「麻雀コラム」
第76回
麻雀大好き落語家の
三遊亭楽麻呂師匠が
「麻雀」で
現代社会を
愉快に叩っ斬る!
「隠居さん、こんにちは」
「おや、八っつぁん、いらっしゃい」
「なんだか隠居さんの家の前が妙にさっぱりしましたね」
「気がついたかい」
「ええ、今までとくらべて何かが足りない気がして」
「さすが八っつぁん鋭いな」
「何でしたっけ?」
「街路樹だ」
「あっ、そうだ。前は木が植ってましたね。それがないんだ! 何があったんですか?」
「邪魔になったんで処分した」
「えっ、切ったんですか?」
「そうじゃない」
「じゃ、どうしたんですか?」
「除草剤を撒いて枯らした」
「勝手にそんなことしちゃまずいじゃないですか。公共のものですよ」
「だからこれはここだけの話」
「バレたら大変なことになりますよ。あれっ、隠居さんてゴルフやりましたっけ?」
「ここのところはまったくやらない」
「では何でここにゴルフボールがあるんですか? それと靴下もこんなところにころがっていて」
「あっ、それらはちょっとした仕事に使っている。まぁ、そんなことはどうでもいいじゃないか。ところで今日はどうした?」
「さっき麻雀で負けて、隠居さんと話したくなったんで来ました」
「それは残念だった。今日はツキがなかったかい?」
「そういう訳ではないんですが、振りこみがやたら多くて」
「まっ、そんな時もたまにはあるな」
「でも今回は、ある人の当たり牌がまったくわからなかったんです」
「人がどこで待ってるかなんてアタシだってよくわからない」
「通常であれば、アッシは相手の河を見ればある程度は読めるんですが」
「ほんとかい。当たり牌をどうやって読むんだ」
「ダマでテンパってる時はともかく、リーチをかけられた時は河をじっくりにらんで推測します」
「なるほど」
「特にしょっちゅう打っている仲間だとかなり高い確率でわかる気がします」
「ほー」
「まず、リーチ宣言牌にかなりのヒントが隠されています」
「確かに」
「手出しかツモ切りかでも違いますが、それをじっくり見て考えます」
「ほー、八っつぁんはかなりテキトーに打ってるように見えていたが、実は深く考えていたんだな」
「当たり前です。またアッシはチートイツかそうでないかぐらいは、いつもやっているメンバーだったら見抜けます」
「すごい観察力だ」
「しかし、今日振りこみまくってしまった人は、何回やってもまったく待ちが何だかわからない」
「きっと超上級者なんだな。どんな人だ?」
「詳しくはわからないんですが、いつもぬいぐるみを持ってきています」
「ぬいぐるみ? 何の?」
「熊のプーさんです」
「メルヘンチックな方だな。で、いつも何回ぐらいやるんだ」
「だいたい、4回転ぐらいでしょうか。ギャグを言いながらやってます」
「面白いギャグかい?」
「いえ、毎回見事に滑ってます」
「オヤオヤ、あとは何か変わったことは」
「そうそう彼、最近結婚したらしいです」
「それはめでたい。で、誰と一緒になったんだ?」
「それが待ちと同じで、相手がどんな人なんだかさっぱりわからないんです」