【追憶の麻雀】第13回「80年の麻雀業界を占う」 | 麻雀新聞

【追憶の麻雀】第13回「80年の麻雀業界を占う」

昭和55年1月10日   第33号

 

「高まる電動化の波 大きい無形の力『事協』」

 

司会    自動卓は今後どれ位伸びると思いますか。

―終局的には30%、いやそれ以上になると思います。しかしそれまでには、まだ相当な年月を必要とするのではないか。といいますのは、第一に、もっと価格が安くなること、第二に、もっと重量が軽いものになることが必要だからです。

―そうですね。今でも普通卓の100円高で利用して頂くとしても、それほど有利なものじゃない。だから、もう少し安くならないと、我も我もとはいきかねる。また重量がもう少し軽くならないと、一番多い木造の二階店舗では、そのまま置くことが困難ですね。これが今後の普及のネソクになると思います。

―要するに自動卓は普及するにつれ特別な卓ではなくなる。従って料金も特別料金というわけにはいかず、結局サービスとなって業者の負担増となることは間違いない。メーカーもこのことを十分認識して、少しでも価格を下げるよう努力しなければ、共倒れになりますね。今まで大変評判の悪かった音の方は、随分改良されていますから、これからは価格と重量ですよ。

司会    次にこれは唯一つの明るい話題(笑)ですが、昨年は支店を設けた店も増えたとのこと、これはほんとうですか(笑)。

―その通りです。一つばかりか、二つも三つも支店を設けた店もありますよ。これは結局、麻雀は一つの店でガッポリ賭けようとする事に無理がある。薄利多売といいまして、沢山なお客様から得た集計で、勝負しなければならない。しかし、それには麻雀業では一つの店を拡げる事はむずかしいから、店舗の数を増やして、それぞれの利益を合算して、希望の利益か得る方が実行しやすいわけです。ですからこの際、近くの安い売物を物色しては店を増やすことに賛成ですね。深夜店が許可になれば、早速役立ちますよ。(笑)

―そういう場合は、近くに多く持つ方がよいわけですね。

―そうです。経営者はあちこち見て廻らねばならないし、サービス、料金などで過当競争になりませんからね。例えば一つの駅の南側に五軒あるとして、もしこの五軒が一人の経営者になれば、これ程強い事はないでしょう。ですから原則として、近くに多く持つことが最良ですね。

―近くの店だと、大家さんがどんな人か。近所にうるさいおやじがいないか(笑)など、ある程度の予備知識がありますから、買う場合にも安全ですよ。

司会    協同組合への動きにいて伺っておきたい。

―二、三の地区で準備に着手しており、なかでも東京は相当具体化しています。しかし、今一歩というところで足踏しているようですが、私はこれがスムースに運ばない訳がちっとも分らない。なぜなら、協同組合にする事ほど、負担が少なくて効果の大きいものはないからです。む承知のように、出資金といっても一軒当たり五千か一万円のことでしょう。それも提供するのでなく、いやなら返して貰える出資ですよ。今どき、それ位の金は一寸食事に出ればすぐ飛んでしまう金ですから、出資金が原因となることはあり得ない。結局、協同組合になっても大差はないだろうからというのが、ほんとうの理由だと思いますね。

司会    私は大きな力があると聞くとあるような気もするし。(笑)

―その効果といいますか、力は無形のものがほとんどで、またその無形の力が大切なのですが。とにかく無形だから数字でこれこれのものとはいえない。しかし、法律に基づいた組合の無形の力というものは大きいですよ。これからいろいろ手を打たなければならない事も多いが、麻雀業界は何億と献金する力もないから、せめて事業協同組合にして、カを持たなければ、組合員の期待に応える事は出来ないと思いますね。司会そうすると、出足は遅いがいずれは皆、協同組合にしなければならないだろう、という事ですか。

―そうです。どこかで一つ出来れば、後はどんどん出来てくるのじゃないですか。最初に設立した地区が一番苦労して悪口もいわれる。(笑)

 

「ローンカード導入を客を逃がす深夜とカケ」

 

司会    それではこの辺で肝心の点に移りまして、一つ、麻雀業界不振の原因は何か。麻釜業界再起の手段はないかーというような事について伺いたい。

―これは難問ですね。

―第一に、家庭麻雀、職場麻雀が増えた事が挙げられますね。客の来店回数が減ったーという事をよく聞きますが、麻雀愛好者が大幅に遊技回数を減らすとはとても考えられない。従って回数が落ちた分だけ家庭や職場でやっていると見るべきでは…。

―麻雀客を家庭や職場でやるように仕向けたのは、料金の値上げではという説もあるが。

―現在の遊技料金が他の物価からみて、そのような結果を招くほど高いものとは思わない。家庭や職場でやっても、結構飲み食いに金はかかるからね。もしそうだとずれば、料金が高過ぎるのではなく、麻雀荘にそれだけの料金をとる価値がないーという事でしょう。

司会    麻雀荘に現在の料金をとるだけの価値がないーというのは、聞き捨てなりませんが。(笑)

―申訳ありません。(笑)しかしですね。遊技料金が100円から200円になった。その間、麻雀荘はどう変ったか。なるほど、店はキレイになった。お茶菓子やお茶も良くなった。しかしそれだけで他は旧態依然でしょう。麻雀客はそんなことより、むしろもっと他の何かを望んでいるのではなかろうか。そしてそれが一向提供されていないのではなかろうかという危惧です。

司会    具体的にはどんなことでしょう。

―例えば、店が大変立派になった、従業員が綺麗になった反面全体が大変固苦しい雰囲気になったとか、よく来る客とたまに来る客がはっきりしたため、よく来る客に対するオベッカな言動が強すぎるとか、いろいろありますね。

―それから、麻雀荘は一定のルールによってやるから価値があったので、現在のように、徹夜でやりたければどうぞ、賭けたければご自由に、といった店が増えると、これじゃ家でやっても、職場でやっても同じことという事にもなりますね。客の大半は麻雀荘でやるのなら、午前さまにはならないからお附合いしようとするのでしょうから、この点も考えなければならない。

司会    なるほど。雀荘でやるのなら、今日中には帰れるからつき合ってもいい。家までいけば、止めないから困るというわけですね。

―ですからやはり、営業時間とレートを常識的な線で厳守する事が、家庭麻雀や職場麻雀への逃避を防ぐ、という事になるのではないでしょうか。

―麻雀業者もカードによる客の支払を受入れたらと思います。ご承知のように現在は何んでもローンやカードの時代ですよ。面白いのは、客は月給日の直後は割に来店せず、お小遣いが乏しくなり姶めてから来る。そして完全に乏しくなると来なくなる、という現象がありますね。ですからカードによる支払を認めれば、お小遣いの乏しい時はカードで支払い、収入の増えたとき支払うことになり丁度平均されるでしょう。カードにすると5%位手数料を取られますが、料金の値上げからみて、大した負担ではありませんよ。

司会    力ードというと、JCBやDCなどのことですね。あれは取扱業者になれますか。

―カード会社も新規の取引先がない時ですから、申込めば大丈夫だと思いますよ。

―お客さんで、何割ぐらいがカードを持っているかなあ。

―相当持っている人が多いと思いますよ。また、そうなれば持っていない人も加入するようになるのでは。

司会    外から見えるオープンの店にしたらどうかなあ。京都には相当こんな店があって、なかなか評判がいいとか。

―オープンにすると欠点もありますが良い点も多いですね。例えばヤクザ等が入らなくなる。喫茶店にいるような気分で堂々とした気分でやれるなどね。

―洒が出せなくなる。(笑)

―それはそれでまた、客を集める事になるかも知れないが、京都ではどうしているか見て来なくっちゃ。(笑)

―深夜営業を厳重に取締る見返りとして、雀荘も昼間は他の商売、もちろん風俗営業以外の商売に使ってもよい事になるといい。現在夕方の5時頃から開店している店は相当に多い。昼間は客が無いしあっても一組くらいじゃ引合わないからですね。ですから昼間を、近くの会社の会議室に貸すとか、お花、手工芸の教習所にするとか、また学習塾に、いや、学習塾じゃ風俗営業と同宿になっていけないかなあ。まあ、とにかく全く空いている時間を遊ばせているのはもったいないし、そういう店は営業時間が短いのだから、深夜の方へ延ばす代わりに、空いた時間を利用する方が順当でしょう。

司会    今年も省エネルギーの問題があろうかと思われますが、どう協力したらよいか。

―麻雀業は一人当りの消耗エネルギーは、大変少い商売ですよ。大体一人当りの面積が少ないから、家庭や旅館、料亭麻雀から比べて大変経済的に出来ている。

―窓の換気でなく、天井から煙を抜くように出来れば、冷房、暖房が無駄なく効くのですが。

司会   最後に、これらの事をふまえて、当局に望むことは、さしずめどんな事ですか。

―それは沢山ある。まず酒類の禁止を緩和すること。深夜専門店を認めること。夜間だけ営業する店の昼間利用を認める事。最高料金の規制をやめ、むしろ最低料金を設けること。

司会    最低料金を設けよという説は初耳ですが。

―最低料金の方を定めている商売は沢山ありますね。安かろう悪かろうではお客のためによくないーというのが原因ですが、麻雀業も、安い料金でやるから深夜も客をとらなければならない。酒もどんどん出さなければならないでしょう。ですから、最低料金の方を決めて、そんな事をしなくても十分引合うようにする。それでも成り立たない店は、もともとどこか無理な処があると考えればいいわけで。

―そうすると、東京ならさしずめ200円以上というわけでずか。

―そんなとこでしょう。

司会    そういう事の善し悪しは別として、それらの実現はなかなか大変な努力が必要でしょうね。

―努力で済めばいくらでも努力するが、要はそういう事を要望する土台です。さしずめ組合を強化すること、また、全国的組織を強化して政治的地盤をつくる事ですね。

司会    いろいろと有難うございました。丁度、時間も参りましたのでこれで終らせて頂きます。

 

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