新式麻雀タクティクス 第18回 | 麻雀新聞

新式麻雀タクティクス 第17回

若手麻雀プロが贈る麻雀の新潮流!
数あるイマドキの戦術がみるみるよくわかる連載第17回

 皆さん、こんにちは。最高位戦日本プロ麻雀協会の原周平です。聞くところによるとこの麻雀新聞が今回の号で通巻500号だそうで、たいへんめでたい限りです。
 私もいつか公式戦50000対局とか、満貫5000回達成とか、そういう大きな記録で祝ってもらえないものかと、ふと考えてしまいました。プロ野球みたいに麻雀のタイトルに世間が注目する日が来るかどうかは、まさに自分たち若い世代の活躍にかかっているなと、野望を胸に励んでいこうと思っております。

 さて、今回のテーマですが、引き続き「鳴き」についてです。前回、いわゆる王道のバランスと思われる鳴き判断を扱いましたが、今回はもう少し踏み込んで、そのバランスを崩して鳴くとはどういうことか、を扱いたいと思います。

 麻雀がもしも、ブラックジャックやバカラのように、一定の確率との戦いのみであるとするなら、前回のように局収支で打つことが常に最適戦略になるでしょう。一面ではそれが事実ですから、バランスは頭に入れておく必要があります。しかし、同時に麻雀は、3人を相手とする対人ゲームであり、相手の対応の違いがもたらす展開への影響はとても大きいものがあります。特に「鳴き」は、相手の切る牌を前提として成立するものです。それは相手の対応に結果を委ねるということですが、言い換えれば相手に対応を迫るということでもあります。

 この参加力ともいうべきプレッシャーが、ときにポーカーのレイズのように、ハンドの強弱と結果を逆転させます。すなわち、普通より積極的に鳴いている人がそのバランスでなぜ打てるかと言えば、それは周りが対応を誤って自分の手を殺したり、逆に踏み込み過ぎたりしているからなのです。周りのミスに助けられている形ですが、上手いプレーヤーはそれを自ら誘導できます。相手がどう対応するかまで計算に入れて動くことができるため、それが守備力や打点の代わりとなっているのです。

◎対応させながら絵を合わせる

 具体的に行きましょう。牌図Aは、ターツ不足ですが1メンツあり、ドラ2赤。

 打点は十分で、このまま面前で進めても悪くはありません。しかし、6萬や1萬が2枚切られればたちまち和了が難しくなり、せっかくの打点が生かせません。
 そこで選択肢として、3・6萬チーと1萬・2索ポンで後々付けに取る手があります。通常後付けは役という急所を作る鳴きですが、この場合は急所を他の急所に置き換えながら、手を進めることができます。そしてこの鳴きの最大の特徴は、本来デメリットとなる「他家に対応されるとアガりにくい」ということがほぼデメリットになっていないということです。他家には寧ろまだ重なっていない役牌を絞ってもらう方がよく、ここで丁寧に対応し過ぎると、まさに参加力に抑えつけられるということになります。さらには、速度に辛い現代麻雀では、確実性を捨てても、絵が合ったときの最高速度で役有りテンパイに取れる抽選の価値は高く、アガるにはこちらの方が実戦的だといえるでしょう。

◎威嚇込みで鳴く

 続いて牌図Bですが、ここから何を鳴くんだというほど何も見えない手牌です。

 しかし、唯一9筒をポンしていく打ち方だけはありだと思うのです。1・9・字牌のポンは、ホンイツ、トイトイ、チャンタ、ホンロートー、役牌バックなど多くの役の可能性を含み、他家に対応を迫る上で悪くないものとなります。それでも自分のことだけを考えたら、いたずらに役と守備力を下げる鳴きを避け、面前でリーチやチートイツを生かしていく方がいいのですが、今回のように悪すぎる手の場合は、縦でも横でも細い糸であることは変わらないので、鳴きで参加力を振り回しながらまさかのトイトイやホンイツを狙うという方針が成立します。

 仕掛けられた側からすれば、たとえどんなに遠くても、それがなかなかわかりませんし、見掛けが高い鳴きであれば一応警戒せざるを得ません。この高く遠くという仕掛けも、ブラフであり、同時にまっすぐ高い和了へ向かう道でもあるため、デメリットがあまりありません。この後バラバラで、3副露した後に孤立字牌4枚だとしても、守備力はあり、他家には相当の圧がかかり、対応させている間に自分はツモだけでアガるという抽選を受けられます。デメリットを強いていうなら圧を失わないように常に気をつけながら手牌を進行するため、通常の手順と考えるべきことが違い、複雑になるということでしょうか。

 いかがでしょうか。つまりは、鳴きが一筋縄でいかないのは、他家との距離感を考えなくてはならないからだということです。どんなに局収支通りにしていたとしても、距離感が透けてしまうと完璧な対応をされ、相手に上手く打たせてしまうことになります。本当に強い人とは、相手に容易に手を読まれないほどの引き出しを持っていて、色々な「鳴き」を駆使できる人です。3副露2シャンテン、たまにはやってみてはいかがでしょうか。

AUTHOR:原 周平(23歳)
PROFILE:最高位戦日本プロ麻雀協会C1リーグ所属。
早稲田麻雀部元部長。
大学対抗麻雀駅伝に早稲田のアンカーで出場し優勝。
天鳳九段(ID:焚き火)。
雀風は数多の戦術からいいとこ取りの門前攻撃型。

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