキの関係

 

さて、いよいよ本題に入ろう、読者は、マージャンを「勝負」と見るだろうか、それとも「ゲーム」と見るだろうか?

 

おそらく、プロ(勝負師)は勝負と見るだろうし、対照的に初心者はゲームと見るだろう。

 

これは、心の置きどころや収入(生活のカテ)のあり方その他諸々の要素によってきたる由縁であって、むろん、どちらが正しいか、とか間違っているかというスジのものではない。

 

とはいえ、プロと初心者の間に位置する一般のマージャンファン、つまり圧倒的多数の人々はきっと「勝負のゲーム」と見るに違いない。その心は、マージャンそのものの面白さがあってこその勝負、ということであろう。

 

早い話が、勝負だけだったら、チンチロリンでもいいはずだし、丁半でもいいはずだから、何もマージャンファンである必要はない。

 

このことは、マージャンに限らず、碁・将棋・オセロ……などの頭脳ゲーム、あるいは野球・サッカー・ラグビー等のスポーツにもいえることである。

 

とはいえ、これらから”勝負!”を全く取り去ってしまったら、人間誰も寄りつくまい(いや、モノ好き?人間は寄りつくかナ)。かくして、我々はゲームの味を楽しみ、勝負を楽しむ。ゲームであるからには、そのダイゴ味を味わいたい。勝負であるからには、当然に勝ちたい。

 

結局、マージャンファンは、マージャンを楽しんで、勝つ、これが最高だということになる。また、勝てばますますマージャン(に限らず何のゲームでも)が面白くなるのである。

 

では「いかにしてマージャンの勝者たり得るか」―これが簡単でないのは、常日ごろ我々が実感するところである。強ければ100%勝つ、というものでもない。いろいろなゲーム展開があり、それに前文で記した①〜⑤の条件が組み合ってくるのであるから……。

 

ただ前述のように、マージャンの場合、特に強調されるのは、『ツキ』という言葉が、必ずかえってくることである。それほどツキは、他のゲームには見られないウェートを占めている。

 

つまり、勝率を高めるには、これを研究し活用することが焦眉の急ということになる。

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