麻雀新聞第54号 昭和56年10月10日
自働卓と麻雀経営
導入には確たる方針を避けよう安易なブーム同調
現在販売されている機種は、電動卓マグジャン(都鳥興産㈱)、電動卓オートジャン(オート・ジャン㈱)、自動卓では、パイセッター(㈱レジャー・プロジェクト)、雀夢(㈱かきぬま、㈱ジョイス)、雀王(㈱フクタニ)、鳳凰(マツオカ㈱)の7機種。雀王と鳳凰は機種が同じで外装が違うもの、また雀夢も同様のケース。いずれもかなりの率で普及されている。
本杜ショールームは、8月1日にオープンしたが連日熱心な経営者の見学がある。近所に入ったとか、客から言われた、という具合に2、3人のグループで、また夫婦でと購入前に各機種を比較、研究して帰る。
現在の各メーカーの生産台数からみて、将来は自動卓の普及率は約3割と予想される。全国で約27万卓であるから8万卓強が設置されるだろう。
都心地区のある経営者は、「自動卓を入れてから、店の売り上げが伸びました。将来は機械の時代になると予想され、機械によって業態も変化し、ある程度淘汰もされると思われますね。」
客自体が自動卓を経験しているため、「自動卓ある?」というケースが多く、客が他の店を捜すという。やはり都心で10卓や4卓を自動卓でやっている経営者は「ともかく入れないと、お得意さんでも逃げて行ってしまう。自衛策で入れたんですが、1台ぐらいじゃダメなので、結局4台入れましたが、収益が良くなったとも言えません。ただ入れないと、確実に客が逃げてしまいますからね。」
ある用具屋メーカーは、「とにかく自動卓に眼が向きすぎてますよ。店内改装の時期なのに、改装よりも自動卓をということで、こっちはネをあげてます。アドバイスではないんですが、店舗の状態を考えて、自動卓に合った内装をすべきです。また多少無理をしても、自動卓を入れる時は、椅子、照明なども、考慮することが大切なんではないですか。」
近隣にも入る、客も騒ぐという具合に、機械に対する関心は想像以上に高い。
なお各機種の特徴については、前述のショールームにて、係員が現物を前に説明するので、またその時に、多少のアドバイスもあるから、この稿では触れない。興昧のある方は、ショールームを見学することをお勧めする。
さて導入する時に気をつけなければならないことは、①償却、②店舗形体、③立地条件、④客のアンケート、⑤料金設定、⑥メンテナンス、⑦将来の展望を持つ、というようなことである。
①償却について
償却期間は2年間と考えることが漂準だ。償却というとつい差額料金によるものと感違いしがちであるが、料金差だけではないことを、知る必要がある。
それは、自動卓を入れる動機にもよるのだが。例えば、近隣に自動卓が普及していて、自分の店の何組かが逃げているケース。また平均8割なので、何とか10割にしたい、そのために自動卓を入れるケース。
これらの場合は、自動卓を入れることで、客が増えるのであるから、無理な料金設定をしなくても良く、自動卓の売り上げを、そっくり償却費に充当することも可能なのだ。後のケースの場合は、近隣に自動卓がなければ、上限いっぱいの料金は可能。前者の場合は近隣業者と同じ料金設定をすることで、その客をつなぎ止めることができる。
差額料金による償却は、手打ち台が200円なら、自動卓を300円にして、その差の100円を償却費に当てる。これはあくまで自動卓を入れなくても、客数が変らないという考えからで、例えば遊技時間が長くなった、来店回数が増えたという、目に見えない売り上げ増を見落していることを忘れないように。
差額料金の場合、100円の差があるから、1卓1時間400円×4回として1日に1600円、土曜を半日と見て月23日稼働と考えれば、月に36800円となり、2年間で88万3千2百円となる。機械代金は78万だから、差額の18万3千2百円は、1年後からメンテナンス料金に充当すること。
差額料金を取らない場合は、経営者の自覚が大切なのだが、その卓の売り上げが償却費になるから例えば200円×4人×4回×23日で、月に73600円となり、1年で償却完了。ただし、全卓自動卓とか、手打ちの卓の売り上げが減った場合は、導入後1ヵ月間のトータルと前月比を出し、その差額を償却費と考えたらどうだろうか。
いずれにしても、自動卓を入れて、事足りたわけでなく、ドンブリ勘定の店に発展はないと言えそうだ。これは、やはり経営の基本で常に店の状態が数字で解るように帳簿類はしっかりしたものにしておきたい。
現行で上限一杯の営業者にとって、自動卓で高料金というメリットはない。しかし、客を減らさない、客を増やす。あるいは、客へのサービスの一環として導入することは、その麻雀荘の将来にとってプラスになるだろう。
②店舗形体
自動卓はひとつのブームであると思われる。乗り遅れてはいけないと、自店の店の状態を考えずに導入することは、あまりに無計画であり、失敗してしまうかも知れない。
機械を入れることで、店のイメージアップを図るならば、当然内装、照明、空気環境、サービスに気を配らなくてはならない。機械を入れたからと言って、客がワァーッと来るわけでもなく、やはり同じ打つなら気分の良い店で、ということになる。
常に先行没資の考えで、機械を入れるなら、店のなかを一新することも一考である。現実に手打ちの卓で楽しむ客の方が多いのである。店の改装の時期ならば、改装を優先させ、価格の安い電動卓で勝負をすることも必要ではないだろうか。店舗の状態を見極めると同時に、近隣の状況を把握することも必要になる。
③立地条件
現在手打ちの卓で、ある水準の料金を取り、稼動率もまあまあだとすれば、機械を入れる必要はないとも言える。その店は、サービス内容が良く、客に十分アピールしているからこそ、好成績を残しているのであるから、さらにサービスに磨きをかけるようにすべきだ。ただ、機械の時代はやがてくるのだから、その準備を怠たると、時流に乗り遅れ、一敗地にまみれることになる。
無理して導入するよりも、状況を良く分祈し、正確な情報をキャッチして、不必要に多く入れたり必要のないのに入れることがないようにしたい。
都心地区でも、現実に自動卓が不必要とまではいかなくても、それだけの需要がない地区もある。
自分の店の立地状況を良く握むことが大切だ。安易な気持で導入すると、各店が先を争い、勢い余って過剰サービスなんてことにもなりかねない。自動卓もひとつのサービスである、ということを忘れずに。
その地区で初めて導入したとして、それによって、近隣の店の客を食うとすれば、近隣の店にも機械が入り、結局は高い買い物になる。その場合は、自分のところだけでなく、2、3軒に声をかけ、いっしょに入れたらどうだろうか。それならば、他地区からの客を期待することもできそうだ。いずれにしても、全体での増客対策を考えないと、良い結果を生むことはむずかしいかも知れない。
④客のアンケート
自動卓について、客からの声を聞くことも一方法である。自分の客が、自動卓に興味があるか、自動卓でやりたいか、という答えを知っておくことは、導入する台数の目安にもなり、料金設定の決め手にもなる。
この客のアンケートについては経営の基本にもなり、くわしくは前月号一面に扱っている。
⑤料金設定
立地条件を分析することで、料金設定は違ってくる。また経営者の考え方の相違(償却費の捉え方導入の動機)によっても、また客の考え方によっても違ってくる。近隣になければ、高料金を設定できる。ただし、それだけの客がある場合だ。例え近隣になくても客層によっては、高料金を設定できないこともある。ただ1年後からの保守契約その他を考えて、50円ぐらい余分に取ることは考えるべきだろう。
ただ、自動卓に寄りかかった姿勢を見せては、結局はマイナスになることだけは確かだ。
⑥メンテナンス
1年間は、各メーカーとも保証期間になっている。1年後からは各メーカーと保守契約を結ぶ必要が出てくる。現行のところ各メーカーともに別々の方法を取っているので、購入時に必ず1年後の条件を確かめることが大切。
機械を一度店に入れたならば、商売を廃めるまで、機械とつき合わなければならない。そのためにも、機械の内部構造に良く慣れることが大切だろう。そうすることで、多少のトラブルを自分で直すことができれば、保守契約料を安くする可能性もでてくる。
本紙でも毎号のようにその活動を紹介している自経協(自動麻雀卓経営者協議会)では、各機種の講習会を開き、それぞれの機械に精通することで、保守契約を有利な条件で結べるよう、活動を進めている。
機会代金は1回限りだが、保守契約は一生続くことだけに、各営業者が真剣に考えるべき問題だと思われる。
⑦将来の展望
現情においては、自動卓などはまだ稀少価値がある。機械を入れることで、経営が楽になることは確かだ。しかし、3年前に自動卓を入れたある経営者の声に耳を傾けると
「私は、店がいつも何か努力していることをお客に解ってもらうための一方法として導入したんですが、今のように自動が当り前になってくると、本来のサービス業としての営業が、自動卓のためにおろそかになったような気がします。自動卓に甘えていたんです。その本来の姿勢が一番大切で、生き残るためには、それしかないのではないかと思っています」
またある人は、
「麻雀業を企業としてでなく小遣いかせぎ的に考えている限り、自動卓を導入しても、良い結果は生れないでしょう。まず経営改善の目玉として導入することで、もう一度、サービス業の原点に立った経営を、見直すことが必要でしょうね」
これからの麻雀業にとって、自動卓は普遍的な設備になると思われるが、その自動卓によって麻雀人ロが増えるのかどうかも重要なポイントだ。今は、各個の経営にプラスになる部分だけが、取り上げられているが、麻雀ファンが、この自動卓をどう考えているのかを、分析することも必要だ。麻雀営業者にとっては、麻雀人口の動向が、一番気になるところである。
麻雀人口が増えないとすれば、自動卓普及後に、現在と同じような厳しい情況は予想される。その時のためにも、常日頃のサービスを心がけ、全員で麻雀人口を増やすことを考えるべきだろう。