麻雀店経営サポート 最低賃金引き上げに向けた 中小企業・小規模事業者支援事業 「業務改善助成金」 風営法業者でも支給可能性あり 助成金の内容と申請方法を解説! | 麻雀新聞

麻雀店経営サポート 最低賃金引き上げに向けた 中小企業・小規模事業者支援事業 「業務改善助成金」 風営法業者でも支給可能性あり 助成金の内容と申請方法を解説!

■風営法と助成金

 

助成金とは、国や地方公共団体・民間の団体等が事業や団体の活動等を支援するために示唆などの手続きを経て支給されるお金のことです。

なかでも厚生労働省の助成金はコロナの支援金や協力金と異なり要件が厳しいことで有名です。その中でも頭を悩ますのは、風営法業者が支給対象者になるのか否かの点です。

今回の原稿を作成するに当たり、各労働局に問い合わせをしましたが、「デリヘルやキャバクラは支給申請対象外だが、麻雀店は申請をした上で店の業務形態を総合的に判断した上で決定する」旨の回答を得ました。

ですから、フワッとした回答にはなりますが、申請自体は可能であるとの解釈でこの原稿を作成しました。

なかには、「手引き書を解釈してください」という回答の労働局の担当者もいましたが、最初からダメとあきらめるのではなく、チャレンジしてみるのも十分ありだと思います。

■支給対象となる

事業所・事業者

以下の3要件を満たしている必要があります。これらを満たしていないと支給を受けることはできません。

【雇用保険適用事業所の事業主であること】

労働保険料を納付している事業者でなければ対象となりません。なかには、労働保険料を支払わないでも受給できると考えている事業者もおりますが、絶対に無理です。

【支給のための審査に協力すること】

5年間の書類保存義務があります。よっぽどおかしい申請書を作成しない限り調査はありません。

【申請期間内に申請を行うこと】

これが結構大きいです。社会保険料は、遅延支払いをしても任意継続保険以外は問題にはなりません。しかしながら、助成金は1日でも申請が遅れると支給は絶対にされません。これは本当です。時間厳守です。

■受給できない事業主 

さまざまな要件がありますが、麻雀店に関係してくるのは5番目です。この解釈が管轄により異なるので、申請する際に注意が必要です。相談をして労働局の対応待ちになると思います。ほとんどの場合、「とりあえず提出してください」と言われるので、出してから進めることになります。

◉過去に雇用関係助成金を申請し、不正受給による不支給決定または支給決定 の取り消しを受けた場合

◉過去に申請した雇用関係助成金について、申請事業主の役員等に他の事業主の役員等として不正受給に関与した役員等がいる場合

◉支給申請日の属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主 

◉支給申請日の前日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、労働関係法令の違反があった事業主 

◉性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれら営業の一部を受託する営業を行う事業主。ただし、これらの営業を行っていても、接待業務等に従事しない労働者(事務、清掃、送迎運転、調理など)の雇入れに係る助成金については、受給が認められる場合があります。

◉事業主または事業主の役員等が、暴力団と関わりのある場合 

◉事業主または事業主の役員等が、破壊活動防止法第4条に規定する暴力主義的破壊活動を行った、または行う恐れのある団体に属している場合 

◉支給申請日または支給決定日の時点で倒産している事業主 

◉管轄労働局長が審査に必要な事項について確認を行う際に協力しない事業主

◉支給申請書等に事実と異なる記載または証明を行った事業主

このように10項目ありますが、ほとんどの場合は当てはまらないと思います。

ただ、業務の特殊性から5番目をクリアできるかがキーポイントになります。実地調査が行われるかは何とも言えませんが、細かい業務内容は聞かれます。

■助成金の

一般的な流れ

助成金の大きな流れとしては以下のとおりです。

①計画の策定及び提出

助成金は、事前計画を作成し提出する必要があります。事前計画を提出しないでいきなり支給申請できるものはほとんどありません。結構忘れがちなのが事前計画の提出です。

②計画の実行

計画の実行をしなければ助成金は受けられません。事前計画に記載の活動をしなければなりません。他の活動をする際には変更届を出さなければなりません。変更届を出さずに活動をしてしまうと事前計画と異なる活動をしたと認定されてしまうため、支給申請時に支給対象外となってしまいます。

③支給申請

支給申請は、活動の終わった日の翌日から2ヶ月以内にしなければなりません。この日程は変更できません。変更できないため遅れることは絶対不可です。

ちなみに、締切日の消印有効ですが、締切日必着の方が安全です。労働局に到着した日に到着印を書類に押すのですが、その押印を基準に遅着か否かを判断することもあるそうなので、出来る限り早めに提出しましょう。

■業務改善助成金

業務改善助成金は、生産性向上に資する設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行うとともに、事業場内最低賃金を一定額(各コースに定める金額)以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成するものです。

事業内の賃上げを助成金の活用をしながら行うものです。昨今の値上がりや物価高に給与が追い付いていないのを解消するために導入された助成金です。活用している事業所も増えています。

【条件】

事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であることが最低条件です。地域の最低賃金よりも事業所内最低賃金の方が遥かに高いと対象とすることはできません。賃金の高い事業所を助成金で助ける必要はないからです。

【対象経費】

助成対象事業場における、生産性向上に資する設備投資等が助成の対象となります。

◉機器や器具を導入することにより時間短縮を物理的に行い生産性の向上をさせる場合

◉経営コンサルタントによる生産効率の向上指導

このようなものが対象となります。作業効率を上げて生産性を上げる結果、従業員の給与アップに繋げるための助成金なので、上記の取り組みを対象とします。両方を組み合わせても構いません。

【助成額】

助成額は表①を参照。最低賃金の引上げ金額と人数により金額が異なります。気を付けなければならないのは、一度上げた賃金は下げられない点です。助成金が支給されたら下げてしまえばいいと考える方もおられますが、調査でバレたら不正受給扱いにされてしまう可能でいがあります。

なので、この助成金は、受給した後にも出費が続くことを念頭に置かなければなりません。

【助成率】

申請を行う事業場の引き上げ前の事業場内最低賃金によって、助成率が変わります。

賃金を上げるのにかかった経費に助成率を掛けて出た金額と表①の上限額の金額の低い方の金額が支払われます。

計算例は以下のとおりです。

⑴某麻雀店の事業場内最低賃金が863円だと助成率9/10です。

⑵8人の労働者を953円まで引上げると90円コースの対象となります。助成上限額450万円

⑶設備投資やコンサル料などの総額は600万円

⑷600万円の9割の540万円と450万円を比較して低い方の450万円が支給されます。

表②の計算式に当てはめて支給予想金額を出します。ただし、あくまでも支給予想額であって支給確定額ではないので注意してください。

【支給申請までの流れ】

①交付申請

交付申請書・事業実施計画書等を都道府県労働局に提出します。この際、購入する設備やお願いするコンサルティングの費用の見積書を添付します。相見積もりを要求されることがありますし、水増しはできないようになっているので気を付けましょう。

②交付決定

提出された資料を元に支給予定金額を決定します。増額されることはありませんが、減額されることはよくあります。

③事業の実施

申請内容に沿って事業を実施します。申請内容とおりに事業実施をしなければ助成金が支給されなかったり、減額されたりします。

④事業実績報告

労働局に事業実績報告書等と助成金支給申請書を提出します。見積書、請求書・契約書、振込口座情報等も提出します。基本的には現金手渡しと領収書のセットは禁止です。払ったことに出来るからです。

問題がなければその後、支給決定通知が来て助成金の支給となります。

このように交付申請から支給まで1年くらいかかります。ですから、助成金ありきで事業計画や資金繰りを考えるのはあまりお勧めしません。また、助成金は、必ず支給されるとは限らない点も注意が必要です。

■麻雀店の

業務改善助成金

労働局から申請可能であると言われることを前提としてのお話です。

設備費用としては、顧客管理や回転率のデータ管理システムの導入及びコンサルタントによる経営・回転率改善指導を受けて事業内最低賃金を上げる申請が現実的な気がします。

設備投資に関しては、逐一労働局の担当部門と対象か否かを確認しながら進めた方が良いです。

■最後に

以前、風営法許可業者は一律支給対象外となっていましたが、手引きの表記も少し変わってきました。麻雀店にはチャンスかもしれません。諦めずに申請をしてみるのも十分ありです。失うものは特にありませんし、支給対象外と言われても、マイナスな記録が労働局に残るわけではないので。

 

文:荒木康宏

荒木行政書士・社労士事務所

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