「追憶の麻雀」第5回『徹底研究!麻雀と競馬の真髄』 | 麻雀新聞

「追憶の麻雀」第5回『徹底研究!麻雀と競馬の真髄』

麻雀新聞第9号 昭和53年1月10日

新春特別対談
徹底研究!麻雀と競馬の真髄

麻雀は手成りが一番

――宮城さんは競馬の当代随一の評論家として聞こえておる方ですし、青木さんは一期、二期連続王位を取られた方であり、麻雀、竸馬の共通の面日さ又は相違などを中心にお話頂きたい。宮城さん、まず麻雀歴からお聞かせ下さい。

宮城 これは競馬より古くて昭和24年位、高校に入った年でしたが、まだクラブも数の少ない時でした。最初から外で覚えたものですから家庭麻雀はあまりしなくて。昔は京王線沿線に割とあったんですよね。お寺の仏間の広い所に7~8卓おいて、お寺だか麻雀屋だか分らない所でやったんですよ。僕が今、覚えているのは、新宿伊勢丹のある明治通りを行ってすぐ左側に千疋屋という果物屋があった。その裏に万年さんという今女子プロかなんかの会長をやっている人の雀荘に通っていたんです。

青木 当時はアルシャル・ルールでしたね。

宮城 僕らが入って大体30円でしたね。メンバーによっては死ぬ思いで100円で打ったりしてね。

――動機は何でしたか。

宮城 好きだったんですね。たまたま友達に誘われて。

――それで現在まで休みなく続いているのですか。

宮城 そうですね。ただこの4年位、時間がなくなったのと、行きつけのクラブがなくなってしまって、年に2~3回しかやらない状態なんですが、まあ1回打ち出したらまた……。

――何かタイトルとか取ったことは?

宮城 大会に1回だけ出たのが、昭和27、8年頃かな。内外タイムスのスポンサーの川崎備寛、小金長文という線ですごい麻雀大会やったんですよ。その時準決勝まで行って負けました。実は青木さんにお聞きしたいと思っていたことがあるのですが。僕はこの3~4年あまり麻雀を打たなかったのですが、最近いろんな機会があって誘われて打ったり、また麻雀雑誌を読んだり、大橋巨泉や福地泡介と話をしたり実際に打ったりして非常におかしいと思うのは、なぜ自分の手牌にこだわらず捨牌にこだわるかということですね。

青木 ひと頃そういう捨牌で迷彩を作るのがうまいんだと。またそれにひっかかってあがると絵になったわけですよ。しかし今は逆に捨てられている牌の近所が危険であるとみられてますね。それと一番悪いのは聴牌が遅れることです。

宮城 そうですね。麻雀は手成りが第一だと思うんですね。ちょっとうまい人達とやってみると、割とソバテンのりーチはすぐひっかかるんですね。

青木 むしろ今は、そういう人達がソバテンをやったり、6ピンきってカン3ピンであがってみたりね。大体、昔だと6ピンきってカン3ピンまちだとみっともないから1回まわすとか2回まわしてリーチかけるケースがあるでしょ。

宮城 この2~3年前になると、最初の3枚位のところで字牌の後に2ピンうって、しばらくして1ピンうって、そして6ピンうって3ピン単騎で待つとか、そういうのがはやりましたね。最後はやっぱり手成りに戻るんですか。

青木 やっぱり麻雀は手成りが一番スピードがあるし、一番読まれにくいんですよね。

宮城 原稿で稼ぐとなると、そう書かなきゃまずいんでしょうね。

――結局、興味ってことが基本ですから、いろいろ不可能でないと読んでくれない。

青木 プロが手成りで打つと、我々と同じじゃないかとかね。

宮城 読者にしてみれば一部分しか見られないからそうなるんでしょうが、今一番不思議に思ったのは、その点でしたね。しかもそれが非常にうまいへたの評価になったり、能書が必要になったりで。

青木 プロ同士でやる時は、ふだん迷彩でやる人でも手成りにふりかえてやるという傾向になってきていますよ。僕なんかもあまり迷彩にこだわらず、中盤辺りからしかけるようにしますがね。最初から手を決めて迷彩を作るとなると切った牌が暗刻になったりでテンパイが遅れますからね。

宮城 一般のルールはいろんなのができて困りますね。

青木 ルールの統一は何とかして考えなきゃいけない問題ですね。

宮城 いろいろありますね。ちょっと聞いたのではわからないルールがいっぱいあって、今の時代からいけば昔のアルシャルに戻るのは難しいでしょう。ドラも現行のままやらざるを得ないでしょうから、表ドラだけのニゾロのつける辺が一番無難ですね。

青木 そうですね.あの辺まで逆行できると、もっと麻雀がおもしろくなる。

宮城 かなりツキが制限されますでしょ。

青木 我々の業界でもルールの統一はいろいろ研究しているんですけど、やはり日本の麻雀界にもいろんな連盟があるから、そういった連盟のトップの人が、ある程度大局的な見地に立って何とか一本にまとめる姿勢にならない限り難しいでしょうね。

宮城 将棋や碁は一本化してますものね。

青木 そうですね。段位の面でも一ヵ所から出てくるでしょ。今、麻雀の段位はあっちこっちからでています。

宮城 何カ所あるんですか。

青木 日本麻雀連盟が一番古いけど、あと日本牌棋院でしょ、日本麻雀道連盟、我々の全国麻雀段位審査会、組織の上からいうと全段審が、歴史からいうと日本麻雀連盟ですね。

宮城 利害関係がからむんですか出版社の関係ですか。

青木 連盟はアマチュアの団体だから問題ないが、ただ牌棋院とか道連盟になると、ある程度自分のところで発行する段位によって収入があるわけですね。そうなると利害関係がでてくるでしょうね。

宮城 最近は三人麻雀がはやっていますね。

――東風戦もはやってますね。

宮城 あれはマスコミからですね

――やはり時聞の関係で。一般ルールはいっぱいあるんですが、統一の可能性はどうでしょう。

青木 まあ不可能でしょ。

――そうすると残る競伎麻雀のルールを統一に近づける方法は、あるんじゃないでしょうか。

青木 そうですね。日本麻雀ルールというのを一本作っておいて、いろんな竸技会やなんかは、すべてそのルールを使用する。ただし競技会が終ってさあオープン戦をやる場合には、それぞれのルールを使う、という過程を経ないと一本化は難しいんじゃないですか。

宮城 他の団体と全段審の交流はあるわけですか。

青木 組織としての交流はないけれど、個人的な交流ですね。

宮城 雀荘の経営者同士のつき合いとか麻雀の仲間うちという。

青木 麻雀の経営者でも道連盟に入っていたり麻雀連盟に所属していたりというケースがそうですね

 

穴狙いは弱さからか

――今まで宮城さんは通算してどの位うっていますか。

宮城 どの位ですかね。期間としては26年位かな。26~7年の内の15年位は半チャンを8回位、毎日うっていたですね.

青木 だいたい僕のキャリアと同じ年数位うっていますね。僕の場合、自分で雀荘経営しているから総半荘数は相当多いけれど、年数は宮城さんと同じ位ですね。

宮城 親指の形、ほんと変わる位です(笑)、右の親指だけはやめても直らないですね。二回り位大きいです。こんなに麻雀が盛んになるなら競馬じゃなく麻雀の方をやればよかった。(笑)

――現在のプロ雀士っていうのは確立されていないので、その意昧じゃ飯食うのは大変ですね。競馬はどの位ですか。

宮城 競馬は大学3年で中退して22だから、この社会に入って丸20年位ですか。

青木 僕は連単の頃、宮城さんのファンだった。不思議なのは宮城さんの麻雀はオーソドックスで正統派で、牌の流れに逆らわない、こっちが押せば黙って引くし、こっちがひいている時は押してくるという、いわゆる自然流で無理がない麻雀だ。ところが競馬の予想は僕がみても相当無理がいってるんじゃないかと。穴の宮城というニックネームがついている位ですから。たまたまある雑誌社の対局でお手合せした時以来、麻雀でも好きになっちゃったわけです。僕らも競馬は本命をかわないが、麻雀はオーソドックスにやるという傾向がありますけどね。

宮城 性格的なものだと思います。

青木 競馬は最初から穴狙いだったんですか。

宮城 そうです。やはり勝負師として弱いんでしょうね。僕が予想屋であっても最終的に馬券の勝負師になれない弱さがある。穴狙いってのはどこか逃げているんですね。物事に真正面から対決できないわけですよ。

青木 そうですかね。

宮城 麻雀もどうしても逃げるから堅くなってしまって。

青木 麻雀の場合、あまり守備はかってないでしょ。どっちかというとバランスがとれてる方じゃ?

宮城 やっぱり手がすくむ方だから割とおりる方ですね。打ち回しの方が多い。そういう性格の弱さが疑い深い所に出たりしてるんじゃないかな。

――すると麻雀の場合、自然流となると確立を主体とするのでしょうが、競馬の場合も確立を主体にすると本命を狙ってくることになるんですが。片方は本職で片方は遊ぶ意味だからですか。何か思想的にあるんでしょうか。逆のような気がしますけど。

青木 僕は麻雀も競馬もトータル勝負だと思う。1日に12レースあるとしてその12レースの最終の段階で手元に何がしかが残ればいいと、そうした時に本命ばかり追いかけると、収入が少いわけだからどうしても最終的に手元に残らなくなるんじゃないか。本命があんまり信頼できないという宮城さんの言葉よくわかります。中穴がポンとくると大きな身入りになるから本命でチョコチョコとるより、トータルではそっちの方がいいんじゃないかな。当る確率というより麻雀でいえば最後に点棒が残る確率のことじゃないかな。

宮城 競馬の馬券は数学的にいうとスジが通らないという話しなんですが、今、連勝複式の平均配当が1.850円あるんですよね。そうすると僕は馬券は18点買っていいと思う。

青木 それで元になるわけですからね。

宮城 その18点の内から実際は何点か減らせるわけですよ。極端にいえば、これは絶対荒れると思ったら僕は18点買う、それでもとれない時は取れないけれど。あとは運ですね。

青木 麻雀の場合も、せめる場合は相手に対する捨牌は何通りもあるわけだからね。やっぱりその中で何にしばるかが問題でしょう。

群盲 象を撫ず

――本命を狙うよりも、むしろ中穴、小穴まぜ合せた方が確率的にいいというわけですね。

宮城 Aが一番力があってBが80%、Cが60%の力という競馬ではなくなっている。今はクラス制ですからね。大体一つのクラスだと力は同じなんですね。

――そうすると馬の場合、新聞をみる人は穴を狙う人の方が多いのでしょうから、読者サービスのためにも穴はどれかを中心にと。

宮城 そういう場合はありますね。ただ最近のファンの方は、あまりそういうものに惑わされず自分で考えて買う方がふえてるんじゃないですか。

――ほう、自分でそこのとこでもう一回判断しなおすという。

青木 僕の場合には、本命買いの人を何人か知ってますけど、本命ばかり狙う人は最終的にとられていますね。

宮城 同じとられるにしても、とられ方が早いですね。

青木 ええ、早いですね。

宮城 やっぱりね、3倍しか配当のつかないものだと、30万にしようと思うと10万円いるわけですよ。だけど30倍つくとこ狙えば1万円でいいんですからね。だから、どうしても一獲千金という一番の競馬の夢を満すのは穴狙いでないかという気はしますね。

青木 予想する時には馬の調教状態とか、馬のできをみた上で印をつけられるわけでしょうが、この間の天皇賞のトウショウボーイのような例もある。非常に予想屋としてもそこのあたり難しいですね。

宮城 非常にもっともらしいことをいうようですが、「群盲象を撫ず」って言葉がありますね。麻雀もそうだろうと思いますが、競馬というのは要するに非常に多面性のものにも関わらず、そこまで見きれず一面性しか捉えられないところがあるわけです。

極端にいうと天皇賞の時にレース展開にポイントをおくか、馬場状態におくか、前回の成績にポイントをおくかという捉え所の感じなんですね。要するに僕達が予想屋、評論家という形で呼ばれても所詮は盲人にしか過ぎないということなんです。その人にはその人のみた一面が正しいのであって、麻雀でもそれを切っちゃいけないよと、後でいっちゃいけませんね。

青木 その意味で共通点もあると思うんですけと、競馬は走ってみなけりゃわからんと。麻雀もオーラスで終ってみなけりゃわからん。というのはいろんなタイトル戦があるでしょ。そうすると、その時のメンバーでまああいつがいるならしょうがないだろうと大方の見方があっても、ところがいざふたをあけてみると、その人にツキがなくてメタメタにやられてしまう。そういう点では競馬も麻雀も走ってみなければわからないんじゃないかなと。あまりにも麻雀が技術的でなく、運一辺倒のように聞こえますが。(つづく)

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