【追憶の麻雀】第44回「麻雀の心理学」+α | 麻雀新聞

【追憶の麻雀】第44回「麻雀の心理学」+α

追憶の麻雀

昭和61年3月10日 第128号

 

麻雀の心理学

 

雀士Tは、マージャンクラブに行くと、まずビールを注文する。たてつけ3杯ならぬ3本ほどを一気に空けて、夕刻から始まるゲームを待つ。スキ腹をほどよく刺戟して、当然ながら陶然と、卓に向うの図である。気がつくと?すでに南の3局、ヤキトリ寸前だ……などということがよくある。だんだん調子を出していくが、要するにスロースターターなわけである。

 

一方のC。彼は立ち下りから積極的である。役ハイが出れば、まずイチナキである。

細かいジャブの積み重ね、といえば聞こえはいいが、パンチ力がないから相手に恐怖感を与えない。荒れ場になるとすぐ捕ってしまう。しかし、小場の戦いとなったら、そのテクニックを存分に発揮する。要するに軽快な速攻派、先行逃げ切り型なわけである。

 

―さて、このTとC、マージャンにはどちらのタイプが得なのだろうか。

答は、どちらともいえぬ。

 

なあんだ、ということになるが、むしろT、Cとも固定的ワンパターンで行くことの方に問題がある、といえよう。しいて結論づければ、Tは大会向きマージャン、Cは仲間うちマージャン(会社麻雀、リーチ麻雀、その他)といえよう。

大会マージャン(競技麻雀)は何回戦かの総合得点を争うのが普通。一発・ウラドラもないから、ある程度のパンチカがないと入賞は難しい。つまり、手なりマージャンだけでなく、配パイを目いっぱい育てる構想力、忍耐力が必要である。もっとも構想が大き過ぎて、相手に早アガリされるだけでも仕様がないが。

対して仲間うちマージャンは、半荘ごとの勝負。いうなれば100点極差でも勝ちは勝ち。半荘ずつ確実にモノにしていく心がけが必要となる。半荘4回で200点とるよりも、130点でもよいからとにかく4回全てにトップをとることにかけなければならない理屈である。

 

例えばマラソンでの4㌔マラソンかフルマラソン(42・195キロ)か、また、ボクシングの10ラウンド戦から15ラウンド戦かのペース配分の違いといえよう。

ところでペース配分とは、いったい何だろう。

これは、せんじつめれば、緊張と行動の能率関係ということである。

この関係について、心理学には、古典的な法則―ヤーキース・ドットソンの法則―というのがある。

 

リキミはいけない

ヤーキース・ドットソンの法則

 

つまり、ある行動を実行するためには、それに最も適した緊張状態が存在するというものである。

力を出す作業を例にとれば、ふだんの緊張状態よりも、もっと緊張の大きい時の方が行動の能率がよい。キン肉マンの「火事場のクソ力」というやつである。

対して、正確さや微妙なコントロールを必要とする行動では、少し緊張レベルの低い状態の方が有利である。マージャンは、後者にあたるといえよう。

 

このような行動の能率と緊張の関係は、逆U字力ーブといわれている。緊張は高すぎても低すぎても、行動の能率は落ちこんでしまうのである。

だから、リラックスするとダメになってしまうことがある。緊張の波に乗り切れないで、しまりのないマージャンをやってしまうのである、冒頭にあげた雀士Tがその興型。リラックスすることは大切であるが、酒に溺れて?マージャンに必要な興奮と緊張を獲得できないのである。

 

つまり「緊張不足」あるいは「緊張の波のくるのが遅い人」―スロースターターとはいい得て妙である。雀士Tは、リラックスすることを考えるよりも、緊張レベルを上げるように工夫することが大切である。

今日は絶対にトップを何回とるぞ、ラスはくわないぞ、ビールは1本しかのまないぞ、リーチ負けはしない(従って勝算のないリーチはかけない)ぞ……要するに「やるゾ!」の雰囲気でぶつかることが必要である。

ただし、力み過ぎがいけないのは「ドットソンの法則」にある通りである。

 

雀士Cの場合は、この力み過ぎに注意しなければならない。せかせかアガるだけがマージャンではない。一般的にいって忍耐が必要。

これは「雀品」ともからんでくる。会社麻雀などで、完先ルールが好まれるのは、この「雀品」あるいはその裏返しといえなくもない、「抜けがけは許さんゾ」の心理による

ものであろう。

3割バッターよりホームランバッターの方が恐がられるものである。もっとも、3割+ホームラン=マージャンの王選手=は、なかなかいるものではないが…・。(続く)

 

『陸軍』の入試に麻雀が出た話

 

こういうことがあった。

 

昨年夏、東京・麻布麻雀業組合の「創立20周年記念式典」でのこと。

 

招待客の一人として招かれた、さる警察署長さんの挨拶が絶品。ユーモアたっぷりに

「昔のことです。私は広島の陸軍幼年学校を受験したんです。その時、国語の試験に『麻雀』が出たんです。カナをふるわけですが、サァ、何と読んだらいいか分からない。

いままで見たことも聞いたこともないんですからネ。仕方がないから、「アサスズメ」と字の通りにカナをふったんです。どうも少しヘンだナ、という予感はしたんですけど……。(笑)

何しろ必死の受験だったですから、未だに忘れられません」

 

―ちなみに当時(戦前)の陸軍高級将校といえは、超工リート集団。飛ぶ鳥も落すほどの勢いであった。幼年学校はその第一の登龍門。次いで士官学校、陸軍大学と進み、晴れて高級将校の卵になる。その陸軍さんの入学試験に出るほど、わが「マージャン」は”高級な遊び”であった。

 

さて、いま春3月。折から入試の季節。どこかこういうイキな問題を出すところないかしら!?やっぱり(いずこも)コチコチかな?

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