昭和61年8月10日 第133号
麻雀の心理学
地獄待ちは得か?
マージャンは「確率と心理のゲーム」であるといわれる。
確率とはすなわち”アガリやすさ”であり、心理とはすなわち”相手のウラをかく“ことであろう。
多面待ちであればあるほどアガリやすい。両面待ちよりも三面待ち、三面待ちよりも四面、五面。これは理の当然である。科学である。確率の高さである。
ところがここに”地獄待ち“という戦法がある。単キ、それもラスハイの出アガリに賭ける。たまにはツモることもあるかも知れないが、アガるとすれば出アガリの方が圧倒的に?多いだろう。
これはつまり、相手の”まさか……“という気持のウラを行く。意表をつく。当りパイはただそのーパイしかないのであるから、確率の面から見れば、こんな率の悪いことはない。多面待ちに反する1点狙い。パイ山に眠っていればオシマイ。非科学この上ない。
この非科学が、時に優秀な戦法になる。合理の確率に対し、不合理がまかり通るところにも、マージャンの奥の深さがうかがわれる。もっとも、心理学も科学の一分野であるから、大きくいえば、人の心理のウラを読むのも科学といえないことはない。
地獄待ちには意外なメリットもある。
つまり、ヤミテンでいる限り、待ちはいくらでも変えられるということである。また字パイの場合は、安全パイにもなりやすい。
ただし、名人級になればなるほど、この安全パイ心理を逆用し、ワンチャンスにかけるのがうまい。常識的なマージャンでは、テンパイは早いかも知れないが、待ちが見抜かれやすいからだ。
意表をつく地獄待ちで打ち取った時の気分は、爽快である。しかしながら、戦法の多彩さを図り、敵に心理的圧迫を加える意味で使う分にはよいが、乱用は慎しむべきもののようだ。
佐藤孝平第10期最高位のいわく「敵をだますのはいいんですがネ、ひっかけマージャンでは長続きしませんよ」まさに名一百と言えよう。