【追憶の麻雀】第47回「麻雀の心理学2」

追憶の麻雀

昭和61年4月10日  第129号

 

麻雀の心理学

〈その2〉

 

まずはリラックスを

前号では、心理学の有名にして古典的な法則「ヤーキース・ドットソンの法則」について説明した。

この法則は、緊張と行動の能率関係について説いたもので、かいつまんでいえば「作業内容によってそれぞれに適した緊張状態がある」というものであった。

つまり、肉体労働では、強度に緊張すればするほど『火事場のバカ力』が出る。精神労働ではそれより少し緊張レベルの低い状態が有利である。

マージャンは当然、後者である。適度の緊張状態を作り出し、維持するための例証も前号にあけた。

さて、本号では逆に、リラックスということについて考えてみたい。

「リラックスするな、緊張しろ」と緊張の必要性を前号で説き、「リラックスしろ」とリラックスの重要性を今号で説くのは矛盾しているようだが、実は必ずしもそうではない。

もっとも、ここでいうリラックスとは、海辺でだらしなく?寝そべっている(若い女性なら目の保養になって大歓迎だが)という恵味のリラックスではない。

 

金もあるしヒマもあるサ

 

マージャンには失敗がつきものだ。だが、いつまでも失敗にとらわれて気持が沈んで「今日はもうダメだ」と、くやしまぎれに「チクショウ」なんて、我を忘れては困るのである。これでは、ますます泥沼にはまりこむようなものである。

 

真面目な入ほど?、失敗のあとの暗い気持に正対して、この泥沼にはまりやすい。失敗が何ですか!?、いつまでも

暗い気持でいてはいかんよ。

マージャンをやれることが、どんなに幸せか考えてみなさいよ。

「オレには金もあればヒマもある!」てな風に考えなおそう。(上のザレ歌はいかがですか。ある歌を土台にした即興です)

 

例えその日「絶不調」で終ったとしても、雰囲気もなかなか良い「素晴しい大会」に参加できた幸せをカミシメなければいけない。大会でなくてマージャン・クラブでも、健康でマージャンが楽しめればいいではないか?

ステキな家族が味方よ

 

ここで思い出すのが、前号でふれたゴルフの青木功選手の考え方、いわく、「はずれちまったんだからしゃあんめえ、待てば海路の日よりありか……」また、読者の中には、巨人軍全盛時代の川上監督の語録を思い出す人もいるかも知れない。

 

その全盛時、川上巨人軍は開幕第1戦でよく負けた。緒戦であるから、どのチームも気合を入れる。工ースをぶっつける。最高オーダーで臨む。大観衆が集まる。テレビ。ラジオはがなりたて、スポーツ紙には特大の見出しが躍る。注目の一戦、当然勝ちたい。そんな試合に負ける。川上監督のいわく、「年間120試合中の1敗ですからネ。どこで負けようと1敗は1敗ですよ」

 

つまり、緒戦で負けたからといって2~3敗になるものでもない。年間トータルで勝てばいいんだろ、(勝ちますよ!)ということ。そして事実は、ご承知の9運覇。このずうずうしい考え万!気持の切りかえ。一流選手の考え方は、きわめて積極的である……。失敗したものは今更とやかくいったって”シャアンメェー”!

 

我らが「マージャン・日本」の例だけでは不公平?だから、外国の例もひいて見よう。ゴルフのスコット・シンブソン。彼は日本のトーナメントでも優勝経験があるが、不調で暗い気持に落ちこんでしまいそうな時、こういうおまじないをするという。

「たとえ80を打ったとしても世界の終りが来るわけじゃなかろう。オレには、ステキな女房と子供がついている!」。

 

初っぱな痛いッ満ガン

 

―いわゆる仲間うちマージャン、あるいはリーチマージャンでもよいが、ここでは大会マージャン(競技マージャン)を例にとってみよう。

 

ふつう、大会マージャンは半チャン4回戦をワンクールとして、トータル得点で成績を争う。優勝を狙うからにはどうしても4連続トップを目ざす。悪くとも3回トップが欲しいところ。

ということは、ミスが許されない〈と思う〉。ミスをするとコタえる。実際以上にダメージを感じる。逆にいえば、先取点が欲しい。高校野球が先取点を欲しがる心理と全く同じ。

 

早くテンパッたからといって、早くアガれるとは限らないのに、テンパイを急ぎに急ぐ(傾向がある)。スピード麻雀と称して、急がばまわれという手作りを嫌う。もっとも、手作りかスピードかは、どちらがよいという種類の比較ではないが。

かくして朝一番。(大会マージャンは昼開始がふつうだが、マージャンという観点からすれば、事実上は朝一番ということだろう)。

 

大会参加者は、こういう心理で、緊張して卓に向う。王催者側のくどくどしい挨拶も注意など、どうでもよい。早く終れ、早く終れ。ただ事前に頭に入れておきたいのは、本日の大会ルールのみ、主催者には悪いが、誰でも覚えのあることではあるまいか。

 

これほどはやりにはやって待望の第1戦開局。

とたんに、満”ガン”一発振りこみ!

まさにガンと一発、頭をぶんなぐられた気分。これがホントの”ガン”だ、とシャレるのは第三者。当人はもう、このままゲームを投げ出したい気持ちだろう。そのゲームにかける思い入れ(意気ごみ)が強ければ強いほど。そうでなくても、朝一番は失敗しまいと緊張してきいるのだから。

 

事実、多くの人はこういうケースに会った場合「今日はダメだなア」とガックリする。あるいは「チクショウ」とばかり、逆にカッとなって自分を失う。結局、成績はよくないのが当然である。

 

ポジティブ・シンキング

 

ここで「ものの考え方」が問題になってくる。どう考えるかというと―。

 

① 4回戦(大会麻雀はふつう半荘4回戦)の中で、満ガンの1~2回取られるのは当り前のこと。

② それが、今日はたまたま初っぱなに来た。

③ 今の8000点は、初めからなかったものとして再出発すればよい。

④ 半チャン裏表で8回、4回戦だから32回、パイ山を作れる。ここで1回失ったけれど、あと31回も(!)パイ山を積むことができる。

⑤ その31回の中には、いいもあるに決ってる。

⑥ この満ガンも、オレ(ワタし)の実力の一つ。特別に悪い事態にぶつかったわけではない。

⑦ 初っぱなの満ガンは、逆にいえば、これからよくなっていく前兆だから心配ない。

 

―いわゆる「積極的思考(ポジティブ・スィンキングpositive thinking)」という考え方である。

 

つまり、自分のことを絶対に否定しない。批判もしない、良へ方へと考える。

 

もっとも、この「楽天のすすめ」は、楽観にズルズルと流されて最後までしまりのないマージャンを打ってしまうのとは違う。

 

それはもう、満ガンを、それも初っぱなに打って「クヤシイ!」という気持になるな、というのは無理な話。この口惜しい気持こそ、逆にまた実力向上につながる。

 

(続く)

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