新式麻雀タクティクス 第19回 | 麻雀新聞

新式麻雀タクティクス 第19回

若手麻雀プロが贈る麻雀の新潮流!
数あるイマドキの戦術がみるみるよくわかる連載第19回

 皆さん、こんにちは。最高位戦日本プロ麻雀協会の原周平です。最高位戦Aリーグがついに開幕し、今期もまた、私達競技者にとって最も負けられない対局が始まっていきます。対局会場をご覧になったことのある方はお分かりだと思いますが、誰もが日々の生活や立場に関係なく、目の前の麻雀に懸命になるあの空間というのは、なかなかにかけがえのない、魅力的なものだと思います。より多くの人に麻雀という世界の魅力を伝えられるように、私も力を尽くしたいと思います。

 さて、今回のテーマですが、またも「鳴き」についてです。前回、王道のバランスを崩し、より積極的に鳴く、参加力重視の鳴きについて扱いましたが、今回は、アガリに近づくための小技で、シャンテンの変わらない鳴きについてお話したいと思います。

 麻雀はアガリを目指すゲームですから、当然そのために手牌のシャンテン数を落とすというのが1つの目標になってきます。しかし、直接シャンテンが進む受け入れは誰もが見落とさずに手を伸ばすところで、そこしか見えていないというのでは、周りに一歩先んじることはできません。そこで、一歩とは言わずとも半歩前進する鳴きという技術が役に立ちます。
 今よりも鳴きに対して慎重な意見が多かった頃は、シャンテンの変わらない鳴きは悪手の1つとして避けられてきたと思います。しかし、最近の細かな戦術研究では、ただツモに任せて手が進むのを待っているだけでなく、手にとって明確にメリットがある鳴きなら、たとえシャンテンが変わらなくても有効であるとする議論が盛んになっています。具体的には、牌図を用意したので、順にご覧ください。

◎愚形×愚形は雀頭をポン

 牌図Aは、親でドラ1の1シャンテンですが、愚形2つと苦しい受けです。このままではテンパイまで確率的に平均16巡ほどかかるため、3巡目とはいえなかなかアガリは厳しい状況です。しかし、ここで雀頭の白をポンすると、頭は無くなりますが、受け入れが6種に広がって鳴きも可能になるため、テンパイまで平均6巡ほどと戦える速度になります。面前のまま良形変化していくこともありますが、やはりこの手はほぼ愚形テンパイになることが決まっていて、しかも鳴いてもそれほど打点が下がらない、喰い下がり役のない手牌です。
 ならば大幅な速度上昇が見込めるこの鳴きは、十分に有効でしょう。アガリトップなど特にアガリが欲しい場面でよく使える手ですが、それ以外の局面でも実は見落とされがちなだけで王道の鳴きだと思われます。

◎タンヤオ移行は多少強引にでも

 牌図Bは、子でドラ赤の2シャンテン、このまま面前で進めると愚形を2つ解消しなくてはならず、やや苦しいという手ですが、この手牌からでも1種類だけ鳴ける牌があります。そう、6筒です。ここから6筒を鳴いて北を切れば、1巡ツモは放棄しますがタンヤオがつき、ポン・チー自在の足を手にいれます。タンヤオは使える牌の種類が多く、さらには役に安定感があり、愚形を鳴きで解消できれば、とてもまとまりやすい手組みになっていきます。
 また、ここに引いたら少し留めたいのが、7筒・8筒になります。面前のメンツ手にはもう不要ですが、タンヤオ移行を見据えると、この1枚があるだけで、6萬・2索・8索といったところからも鳴けるようになるのがお分かりだと思います。このまま面前で6萬・2索・8索を引こうと考えるのは、残念ながら厳しいと思います。6筒だけは鳴こう、7筒・8筒を引いたらとっておこうと決めておくのが抜け目のない打ち手と言えるでしょう。

 最後に、牌図Cは私の実戦符ですが、私はここから8萬をチーして打1筒、7筒をチーして打4索とテンパイし、そのままタンヤオドラ3をツモアガリました。これも基本は4筒・7筒から鳴いていくのが安全ですが、巡目と5萬・8萬の2度受け解消、上家がピンズの真ん中を切っていることなど考慮した結果、鳴いていく方がアガリに近づくと判断してのものでした。一時的にメンツ崩しのフリテンになることを恐れなければ、こういった鳴きも十分に有効になってきます。思考も手牌も柔軟に、アガリに貪欲に前進するには、シャンテンの変わらない鳴きという手段もあることを、頭の片隅に入れておく必要があるでしょう。
 いかがでしょうか。鳴ける手牌と鳴けない手牌、どちらが速いかといえば圧倒的に前者です。そこに愚形解消、2度受け解消、損失打点が小さいといった条件が重なれば、ツモ1回の放棄や、ときに出来メンツを崩すことさえ、見合うものとなるわけです。
 今回に限らず、鳴きは常に、メリット・デメリットの比較です。双方を正確に把握し、対局に臨む前に検証して定石を固めておかなくては、実戦で声が出せません。
 だからこそ、そんな緻密な準備が功を奏したときには、嬉しくて麻雀がとても楽しくなります。
 1つでも2つでも普段やらない鳴きを採用して、ぜひ実戦で試していただけると幸いです。

AUTHOR:原 周平(23歳)
PROFILE:最高位戦日本プロ麻雀協会C1リーグ所属。
早稲田麻雀部元部長。
大学対抗麻雀駅伝に早稲田のアンカーで出場し優勝。
天鳳九段(ID:焚き火)。
雀風は数多の戦術からいいとこ取りの門前攻撃型。

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