麻雀新聞第248号 1996年(平成8年)3月10日
麻雀人気復活へ”リーチ”
テレビゲーム・漫画が一役
日本最大級の規模の麻雀大会「第七回最強戦」が、麻雀の漫画誌を出している竹書房主催で十四日、東京・飯田橋にあるホテルグランドパレスで開かれた。会場となった松の間には、全自動麻雀卓五台が並べられ、張りつめた空気の中、午前十時過ぎに予選の第一回戦が始まった。
この大会に参加したのは、麻雀プロや著名人、漫画家、読者代表ら、それぞれの予選を勝ち抜いた16人。予選全五回戦を戦って、持ち点の上位4人が決勝に進出、優勝を争う形式だ。前回の大会では人気俳優の萩原聖人が決勝に残って、話題をよんだ。
囲碁や将棋に比べると、麻雀は短期決戦の場合、実力の差が必ずしも結果に出にくい。過去六回でもプロの優勝は二度しかない。それだけに今回、プロとしてただ一人決勝に残った飯田正人は気迫が違った。飯田は、爆発力のある打法から”大魔人”の異名を持つ。予選終了段階ではトップのギャンブルライター山崎一夫に大きく水を開けられていたが、大物手を仕上げて大差を逆転。見事差し切ってみせた。
この大会に出場を希望する一般読者の応募は約二千通にも達した。応募をさばききれず、今回は東京だけでなく大阪でも予選を開いた。宇佐美和徳竹書房第一編集部本部長は「読者の中心は従来の22歳前後から17歳前後に若返りつつある」と語る。若返りのきっかけはゲームソフトだ。「最近はゲームで麻雀を覚える若い人が多い」(宇佐美本部長)。
麻雀ゲームはゲームソフトの隠れた定番。ほとんどのゲーム機に対応した麻雀ソフトが発売されている。最近の特徴はまるで実際に人間と対戦しているような臨場感のある構成だ。最新のプレイステーション用ソフト「スパローガーデン」(ナムコ)は、画面が三次元で立体的に構成されている上、打ち回しや手作りなどの攻防にも実戦さながらのリアルさが感じられる。
「女性が増えたのも最近の傾向」。「麻雀サロン優和」も経営する伊藤優孝日本プロ麻雀連盟副会長は話す。千点につき五十円の通称「点五」レートが定着してきたことなどを背景に、「かけ事ではなく娯楽として気軽に楽しむ女性が増えた」(伊藤副会長)。雀荘側も明るい内装に変え、たばこ用の空気清浄機を備えるなど、配慮している。
こうした麻雀人気を受けて、フジテレビ系で昨秋から放送が始まった麻雀番組が「THEわれめDEポン」。民放キー局で麻雀番組が復活するのはかつての「11PM」以来だ。石橋貴明、秋元康、和田アキ子ら芸能人が参加し優勝を争っている。放送は隔週月曜の深夜一時五十分からと変則的ながらも、三%前後の視聴率を得てまずまずの滑り出し。昨年末には午前五時まで生放送という特別番組も放送した。
麻雀人気を支える最大のメディアが漫画。竹書房が刊行している『別冊近代麻雀』『近代麻雀オリジナル』などの月刊漫画誌はいずれも公称二十五万部の部数を誇る。西原理恵子の「まあじゃんほうろうき』や片山まさゆきの「ノーマーク爆弾党』などは単行本でも息の長い売れ行きを記録している。中でも西原の一連の作品は、知られざる麻雀プロの世界を痛快な語り口で伝えた点で、麻雀普及に一役買った。
普及のカギを握るのが初心者への手ほどき。日本プロ麻雀連盟は初心者にとって難敵の点数計算について、「百点単位から千点単位への簡略化を検討している」(伊藤副会長)。世界選手権の開催も準備中だ。雑誌にも初心者向けの解説が増えており、今後、麻雀プレーヤーの底辺は広がりそうだ。
(敬称略)