麻雀新聞第273号 1998年(平成10年)4月10日
激変の時代 マージャン業は生き残れるか?【2】
「情報」は難しい言葉じゃない
まず「お客様を知ること」
来店客の観察から始めよう
すべきことをしない店は衰滅する
利益上昇中の店から学べ
人一倍凝り性の私は新しいことを始めると、ほかのことを放り出してしまう。サラリーマン時代に熱中したマージャンも、1週間に3H、雀荘から出勤することもあったほどだ。
勝つも負けるも自分の責任。同じゲーム展開は30年問に一度もなかったし、たった1つのミスの有無が1日の結果を左右する。多くのテレビゲームや携帯ゲームのソフトも制作してきたが、これだけ奥の深いゲームは他に類を見ない。相手の性格がよく分かるためか、マージャンを通じて知り合った時間は長続きする。
マージャンは、いつでもどこでも手軽にできて、便利すぎるほとだ。それにひきかえ、ゴルフは1日がかりで、始めたら仕事を休むようになりそうな自分が怖くて、できない。
囲碁や将棋も奥が深いが、用具業界の低迷ぶりを見ると、マージャンの比ではない。
子供たちを育ててきて、30歳以下の若者が、私たちの若い頃ほどマージャンをしない理由がよく分かる。あまりにもやることが多すぎるし、競争社会の中で本当の仲間が少ない。
人間関係がぎすぎすして、多くの人が社会不安を感じる現代は、マージャン業界が新規顧客層の開拓とか、昔の客を取り戻すなどと考えても、難しいと思う。それより、残った客をいかに獲得し、売上効率を上げるかだ。
多くの業種の経営内容を見てきたが、どんな商売でも、入る金より出る金に厳しくしたところだけが生き残っている。
今でも真剣に経営を考えて利益を伸ばしているマージャン店があるのに、それを見ようとも学ぼうともしないなら、業種転換してもうまくいかないに違いない。自分なりの勉強を怠ったら、これからの社会にはついていけない。
現在は『情報社会』だといわれているが、これは決して難しい言葉ではない。「お客様をよく知って、それなりの商品やサービスを用意する」ということだ。客の立場でマージャン店に行くと、入った瞬間にその店の良否が分かる。良い店には、客と店員に一体感がある。店員は客の性格を知って、その場の雰囲気を察して柔軟に対応している。
次に紹介するのは、20卓以上の店の実例だが、その内容から、店舗規模の大小ににかかわらず、その考え方を学び取るべきだろう。
【店長は品目別・卓別の売上日計・週計・月計をつけて季節・気候・曜日分析をする】
- 当たり前のことだが、適性在庫となり、捨てる物がなくなった。
- 回転の良い商品のまとめ買いで、仕入れコストが下がった。良い商品の傾向も分かった。
- みかじめ料や花代、おしぼり代の矛盾に敏感になり、改善した
- 店員の良否が分かり、店員教育の方法が改善された。サービスマニュアルもできた。
【店員に5卓ずつを担当させ、売上を競わせる。貢献度に応じて給料に2~3倍の差がつく】
- 店員は客の来店サイクルや性格、好みの卓、嗜好、仲間、職業を知るようになる。
- より利益率の高い飲食物の勧めだけでなく、客ごとに席換え・トイレ・役満の時などの様子を判断し、勧めるタイミングも勉強する。
- 客の選別をするようになるだけでなく、対戦者集めにまで協力するようになる。
――これは、店がどんな客を対象に、どんな売上を上げているかという分析で、当たり前のことをしているだけだ。
すべきことをしない店が無くなっていくのは、昔から変わらない、バブル時代と違うのは、今はどんぶり勘定でやっていけるほど世の中が甘くないことだ。まず現状を分析することから始めれば、次に何を改善すべきかが自ずと分かる。
玩具店・文具店・寿司店・パソコン店と、いろいろな業種の経営コンサルティングを通して理解したことだが、その基本が分かっていて、すべきことをしている人は儲かっているようだ。
今日の来店客のことをどれだけ知っているか?――と自分に問いかけることから始めて、ゲーム中の客の様子をよく観察してみよう。できることからとりあえずやるしかない。
(つづく)