「八っつぁん、今、世の中はチャットGPTというものが流行ってるようだな」
「ええ、かなりの人が使ってると思います」
「どういうもんなんだい?」
「対話型AIというものです」
「人工知能の一種かい?」
「まあ、そんなもんです」
「何に使うんだ?」
「質問をするとなんでも答えてくれるんです」
「えっ、何でも?」
「基本的にはそうですね」
「では、それがあればどんなことでも解決できるのか?」
「そういうことになりますかね」
「すごいな。でも何でもということではなくて、名前の通り、少しだけじゃないのかい?」
「どういうことですか?」
「チョットだろ」
「チョットじゃなくチャットです」
「あ、そうか、それは失礼。しかし人間は夢のような優れたものを手に入れたんだな」
「しかし困ったこともあります」
「たとえば?」
「大学生が論文を書く課題を与えられたとします」
「うん」
「昔だと図書館に缶詰になって文献を読み漁って悪戦苦闘しましたよね」
「そうだったな。大変だった」
「それが、インターネットを使えるようになってからはだいぶ調べ物が楽になった」
「今の学生さんがうらやましい」
「しかしチャットGPTの登場でそれすらも必要なくなったんです」
「どういうことだい?」
「論文のテーマや入れてもらいたい条件を書いてチャットGPTにお願いすると、あっという間に文章を作成してくれるんです」
「では、自分で考える必要がまったくない!」
「そういうことになります」
「そうなると個々人の思考力が弱まってしまうかもしれないな」
「そこが問題かもしれません」
「でも芸術の分野はそうはいかないだろ?」
「それがそうでもないんです」
「そうでもない?」
「作詞・作曲もお茶の子さいさいですし、もっとすごいこともできます」
「すごいこと?」
「たとえば、ただ作曲をお願いするだけでなく、瀧廉太郎風にと言えば、それっぽい曲をあつらえてくれるんです」
「素人だからよくわからないが、著作権を侵害されるような場面も出てきそうだな」
「その辺がこれからの大きな課題だと思います」
「大問題になりそうだ」
「実際に大変な影響をすでに受けているところもあります」
「そうなのか!」
「毎年懸賞小説を募集していたある出版社が、今年から応募を停止したんです」
「どうして?」
「応募作品のかなりの数がAIが書いたものと判明しました」
「つまり、賞金を狙ってチャットGPTに書いてもらったということか?」
「さすが隠居さん、察しがいい。その通りです」
「いやー、なかなか難しいことも出てくるな」
「しかし、使い方に節度を持てば、人間生活を豊かにしてくれると思います」
「そうだな? あっ!」
「チャットGPTに麻雀必勝法を聞いてみたらどうだ?」
「そうか! いいところに気がつきましたね。これでライバルを蹴散らせますね。よーし入力しよう。あっ、答えが出た…」
「何て書いてある?」
「えーと、『麻雀は運の要素が大きいため、必勝法というものは存在しません』」