1992年(平成4年)1月10日 第198号
紙牌から全自動へ
解説書『麻雀の秘訣』発刊
巷に同立つ風俗犯罪
1947(昭和22)年10月25日に徳田伊楚二著の『麻雀の秘訣』という麻雀の技術書が虹有社から出版された。現在の専門書に比べると、当然、内容的には乏しいといえるが、当時はほかに技術書が無かったため、たちまち愛好家の間に広まり評判になっていった。参考までに第一の『最初の計画』の部分を原文のまま抜粋してみる。
「最初の配牌をよく吟味して聴牌(テンパイ)出来そうか否か、出来そうであればどんな聴牌に導いていくか。又役を作るかを計画する。この最初の計画によって打牌の方法に様々の変化が生じてくるが、まず最初に聴牌出来そうかどうか。
これが分かるまでには一朝一夕の練習では至難で相当の研究をし練習をしなければ予想する力は得られる物ではない。そこでここでは大綱をあげるに止めるからあとは読者の研究にまかせる。
まづ配牌に目を通し牌の組み合わせを点検し必要な牌が三ケ来れば聴牌になるという組み合わせであったら当然上がり得る手である。普通入用な牌を三ケ求めるためには六、七回の自模(ツモ)で充分である。
即ち六、七回順番が廻る間には或いは吃(チー)し或いは磁(ポン)し或いは自分で接して比較的容易に聴牌に達することが出来る。こんな場合翻牌(ハンパイ)の一枚ものなど遠慮なく捨てる。それを吃されても磁されても心配無用です。このやうにして上がりにまい進する」
簡単に内容を解説すると、配牌を取った時にどういうあがり役を作るか、まずその構想を立てることが必要だと書かれている。配牌三シャンテンならば、聴牌できる可能性があり、ツキがあるときは、二回に一ケの必要牌をツモれるから、六回か七回ツモ番があればテンパイできる。また、チーあるいはポンをすれば容易に聴牌できる。
聴牌させるためには、たとえション牌やファン牌であっても、相手にポンをされることを恐れず思い切って捨てていき、聴牌に向かうべきだ、という趣旨だ。
一般に麻雀のツキを測るバロメーターとして、配牌を見て四シャンテンの場合は普通のツキ、三シャンテン二シャンテンならはツキがあると判断する。ツモ状態から見ると、4回に一個の必要牌をツモれれば普通のツキ、3回に一個、あるいは毎回必要牌をツモれれば相当にツキ運に恵まれていると見ていいだろう。現在は、いろいろな人が技術書を書いており、たとえ初心者でも参考書に困ることはなくなっている。だが当時にしては貴重な参考書だった。
内容的に解説が不十分な点もあったが、全体的に見ると麻雀遊技の核心にふれた技術書だったといえるだろう。
また、同時期に東京都麻雀組合連合会は組織としての活動を進めようとしていたがもなかなか思うように効果は上がらなかった。
会長を始めとする役員一同は、自分の営業を放ってまで連合会のために努力していたが、ほとんどの組合員は組合意識が欠けていた。会議を開こうにも欠席者が多く、とても会議ができるような状態では無かったのだ。
役員が声を大にして呼び掛けてもまったく反応がなく、激化するインフレなど社会情勢から見てもやむを得ないことだったが、組合の会費も満足に集まらなかった。
ついに一時期組織活動を休止するなどの、混迷状態が訪れた。しかし、相互の理解を深めるため役員同志の会合だけは欠かさなかった。そしてこういった苦しい時期が、後の積極的な活動の素地作りとして役立ったことはいうまでもないことだ。
そうしたなか、巷には風俗犯罪が目立つようになった。これは、海外からの引揚者や、大陸や南方からの復員兵の帰国があいついだためだった。東京、大阪などの主要都市には失業者があふれ、家も職もない浮浪者が日増しに増加していった、さらに、敗戦後の荒廃から一般の風潮は退廃的になり始め、道徳観念の混乱や風俗の乱れが健全な社会生活を害し、悪質な犯罪の根本となることが憂慮された。
実際に、これに関係する営業所も増えてきたため、警察当局は、これらの犯罪を取り締まる法律を制定することにした。