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新式麻雀タクティクス 第2回
- 2017/3/1
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皆さん、こんにちは。最高位戦日本プロ麻雀協会の原周平です。前回よりこの連載を持たせていただいています。今回もよろしくお願いします。
さて、前回は「麻雀観の変化」ということを主にご紹介しました。今回は、より具体的な「手作り」について、昔と今とでどう変わったかを扱いたいと思います。2つの牌姿を用意しましたので、順にご覧下さい。
◎好牌先打vs.先制至上主義
牌姿A
東一局西家ドラ 7巡目 北は2枚切れ
まず、牌姿Aですが、赤ドラの一向聴で七を切るか北を切るかという問題です。以前はこういう牌姿から、七切りを推奨する意見が多かったように思います。「好牌先打」ですね。後々危険になる牌はなるべく早く切り、手牌をスリムにして、立直を受けたとき押し返しやすくしておくという考え方です。両面対子を先切りするメリットは他にもあり、ピンフが確定すること、聴牌して立直をかけたときに七が河に早ければ早いほど九が出易くなるということが挙げられます。
しかし、今の主流を追うと、これは北切りという意見が多く、そして基本的にはその方が有効な打ち方ではないかと思われます。七を切らず、4種16枚の受け入れを6種20枚の25%増に構えた場合、先制聴牌できる可能性が高くなります。まずこれが最大のメリット。またこの牌姿でいえばを引いたときの鳴きや、を引いたときの塔子振り替えがありますが、形を固定しないことで変化を残せることも、牌姿によっては大きなメリットとなります。
それに対して、七を引っ張ったがゆえに相手の先制聴牌に放縦になったり、押し引きを迫られて七を抱えてオリたりするのが裏目といえますが、前者の可能性は大抵10%もなく、後者も七一枚でオリ有利になるというケースは多くありません。これは昨今よくいわれるようになったことですが、麻雀は先制聴牌できるかどうかに大きな分岐点があり、被先制時に危険牌が1枚安全牌になったとしても、そう結果は変わらないのです。
そして、麻雀は守ったとしてもある程度失点するゲーム。オリた場合の局収支は平均で-1300点といわれていて、失点を避ける方法は自分が和了ることだけです。さらにいえば現代の一般的なルールであるトップが大きい祝儀有りは、放縦が増えることよりも和了りを逃すことの方が何倍も罪で、出和了りよりもツモ和了りの方が価値が高い。ならばリスク上等、側聴も上等です。上手く先切りしてある両面に比べれば少し和了率は下がっても、ツモ和了率はむしろ上がるでしょう。
以上のことから、まずはがむしゃらに先制聴牌を目指して強気に構えるのが、勝つための基本姿勢となりそうです。ただし、「やが1枚ずつ切れたから切る」「高目を釣り出すために先切りする」など、好牌先打との間でバランスを取る選択は今も有力です。最終的には両方を良いとこ取りできるのがベストなのでしょうが、迷った場合は、基本攻めが主流と思っておいていいでしょう。
◎遊び手vs.手なり
牌姿B
東一局西家ドラ 1巡目
次に、牌姿Bです。こちらは悪い配牌を貰ったときに方針をどうするかという問題です。
選択肢が多いので、もちろん打ち手によって様々だと思いますが、傾向として、以前であれば、切りでオリ気味にチャンタ・国士・ホンイツ狙い。切りで少し迷彩を効かせながらチャンタ・三色狙い。といった手役に寄せた面前進行が主流だったのではないかと思います。守備を固めて、仕上がったときは高く。優れたバランスの取り方といえるでしょう。
しかし、今風は少し違います。はほとんどいなくて、を選ぶ人はいそうですが、主流ではないと思うのです。切りで手なり。これが一番多いのではないでしょうか。あとは方針がいずれでも、チャンタや役牌で遠い鳴きを考慮する人がかなりいるでしょう。の構想としては、とりあえず中に寄せた普通の進行をしておいて、ドラか赤を使ったピンフ形になればベスト、役牌が重なった場合も和了しやすくなる、といったところでしょうか。あくまで先制聴牌の可能性を極力残して、愚形になる手役狙いよりも手なりでシャンテン数を上げていくという意識を強く持ち、先制できたら安手でも良し、あわよくば打点を赤や一発や裏ドラで補おうというのが、速度を重視した現代風のバランス感覚といえそうです。
以上、A、B、2つの牌姿から見えてくるのは、「優先事項の変化」だと考えます。昔のセオリーが古くて間違っているなどということはありません。ただ、ルールの変化や戦術研究の成果を受けてバランスが変わった結果、優先すべきことが変わってきていると思うのです。手作りには構想が欠かせず、構想には打ち手それぞれのバランス、すなわちどこに最優先を置くかという基準が欠かせません。現代戦術においてそれは、多くの場合「速度」と「攻め」にあるのです。