麻雀新聞第213号 1993年(平成5年)4月10日
麻雀ニューウェーブ到来!! 若者が雀荘に帰ってきた
軽いゲーム感覚 “符のない”簡略化方式も
TVに人気アニメ登場
斜陽の一途だった麻雀(マージャン)が再び若者たちに受けている。街の雀荘にもヤングの姿が復活の兆しをみせ”符のない麻雀”なる簡略化方式を取り入れる雀荘も現れた。一方、テレビでは、麻雀アニメが始まり、またビデオでも近く麻雀ものが発売され、なかなかにぎやかだ。テレビゲームの麻雀で育った世代の台頭がもたらした現象で、麻雀界にとってはニューウエーブ到来―。
街の雀荘に若者が帰ってきて、最近”フリーの雀荘”が多くなっているという。かつては、熱い勝負にかける一匹オオカミの戦場であったが、現在のフリー雀荘は様子が全く違う。ヤングが気楽にひとりで遊べる店。「現代っ子は仲間づくりが下手ですからね。そんな子でもリラックスして遊べる店。いまの若い子にとって麻雀は勝負というよりむしろ軽いゲーム。従来の雀荘がそうした感覚で遊べる店に変身しているんです」といったのはあるベテラン雀士だ。
そして、新方式の麻雀も登場だ。”符のない麻雀”がそれ。上がった際の点数をはじき出すには符の計算が付いて回るが、これが複雑ということで、その符計算を省いたものだ。往年の雀士には批判を受けそうな方式だが、若者にはなかなか好評。この符のない麻雀を取り入れた草分けの店は東京・国分寺市の「積木」。同店のマスターの天野晴夫さんは「せっかく興味を持った若者や女性も、符の計算が面倒臭くて、入り口で逃げてしまうケースが多い。それを防ごうということで考案したのが符のない麻雀。その簡単さが評価され、いまでは、この方式を採用した店が都内で100店には達していると思う」。
レジャーの多様化で、若者が去り「暗い」「ダサイ」といわれてきた麻雀に、こうしたニューウエーブが訪れたのは”新世代”の登場が背景にあるという。麻雀漫画雑誌を3紙発行している竹書房第一編集部の福地誠さんによると「テレビゲームの影響が大きい。画面を見てのひとり遊びとはいえ、マージャンゲームを楽しんで、興味を持ち始めた」。ファミコンを例にとると、麻雀ゲームのソフトが20種近く、パソコンのソフトまで含めると40種にも及ぶ多さだ。ひとり孤独に画面を見入って遊ぶ姿はなにやら暗い雰囲気も漂うが、こうした疑似体験派が増加。「おかげで、ウチのコミック誌の部数もここへ来て増加傾向です。中でも『近代麻雀ゴールド』などはこの夏以降2割も伸びている。読者層の若返りも著しく、高校生も目立つ」という。
上げ潮ムードに目を付けて、テレビでは麻雀アニメをオンエア。フジテレビが毎週木曜日深夜に放送している「スーパーヅガン」がそれだ。月刊の麻雀専門漫画雑誌「近代麻雀オリジナル」(竹書房)で連載して、爆発的ヒットとなった片山まさゆきさん作品をアニメ化したもの。”ヅガン”とは「特についていない状態」のことで、腕は立つが、いつもついていない主人公のトヨトミ君が繰り広げるドタバタ・ギャグ漫画。三波春夫の歌うラップ調のおかしなテーマソングも話題となって、なかなか好評だ。
これに同調でもするように、徳間ジャパンコミュニケーションでは、ビデオ映画「雀鬼SHOICHI」を制作。20年間不敗という伝説の雀士の物語を清水健太郎が主演するもので、12月1日に発売する。一方、劇場映画製作の話も進行している。イーストスタッフユニオンが手掛ける「麻雀遊蕩(とう)伝はっぽうやぶれ」で、元プロの雀士をモデルに、勝負にかける男の美学を追ったストーリー。台本も完成、主演は元ロック歌手の石橋凌に決まっている。いろんなメディアにも脚光を浴び、静かだった麻雀界も久方ぶりににぎやかになりそうだ。(杉村要)
【符のない麻雀】
符の計算をせず、役の数で点数が決められている。子の場合、1翻は1000点、2翻は2000点、3翻は4000点、4翻は8000点。チートイツは2翻、アンカンはマンガンまでなら1翻アップ、ミンカンは2つで1翻アップなどとなっている。親は子の1.5倍。勝負上のルールは普通の麻雀と変わらない。