麻雀新聞第79号 昭和58年11月10日
トラブル解答集〔完〕
(14)テンパイ形をめぐって起こるトラブルと
①形式テンパイとは(その1)
東家A君は流局間際、ノーテンを怖れて123456m345p5689sの手牌から4sをチーして9s打の8sタンキのテンパイにして流局となった。ところが、西家B君が「イーハンもないんじゃ、テンパイとは認められないよ」とクレームをつけました。
【こたえ】
全段冨ルールでは形式テンパイを認めています。手牌には役がなくても、ハイテイ放銃、ハイテイツモというイーハン役があるからです。東家A君の手牌も、形式テンパイとして十分認められます。
②形式テンパイ(その2)
南家A君の手牌は123m12p12356s北北白のイーシャンテン。3pは東家B君がポンしており、しかも残り一枚は場に捨てられてカラテンです。しかし、このままではノーテンになるので、7sをチーして白打ち、ペン3pテンパイした。ノーテン罰符はもらえるでしょうか。
【こたえ】
形式テンパイは手牌がテンパイの形になっていれはいいのです。実際にアガリ牌の3pは1枚もなく、アガることは不可能なわけですが、手牌がテンパイの形を整えていればよく、もちろんノーテン罰符をもらえます。
同様に、他家のポンした中のタンキ待ちでもいいのです。しかし、完先ルールでは、カラテンはテンパイとは認めないこともあるようです。
③形式テンパイとは(その3)
南家A君は中をポンして3332pのテンパイだったのですか、ハイテイで四枚目の中を引いてきました。ところが、西家B君が、どうも国士無双をテンパイしている様子で、しょうがなく2pを捨てて中タンキとしたのですが……
【こたえ】
このケースは前問②の他家のポンした中のタンキ待ちとは違って、形式テンパイとは認められません。
ポン・チー・カンをして、さらしていても、手牌の一部には変りありません。したがって、手牌に組み入れた場合、中333p中中中となって同一牌の4枚を三枚と一枚に分けてコーツ(刻子)とタンキだと言っても、他家や第三者からみれば、これはあくまでも同一牌が四枚あるだけで詭弁と言わざるを得ません。同様に234p678m2347777sの手牌で777sと7sに分けてアンコとタンキ待ち、又は77sと77sに分けてシャンポン待ちと言っても認められません。
④完先ルールのテンパイ形(その1)
完先ルールで東家A君は、流局寸前123456p45m67s白白南のイーシャンテンから5sをチーしてテンパイさせた。ところが、他の三人はこの形はテンパイとして認めないと主張してきたが……
【こたえ】
完先ルールでは、「役の確定」を第一義としているので手牌にイーハン以上の役が確定していることが条件です。したがって、ハイテイ放銃やハイテイツモのイーハンは認められません。ただし、メンゼンの場合は役がなくてもテンパイを認めることが多いようです。
⑤完先ルールのテンパイ形(その2)
完先ルールで、北家A君がメンゼンで456888m22567p23sのテンパイをして、ノーテン罰符の請求をしたところ、東家B君は「この手牌、ヤミテンでは1sが出たらアガれないから、役が確定しているとはいえない。だからノーテンだ」とクレームをつけるのですが……
【こたえ】
たしかに、役の確定を第一条件にした場合、B君の言うことも一理ありますね。しかし、メンゼンテンパイの場合は、メンツモイーハン役があるので、テンパイと認めています。
上図の手牌をノーテンとした場合222p777m6667788sのテンパイも9sが出てアガれないからノーテンになってしまいます。タンヤオで三暗刻でき上っている手がノーテンになるのでは麻雀になりません。
完先ルールの発生は、ファン(翻)牌の中ヅケや後ヅケを排除し、クイタンなどの安アガリを制限するために作られたルールですね。制限事項が多くなれはなるほど、トラブルも多くなるわけです。どうしても完先ルールでなければという人は、ファン牌の中ヅケ、後ヅケ禁止とクイタン禁止の二点だけに規制をしぼってゲームをなさった方がよいかと思います。あれもダメ、これもダメでは麻雀も楽しくありません。
⑥完先ルールのテンパイ形(その3)
南家A君123m34567899p發發の手牌をメンゼンでテンパイ一気通貫への手変わりもあるのでヤミテンでいたところ、すぐに發が出たので思わず「ロン」と言ってしまったのですが、アガれるでしょうか。
【こたえ】
完全に手役が確保されておらず、發が出て初めてイーハン役が確定するので、完先ルールではアガれないとしているようですが、メンゼンテンパイの場合は、メンゼンツモのイーハン役があるのだから、アガれるとした方がトラブルを少なくするでしょう。
(15)クチ三味線や偽装行為によって起こるトラブルとは
①クチ三味線によるトラブル(その1)
西家A君は、捨て牌から明らかにピンズの一色手。上家B君の手牌は34556m3455p34577sで5pを切れば三色でき上りの手。切るか切るまいか迷っていると、A君が「ピンズ切るなら今のうちだよ」とささやいた。それにつられてB君が5pを切ると「ロン、マンガン」と言ってA君は得意顔で手を開いた。「今のうちだと言うから捨てたんで、君は汚いぞ!」とB君は怒ったのですが………
【こたえ】
クチ三味線の中でも、直接勝負にかかわる悪質なものです。しかし、アガリの手続上の違反ではないので罰則を与えるのは無理のようです。アガった本人が悪かったと反省して無勝負とするなら、それがよいでしょう。アガった本人に反省がなければ、道義上の制裁が必要で、以後皆さんのお店やグループには入れないようにしましょう。
②クチ三味線によるトラブル(その2)
終局間際、西家A君は「やあ、まいったなあ、こんな牌つかんじゃった。やめよう」とつぶやいた。それを聞いた北家B君は、てっきりA君がオリたものと思って6mを切ると「ロン、マンガン」と言って手牌を倒しました。怒ったB君が「君はやめたと言ったじゃないか」と声を荒げると、A君はすました顔で「やめたと言ったよ。オリるのやめたということさ」と言うのです。
【こたえ】
このケースは前間①より智能犯といえます。それだけ、より悪質な口三味線ではありますが、ルール上の罰則を科するのは困難です。前間と同じく本人の反省を待つか、道義上の制裁しかありません。
③口三味線によるトラブル(その3)
東家A君がリーチをかけて「安いからドンドンこいよ」と言うので、南家B君、それにつられて強気に5mを捨てるとA君が「ロン、マンガン」と言ってアガってしまいました。B君は怒って「安いと言ったから捨てたのに、マンガンだなんて詐欺だよ」とA君を非難すると、A君は、「なに詐欺だと、安いものを安いと言ってなぜ悪い。ハネマンより安いじゃないか」と居直ります。
【こたえ】
やはり、道義上の制裁しか方法はありません。クチ三味線を行なう方からすれば、ひっかかるやつが悪いので、こっちもひっかかって怒る人の顔が見たいのさ、などと放言する者もいますが悪質な口三味線は雰囲気をこわしたり、人間関係を嫌悪なものにするので、お互いにやめるよう注意しましょう。
④偽装行為によるトラブル(その1)
南家A君は12巡目、長考後1mを捨てた。それまでのA君の捨て牌にはワンズは一枚も捨てられていない。西家B君はこれを見て、ワンズは危険と思い6pを切ったところ、A君が「ロン」と手牌を倒すとワンズは678m三枚だけで6pはメンタンピン三色の高目だったのです。ブリ込んだB君としては何か割り切れない気持だったのですが………
【こたえ】
クチ三味線ほど悪質ではないにしても、フリ込んだB君とすれはやはりすっきりした気持にはなれないでしょう。アガったA君にすれはフェイント・モーションという高等戦術の勝利で、してやったりという気持かも知れません。しかし、長考はゲームのスムーズな進行の妨げとなります。はっきりした規定はありませんが、模打は5秒内に行なうのが正しいマナーといえます。その意味でA君には警告を与え、二度三度と繰り返すなら、道義上の制裁が必要となって来るでしょう。
⑤偽装行為によるトラブル(その2)
東家A君が4pを捨てると、南家B君がピクリとフーロの動作を起した。しかし、チーをするわけでもなくツモ切りしたので、下家のC君はB君はまだテンパイしていないと思いA君の現物牌6sを捨てたところ、B君からロンがかかってマンガンの放銃となってしまった。放銃したC君としては文句のひとつも言いたいところですが………
【こたえ】
ルール上の罰則はありませんが、B君の牌品は最低といえます。しかも、一種のトリックプレイで人を欺くという行為を平気でやるB君の人間としての価値がさがることは間違いありません。人によっては、こうした行為を野放しにすると、お店やグループの和やかな、楽しい雰囲気をこわすことになるから、以後いっしょに麻雀をやらない様にすべきでしょう。