【追憶の麻雀】第14回「健全な麻雀を考える」

昭和52年10月10日  麻雀新聞第44号

「インフレ麻雀こそ業界の破滅を招く」

競技麻雀に対するボルテージが高まっている。専門誌を通じての道場、ファンクラブなども、各地にでき、学生連盟設立も活発化している。各種競技会の人気も上々で、ようやく競技麻雀に対する認識、関心が深まり、囲碁・将棋と同等の評価も、真近いと見る人もいる。しかし、その一方で業者数の減少、業界不振があり、一般フアンは2000万ともいわれる割には、麻雀荘に来る客が少ない。さらに、競技会に参加したファンが、大会終了後に必ず口にすることは、「いつもの麻雀と違うし、お金がかかってないからな」である。全国3万軒の麻雀荘で打たれる麻雀は、競技会とは違うルールなのだ。136牌を使うことは同じでも、ルールが違い、レートが違う。囲碁・将棋においては、置き石、駒落ちの違いがあっても、全国どこへ行っても、ルールが違うということはない。そこで今回は、一体どんなルールが最適で、どのぐらいのレートが適当なのかを、考えてみたい。ともすれば、インフレルール、インフレレートに堕ち入りやすい傾向に、ひとつの警鐘になれば、業界繁栄にも繋がるのではないか。

 

麻雀はギャンブルにあらず

まず麻雀が頭のスポーツでありストレス解消、老化防止などの効用を持つ、健康的なゲームであることを、声を大にして言いたい。一部には、ギャンブルとしてしか見ていない人もいるが、それは結果としての勝ち敗けにこだわっているのであって、ゲームのおもしろさを十二分に理解していないものと思われる。

麻雀のゲームとしてのおもしろさや、ギャンブルか否かについは、本紙連載の”麻雀社会学”にくわしくレポートされているので、ここでは深く言及しない。

ただ、ギャンブルに対する社会イメージが変換して来たことだけは確かである。それはレジャーの多様化、生活向上などに伴い、競馬が推理するスポーツとして、国民に定着して来たことにもよる。また麻雀に関しても、麻雀荘の設備改善、客の選択などで、店内も明るく、雰囲気も若い女性従業員などにより、健康的なものに変わりファンも学生から一般サラリーマンを主に老人、女性に至るまでに拡がった。

麻雀ルールもそれに伴い、様々なものが生れ、競技形体自体が違う三人麻雀まで登場した。

そうした風潮のなか、競技麻雀に対する関心を消さないために、日頃麻雀荘で打つ麻雀こそ、大切であって、競技会との間に大きな溝があっていいわけはない。

少なくとも全段審加盟店である限りは、全段審ルールについて熟知し、客同士のトラブルに対して明確な答を用意しておきたい。店の人間が躍先して、インフレルールへ向うことは、間違ってもないことを願う。

先頃話題になった、暴力団による麻雀賭博は、法外なレートによるもので、普通の麻雀荘では、そのようなことはない。

ただ全く何も賭けてない麻雀もまた皆無と言える。4人組セットの客が月末精算で、どの程度のレートでやっているかは、店の経営者には解らない。ただあまり高いレートでやっていそうだったら、当然注意すべきである。

「レートは小遣いの範囲内で」

フリー客が立つ店の場合、少しでも低いレートでやるのが好ましい。そしてルールも競技ルールに一発ウラドラを加味した程度が理想的と言える。サラリーマンの月の小遣いのなかで、たのしめる麻雀でなくては、健全娯楽とは言えない。

人それぞれに、生活条件が違うことから、同じ1万円でも、その価値感は変ってくる。本人の日常生活が壊されない限り、麻雀といわず、競馬、パチンコも賭博とは言えないのではないか。競馬において、推理を働かせ、ささやかな配当を、結果としてたのしむように、麻雀においてもゲームのおもしろさを前面に打ち出すべきだ。

幸い専門誌二誌が、一般に定着し、競技麻雀、タイトル戦などの記事を通じ、技術論が展開されていて、偶然性による勝ち敗けが、実力による勝ち敗けに変りつつある。

ここで二、三インフレルールに対して、その不当性を追求してみよう。

まず高レートによる場合、それだけの生活力があれば、問題がないが、料亭などの接待麻雀と違いどこかに無理が生じる。それに限られた人間しか参加できなくて、麻雀の持つ社交性に不適合と思われる。

ご祝儀麻雀は、所詮弱者を痛めつけるシステムである。裏ドラ、一発、役満、またアリスなどあるが、ツイてない者がそのご祝儀にありつくチャンスはなく、点棒ではそこそこだが、ご祝儀に負けたというケースもでて、麻雀本来のたのしみが半減する。

特に裏ドラご祝儀の場合、上級者ならば問題ないが、中級以下の者がやると、リーチが多くなり、まるでメクリ勝負みたいな展開になる。それではサイコロ賭博と同じで、偶然性にたよりすぎ、競技麻雀の持つ偶然性を排除するという姿勢と相反し、競技会へ出ておもしろくないという印象だけを与えることになる。

「高レートは雀荘離れの原因」

三人麻雀については、その効罪については、まだこれからの問題といえるが、東京で打った経験から言うと、まず勝貝が早い、絵合せゲームという印象で、手の多様性がなく、うまいへたにかかわらず、ツクかツカないかで終ってしまう。また一回に動く点棒が大きすぎ、麻雀をたのしんだという気持より、いくら勝った負けたということに終始しそうだ。

ワレメ、ヤキトリ、ドボンについては、ゲームの進行を早める効果はあるが、役の大きさを競うのでなく、ただ点棒のヤリトリのみが残りそうだ。

さらに東風戦があるが、ゆっくり手役を育ててという気持が薄くなり、とにかく和ろうということから、誰も一回も和らずにゲームが終了というケースもある。また東南戦と同レートでやった場合、倍のレートと考えられる。

いずれにしても、以上のインフレレート、インフレルールは、客の来店回数を減らし、麻雀ばなれを引き起しかねない。いやインフレルール・レートに馴れ親しんだ者はよリギャンブルのスリルを味うため、またついて行けない者は嫌気がさして、麻雀荘から離れているのが現情かも知れない。

さて、それでは麻雀ばなれを防ぎ、競技麻雀に興味をもたせるための、麻雀荘での麻雀のあり方について考えてみたい。

まずルールであるが、全段審競技規定が、今年の3月に改定され統一ルールとして競技会で便用されるのであるから、加盟店もこれを使用するのが妥当で、裏ドラと一発を加えれば、たのしみの要索もある。勿論ご祝儀はなし。他のルールでは、いろんな矛盾を生じやすい。特に完先ルールはトラブル発生が多く、こじつけの解釈で済ませている。麻雀が自分で運命を切り開らいて行くゲームであるならば、完先ルールは、配牌とツモに左右され、運を天にまかせたゲームともいえる。アリアリルールを嫌う人が言う言葉で「大きな手をつくるたのしみがないから」というのが多い。ところが完先ルールの方が、一鳴きが多く、早い巡目でりーチがかかると、そのりーチに対処すべき手段がないのが特徴だ。

フリー客の場合ならば、店のルールに従がって、対局をしてもらえるが、セット客の場合は、そこまで強要できない。ただトラブルが発生した時点で、さりげなく自分の店のルールを説明することは必要であろう。

つぎにレートであるが、一度高レートでやってしまった人間は、なかなか低レートでの麻雀を打たない。また打ったとしても、バカにしてしまう傾向にある。

「望まれる経営者の監視の眼」

一般サラリーマンが、麻雀荘の顧客である現情から、なるべく低レートで数多く遊べるようにすることが、店の利益にもつながる。

経営者は賭博を防止する義務を有するわけだから、例え4人セットの場合でも、インフレレートに対しては、注意すべきであろう。

ただ商売上、上客である場合が多く、その客の生活状況を知る必要がある。

貝体的には、俗に言われる、ピンのイチサン、ピンのイチニイぐらいが、一般サラリーマンが打っているレートと見られる。多少腕に自信があり、生活的な余裕がある人は、リャンピンのニイロクぐらいまでで、それ以上は限られた人が打つぐらいである。

ゲーム代は、ピンのイチニイで一人一時間250円、イチサンで300円というところか。1日4回やって、週に2回、月末精算の時、自分の交際費のなかで処理できるものと思われる。学生街においては、サンとゴが主流で、腕のいい学生は、サラリーマンに交ってピンで打つのが現情と思われる。

学生時代に、健全性の高い麻雀に親しめば、社会入になってからのインフレルールに、拒絶反応を示させることもできる。

いずれにしても、麻雀を囲碁、将棋の位置にまでもって行くためには、間違っても麻雀で負けてサラ金へというようなことを起してはならない。そのためには、経営者の厳しい眼が要求される。

「理想は全国同一レーレとレート」

競技麻雀を浸透させるためには低レート、健全ルールによる麻雀にプラスして、段位制度の確立が必要である。

麻雀の勝ち敗けがツク、ツカないで判断されている現情を、段位制度による実力に転換したい。そのためには、営業所において、月一回ぐらいは、競技大会を開催し、そのトータル成績によって、店から段位を贈呈するようにしたい。

これは、セット客、フリー客に限らず客同志の親睦を深め、店の繁栄にも結びつく。

連合会サイドでは、有段者会を充実させ、段位戦あるいは段審研究会などを開催して、昇段への興味をひき立たせることも必要。

現在プロ協会の設立の動きもあるが、これも業界としては、対岸の火事として眺めるだけでなく、何らかの形でタイアップすべき問題と思われる。

さて、最後に全国統一ルール、統一レートを提唱してこの稿を終わろう。

全段審加盟店においては、全国どこの店でも、使用ルールは、全段審ルールに裏ドラ、一発を加えたもので、レートはピンのイチサンかイチニイである。勿論ご祝議はなく、1回の負け分は誰れでも計算ができるシステム。

麻雀が持つ社交性、推理・判断力・状況分析・決断力・我慢強さなどの特性を伸ばすために、より多くの人と打ちたいというのが、ファンの願いでもある。また家庭麻雀は様々の障害を生むので、そのためには、全国の麻雀荘の協力が必要となる。

現在では、自分のホームグランドの店でしか打てないファンが多く、違った人と打ちたいと思っても、専門誌に紹介されている、道場・ファンクラプの店のドアを、こわごわ叩くのが現状だ。

そのためにも、このシステムが確立されれば、サラリーマンが出張した場合、ちょっとした空き時間を利用して、麻雀をたのしむこともできる。

「何処から来たの」

「九州です」

「どうですか、そちらの麻雀の人気は」

などという会話が持て、一時の友交を深められる。

地元に帰って

「あそこでやったけど勝ったよ。うちの店のメンバーも強いんだなって思った」

と報告することで、ますます麻雀が盛んになる。またこれがキッカケで、店と店との対抗戦も企画しやすい、連合会主催の競技大会もより以上の人気を博すると予想される。

麻雀荘は、ひとつの社交場であり、道場であり、国民の日常生活に潤いをもたらす、憩いの場である。全国の麻雀ファン2000万人のためにも、より健全麻雀をめざしてもらいたい。

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