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新式麻雀タクティクス 第9回
- 2017/3/6
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皆さん、こんにちは。最高位戦日本プロ麻雀協会の原周平です。
早速ですが今回のテーマは、「山読み」についてです。「山読み」とは、相手3人の捨て牌から山に残っている牌を読むことで、最近よく戦術として取り上げられているのを見かけます。「場況が良い・悪い」といった言い方もありますが、基本的に同じことです。
麻雀は目に見えない部分が多いゲームです。だからつい、目に見えるところに目が行きがちですが、本当にそれで良いのでしょうか? 目に見えない部分が多くあるのなら、そしてもしその部分を推測できる手段があるのなら、それはむしろ、力を注ぐことで他人と差をつけられる絶好のフィールドではないでしょうか。河があるということは、一打毎に場に共有される情報は増えているということです。今回はそんな些細な情報を積み重ねて成立する「山読み」をテーマに、またいくつかの牌図にお付き合いいただきたいと思います。
◎山読み≒手牌読み
牌図A 東1局 西家 1巡目
捨牌a
突然ですが、皆さんは「手出しツモ切り」を見ていますか?「手出しツモ切り」とは、他家が切った牌が、手出しかツモ切りかということです。1、2秒でどんどん置かれていく捨て牌に対して、それをすべて覚えておき、読みに役立てようということなのですが、果たしてそれは可能なのでしょうか? というかそれは結局何のため?という方もいるでしょう。
結論から言うと、「手出しツモ切りは見るべき。ただし、覚えるのはポイントだけでいい」となります。
具体的にいきましょう。牌図Aのような配牌を貰ったら、皆さんはどのように進めますか?おそらくまず端牌や字牌の整理をするのではないかと思います。すると捨て牌は捨て牌ⓐのようになります。よく見かける序盤の河ですね。これは他家の視点から見ると、「不要だから切った」という情報の羅列です。ここまでであればはっきりいって覚える必要はありません。手出しでもツモ切りでも、大して意味は変わらないからです。しかしこの後、6巡目に9索が手出しで切られたとします。すると、これは覚える必要があるのです。というのも、ここには「前巡2索より9索の方を大事にした」という情報があるからです。これがツモ切りであればそうはなりません。
つまり、手出しツモ切りを見るというのは、これを見逃さないためなのです。数牌に関していえば、効率では「端より内の牌を残す」はずなのに、それが逆になるとき、「ターツの一部」「手役の種」など、何か残したい理由があったということが推測できます。今回の場合であれば牌図Aから7索を引いて9索切りとなるなど、ソウズの上に何かあることが2索の後の9索 手出しから推測できます。このように、「引っ張った牌」を見つけ、その理由を考えるというのが読みの第一歩になります。
そして「引っ張った牌」があるなら逆に「引っ張らなかった牌」もあります。今回の場合であれば、1万、9筒、2索は、特に引っ張った形跡がないという意味で、「その周辺に興味がない≒使っていない可能性が高い」という情報を落としています。この情報をたくさん使って「相手が使ってない=山にある」牌を読むのが、山読みです。山読みと手牌読みは表裏一体で、切り順に違和感のある手出しさえ覚えておけば、どちらにも対応できるので、是非そういう牌の手出しツモ切りは欠かさずにチェックしておき、後の選択に活かしたいところですね。
◎場況が良い方を残す
牌図B 東1局 西家 ドラ 6巡目
では、具体的にこの「山読み」がどう打牌選択に影響を与えるのか、見ていきたいと思います。牌図Bはドラ2で8筒か8索の選択となっているところ。河の情報に差がなければどちらを切ってもいいでしょう。しかし、もし8筒が序盤に他家2人に一枚ずつ、違和感のない切り出しで切られているとしたら、これは8筒が2枚なくて暗刻にならない分8索残し有利……ではなく、断然8筒残し有利となります。8筒を「引っ張っていない」他家は、6筒、7筒、9筒を持っていない確率が高まります。
それが2人もいるとなれば、かなりの確率で8筒周辺は山に残っていて、この後引いてくる可能性が高いのです。これが場況を見る、山読みを打牌選択に役立てるということです。この考え方は、ターツ選択や待ち取りの際にも使えます。困ったら場況が良い方の受けを残せばいいわけです。
しかも、この8筒のような牌は、2件に対して安全牌であり、そういう他家が使っていない部分でターツを作ることによって、わざわざ安全牌を抱えなくても手牌の守備力を高く保つことができます。この効果はなかなか馬鹿にできません。そしてリーチをかけたときも、他家の不要牌が河に少ないと、押し返されづらい強い河になります。ただ山に残っているというだけでなく、今後切られやすい(相手は押すなら切るしかない)、守備にも使えるといったことも含めて、場況の価値なのだと思われます。
◎読み違いを恐れずに
最後に、読みには裏目が付き物です。捨て牌ⓐの捨て牌で2索が暗刻だったりすることもあります。しかし、それを必要以上に恐れては本末転倒です。裏目はただの結果。可能性の高さに懸けていくというのが読みの大前提で、どんな読みがどれくらい効果的なのか、データではまだ追いきれない部分を、自分なりに探っていくしかありません。そういう意味で、読みは日々進化する最新の戦術ということもできるでしょう。まずは読み違いを恐れずに。不確定で、些細な情報の積み重ねですが、もし「読んでよかった」と思う瞬間に出会うと、さらに麻雀が面白くなることは間違いないと思います。