【追憶の麻雀】第12回『麻雀業の将来を占う』

昭和52年10月1日(麻雀新聞第27号)

麻雀業の将来を占う

新店の進出は鈍化

自らが招く不振の因

ここ二、三年は雀荘の増加も減り、総数は横這いである。従って業績の方も横這い位は維持出来るものと思ったが、この悪さは一体どうした事か。先頃までは悪いとはいえ、五割前後の稼働率はあったものの、最近は四割も割っていると思われ、これは優良な店を除くと三割にも満たない惨状であり、もはや、営業の限界を越えている。そして、この事実からみる限り、麻雀業不振の原因は、ただ、店舗が多いからーということだけではなさそうだ。

最近の業界を見ていると、だんだん二つに分かれてきたようである。

一つは優良な店のグループであり、もう一つは危機に瀕した店のグループであって、いわゆる中間のグループというものがなくなってきた。二、三年前まではよく「これからの麻雀業の見通しはどんなものでしょうか」と至極のんびり聞かれたものだが、この頃は「これじゃ、たまらない。仮りに売るとすれば買手があるでしょうか」

に変ってしまったのである。そして一方では、優良な店の経営者たちが、譲渡価格の下落したいま、どこか良い売物はないかと虎視眈眈であって、この差は誠に大きい。

では一体、今まで中間グループにいた店はどこへ移ったのだろうか。言うまでもなく、殆どが危機を孕んだ店のグループへ移ったのである。

さて、何の商売でも栄枯盛裏には幾多の原因があり、ひとり麻雀業だけが例外ではない。従って、現在の麻雀業の不振も、ただ「業者が多過ぎるから」という理由だけでは片附けられないのであって、その他もろもろの理由が附随し、長い過当競争によって弱り切った店を、更に「悪魔が来たりて足を引く」現象を引起していると思わねばならない。そしてまた、これらの悪魔は、ほとんど業者自身が生み、育て上げたものであるといっても過言ではない。

そこでまず、それらの二、三を拾い出してみよう。

第一は料金である。

もちろん、現在の料金が他の物価や料金に較べて高過ぎるというのではない。要するに値上げだけは実施して、設備やサービスは据置さといった店の問題である。一昔前は料金が80円位の時代もあった。それがいま160円とすれば、その店は既に160円を販る店に変ったのであるから、当然、設備やサービスも、それに見合うだけのものに改奮されなければならない。例えば、国鉄、私鉄や喫茶店などにしても、料金は高くなったが、一方それに比例して設備やサービスも改善されているのである。

もちろん、麻雀業の大半はこの点十分改善されていて言うことはない。しかし、なかには全くわれ関せずの店も多いのであって、これらの店が中間グループから脱落することは当然といえよう。

客足遠のく深夜業

つぎに、深夜営業である。

咋今はやむを得ず深夜によって収入の辻棲褄合わせている店が多いという。しかしこれは、次第に遅い客ばかりが定着することになって、知らず知らずのうちに深夜専門の店になりかねない。また、店が深夜をやると客もつい引込まれて深夜になる。そして結局、経済的にも家庭的にも破綻の途に陥るはめとなり、一方、麻雀を規定の時間に健全な娯楽として楽しもうとする客は、どんとんと逃げていくのである。

われわれは、この逃げていく客こそ、最良の客である事を忘れてはならない。

第三は、レートの高騰である。

麻雀は娯楽であるから、勝ち負けによる座興的な負担は、愛嬌といえよう。しかし、それが次第に昂じて、高額のやりとりをするようになれば、もはや娯楽ではなく、また、勝っても所詮悪銭であって身につかす、負ければたちまち本業や家庭にまで害を及ぼす。従って、最近は「あの連中は高レートでやりたがるから、敬遠している」という客が増えているのであって、これらの客も、上客中の上客であることを留意しておく香港では卓の真上にその卓のレートを表示している店が多い。従って、客は自分の好みに合った卓に座ればよいから、この点極めて含理的である。しかし、わが国では、賭傳と座興的なものとの境が明確でないから、これを見習うことが出来ないのは残念である。

また、レートの高騰で一時的な刺激はあっても、たちまち慢性となって効果は消滅する。従って高レートを好む客は次第に雀荘から遠ざかり、競輪、競馬へと移っていくものと考えねばならない。現に、これらの娯楽は、不況をしりめに愛好者が急増し、売上げは日

に日に増加しているではないか。

つぎに、娯楽的雰囲気の醸成。

これは要するに、余り乱暴な客も困るが、かといって、余り堅苦しい店でもいけないということであって「あの店へ入ると、大事な商談に行ったようで、肝心のストレス解消にはならないー」と言った客がいるが、入ってから出るまで、終始、小笠原流の接待ではよろしくないという事である。

だいたい、麻雀をたのしむ人々は、麻雀荘を利用することによって、職揚でも家庭でも得られない娯楽的、開放的な雰囲気にひたろうとするのであるから、経営者は常にこの点に留恵し、「こんなに堅苫しいのなら、家でやって女房に叱われている方がましである」となってはお終いである。

もちろん、継続的に騒がしい客は遠慮なく注意する方がよい。しかし継縦的でない歓声等は、今少し気兼ねしなくてもよい雰囲気を作るために大切ではなかろうか。

救いの道は健全娯楽

恐れるに足らず

つぎに娯楽業に対する従業者の適性度である。

「麻雀業は客との応待がないから始めたー」という人は多いが、これが大変な問違いであることは、営業を始めてみれば直ぐ分かることである。

麻雀業は小料理店のように、客に面と同って応待することは少いが、それ以上に気を遣わねばならない商売である。従って、この営業に携る以上、第一に接待に得手な人、少くとも接待に抵抗を感じない人であることが大切ではあるが、中には全く麻雀業の接待には向かないと思われる人が多いようである。

「好きこそ物の上手なれ」というように、そのような人は、営業上大変マイナスとなって現れ、折角努力を続けても思ったような成績を挙けることが難しいと考えられるので、余り極端な場合は何らかの手を打ちたいものである。

つぎにインベーダーの出現であるが、麻雀客が、どれほどインベーダーを利用しているかは分らないものの、確かに学生や若年層の客は多少影響があるようである。しかし、麻雀とインベーダーは遊技内容が本質的に違っていて、麻雀客の好みに合ったものではなく、いわば麻雀は社交的で変化に富むのに反し、インベーダーは狐独的で単純なものであるから、麻雀客を大量に引抜く事は出来ないし、その流行も短時聞と考えてよい。

かつて降盛を極めたボーリングでさえ、その単純さのため僅か四、五年で影をひそめてしまったのであるから、インベーダーも早ければ年内にも後退するものと思われ、現にそれを設備している人でさえ、後一年位の寿命と覚悟しているようである。

つぎに囲碁将棋の復活である。

囲碁将棋はもちろん麻雀よりもずっと古い娯楽であって、もともと愛好者も少くはないが、その盛衰は常に変動があり、現在は非常に盛んな時代となっている。麻雀愛好者のうち、年配層の客が相当流れているものと推定出来るが、しかし、これは囲碁将棋の流行が麻雀客を引いたのではなく、むしろ、雀荘の深夜営業、雀荘の高レートによって雀荘を敬遠した客達が移動したと考えてよく、またこの傾向は今後ますます増加するものと思わなければならない。四人のうち一人一人がそういう行動をとれば、当然、一組が脱落する事に繋りやすいわけであるから、麻雀業は一段と健全娯楽に徹して進む必要がある事を痛感するわけである。

麻雀は比類なき娯楽

さて、以上はー麻雀業が多過きるーという事以外の不振の原困と思われるものであって、これらの中には経営者自身の努力によって是正出来るものも多いわけであるから、今後一層の啓蒙を切望しておく。

前述の事情はさておき、将来の麻雀業の展望について述べておきたい。

まず、前項にも述べた通り、麻雀業者が麻雀遊技を健康な娯楽として推進する以上、麻雀業の将来を危惧する必要はない。いうまでもなく、麻雀は杜交性を兼備した最も面白く高尚な娯楽であって、この点、他に比類するものがないばかりか、家庭や職場では、十分に行うことが難しい遊技であるから、雀荘自体が衰退することはありえない。

またこれは、もっと大局的見地からも推定することが出来る。

即ち、わが国の経済と国民生活は、常にアメリカの歩む道を踏襲しているのであって、例えば、ビルの高層化、自動車、電化製品、スーパー、食事から娯楽に至るまでその通りである。従って、ここ二、三年も経てば、アメリカの現状と等しくなるものと考えられるが、アメリカの現状はいま日本で想像するような楽天地ではない。脅困の差が激しく、中流の国民とはいえ、日々の生活は節約に節約を重ねて、やっと、維持しているに過ぎないのであって、低俗な娯楽や、内容に乏しい娯楽、または高額な娯楽は衰退し、健康で内容の豊かな娯楽、庶民的な料金のものが全盛を極めているから、わが国も間もなくそれを踏襲するわけであり、その時は、それらの条件を満たして余りある麻雀業の独壇場となることを疑わない。

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