【追憶の麻雀】第29回「接客の原点に返ろう 客には興奮と楽しさを 忘れるな『熱意と努力』」

麻雀新聞第74号 昭和52年10月10日

 

接客の原点に返ろう
客には興奮と楽しさを
忘れるな『熱意と努力』

 

「いい課長」には4つのE

 

石油原価の値下げで、景気の動同に対して、さまざまな意見があるが、麻雀業界は、まだまだ厳しい経営環境が続くと予想される。

経営環境が一番の影響力を持つことは確かだが、それは麻雀店を利用する客のフトコロ具合に、影響を与えるわけだからだ。

サラリーマンはフトコロ具合が厳しくなればなる分、多様化したレジャー志向を一本に絞ってくるはずだ。やはり、一般サラリーマンの動向に目を向け、特に30歳前後の考え方を十分に知ることだ。

「十年後」(㈱光文社発行)という本によれは、OA(オフィス・オートメーション)の進歩で、将来は在宅勤務が噌えるとの予想もあるが、欧米の会社では、個室を与えられて仕事をつるケースがあるものの、わが国では、大部屋に机を並べて、上司、同僚とつねに顔をくっつけ合って仕事をする。同僚と冗談をいい合い、あるいは帰りに一杯やって、社内状況をつかみ安心する。ところが在宅勤務になれば、ストレスがたまり会社の様子がわからず、ただ不安がつのるだけで、在宅勤務は普及しないと予想される。

しかし、サラリーマン社会ではノイローゼ症候群や自殺の多発がありそうだ。というのは、現在においてもすでに、OA化の環境に適応できないで、ノイローゼになるサラリーマンが激増しており、たとえば東大分院神経科における「神経症」の受信者は、1957年度を1とすれば、70年8、71年10、80年15となっている。

同分院の平井富雄医博は、「この調子でいけば、十年後のサラリーマンの六人に一人はおかしくなっても不思誠はない」と、ある雑誌で語っている。

極度のノイローゼによる中年サラリーマンの自殺者も、増えはじめている。82年5月に開かれた「日本自殺予防ンンポジウム」(日本自殺予防研究会)で、松下電器産業健康管理センターの小西輝夫副所長が、従業員の自殺症例16件を示し、以前は10、20代が多かったが、最近は30~50代が半数を超えていると報告した。中年サラリーマンは、肉体や気力の衰えに加え、職場内でのポスト不足、OA化などから、不安定な精神状態に陥りやすい。

さらに、現在、登校拒否児、自閉症、家庭内・学校内暴力、受験ノイローゼなどで問題になっている子どもたちが、十年後にはビジネス社会に入ってくるから、ノイローゼ、自殺の増加に拍車をかけるだろう。

企業、個人で、メンタルヘルス対策が絶対に必要になってくる。

以上のようなことから、麻雀業の存在価値は、ますます必要なものになってくる。

若手社員がどんなことを考えているか。日刊ゲンダイの連戴エッセイ「サラリーマンの盲点・泣きどころ」(筆者は深田祐介氏、4月19日付)によれば、日本生産性本部の経営アカデミーで学んでいるサラリーマンたちが最近、なかなか興味深い研究結果を発表した。83社の優秀だと見られている課長の下で働いている800人を対象に「望ましい課長像」のアンケート調査によると、もっとも理想的な「いい課長」とは「E課長」だとのことだ。

すなわちエキサイトメント(興奮)エンジョイメント(楽しさ)エンタテイメント(面白さ)、エナジー(精力)の要素をもち、これによって職場に活力を醸し出す能力を備えた課長が、そのE課長となる。

麻雀経営にもE要素が必要

 

これからの麻雀店と経営者・従業員のあり方はどうなのか。ここまでの考察からみれば、まずサラリーマンのストレス解消のためであり、コミュニケーションの場であるということだ。

そして、経営者がE課長になり店がE麻雀店になるならば、若手サラリーマンが麻雀に興味を持ち麻雀に興奮し、熱中することも可能になる。

店とお客の間の人間関係や人間的環境に、エキサイトメント(興奮)、エンジョイメント(楽しさ)エンジョイメント(面白さ)、エナジー(精力)の要素を多く持ち込むことだ。そして、お互いが刺激し合うことで、相乗効果が表われ、麻雀ブームへのきっかけをつくることにもなる。

経営者の経営方針が、もっとも大切なことは言うまでもないが、その姿勢が店に特色として出されているか、いないかが重要だ。今一度、店舗内外の総点検が必要ではないか。

健康をベースにした店づくりのなかに、お客の興味をひき出すプラスアルファを加味する。

入口からドアまでにひと工夫するところは多い。置き看板ならばその看板の周りに、鉢植えの花などを置き、客の気持ちを和ませる。ドアまでの階段や通路には、一転して、闘志をかきたたせるものを用意したい。麻雀大会のポスターなどを利用して、競技への関心を呼び起す。

ドアにも、喫茶店のように、それぞれの店のカラーを出したい。現在は健康時代である。ビタミン関係が良く売れるそうだ。麻雀店も徹底して健康イメージを売ることだ。店舗内を清潔にするのは当然であるが、減卓によるスペースを有効に利用すべきではないだろうか。

待合コーナーやロッカー傘立てなどはぜひ用意したい。それと下駄箱を置き、スリッパ、サンダルに履き替えて、堅苦しさを取り除く。待合コーナーには、各種雑誌を用意し、日刊紙も1週間分ぐらいはファイルしておきたい。見知らぬ同士でも気楽に話し合えるムード作りが必要になる。

さらに、健康器具なども設置しておき、経営者自らが利用することだ。

待合コーナーにしても、低いソファでなく、大きなテーブルを置きバッググランドミュージックを流して、喫茶店の雰囲気を持ち込むことから、女性が観戦する場所にも利用でき、店内のムードは一新すると思われるが…。

電話コーナーにも一工夫が欲しい。できればボックスにして、メモ用紙とバックミュージックがあれば十分だろう。電話の内容はあまり他人には知られたくないものだから…。

非常口や防災体制も、客を安心させるためには、明確にしておくことだ。そして、駐車場を確保する努力が必要となる。駐車場を持つことで、商圏が拡大し、ゲーム時間の延長が期待できるだろう。

自動卓の導入にしても、客を喜ばせ、自分の店のグレードアップに利用する気持ちが第一で、それで儲けようというのではなく、結果として儲かったという余裕を持ちたい。手打ちの予約もあるという時代だから、手打ち卓に対する配慮は、今まで以上に必要だろう。

 

客をノセる熱情が経営の基

 

トイレに関しても、化粧室と同じように考えたい。まず清潔なこと、広いこと。そして、トイレの空間には、さわやかなドライフラワーなどを、さりげなく置き、ゆっくりできるムードが必要だ。これから、若者、女性を呼び込むならば、トイレにどれだけ注意が行き届いているかは、重要なポイントである。

店舗に関しては、それ以外にも照明、インテリアなど、それぞれ個性を発揮させることが大切だ。

それ以外には、各種のイベントがある。このイベントで、どう客を乗せるかが決まる。

まず、季節感を大切にすることが一番である。現代は、季節感を感じさせるものが少なくなってきているだけに、店内におけるイベントは季節を肌で感じさせる工夫が必要だ。

夏なら、涼しいメニューとか、ワンジョッキサービスといった企画。また、海の家にご招待といった特別サマープレゼント。このイベントは、ある時は景気良く、華やかにやること。しかし、サービス競争にならない配慮がないと、自分の首を絞めることにもなる。

東京、関東の経営者ならば、今回の麻雀フェアの企画に、自分の店独自のイベントをジョイントさせて、お客と楽しく、愉快に乗せてしまうことだ。テレビ宣伝している期間に、麻雀店がぼんやりしていては、絶対の機会を逃がすことにもなる。

マスコミで麻雀のイメージアップのPRをしている時に、自分の店を売り込む宣伝を考えれば、その効果は倍になるはずだ。積極的な姿勢で、どんどん攻める経営が今後の麻雀業のあり方ではないだろうか。

つまり、常に何かをやろうとしている熱意が、客を納得させるはずだ。それが、お客に直接プラスになるようなサービスでなくても、その効果は大きい。

客が「この店は、俺たちを喜ばせようと一生懸命にやっているし、なかなか面白いアイデアを出している」と考えてくれれば、イベントの善し悪しよりも、それだけで大成功である。

つぎには、客が乗る準備ができてるのだから、そのアイデアをちょっと提供すればいいわけだ。常に動くこと、注意すること、先見性が大切ではないか。

客が望んでいるのは、快適な環境で快適な時を過ごすことだ。その手段として麻雀を選んだだけで、麻雀が好きだとかいうことではない。競技麻雀による麻雀ファンの拡大も必要だが、麻雀店が清潔で健康的でE店だ、というイメージアップのPRも今後は必要になる。そして、実際にE経営者とE麻雀店が、レジャーの多様化のなかで麻雀を生きのばすことができるだろう。

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